インストラクショナルデザインは、カリキュラムの中身に表れます
階層別の研修体系図を毎年つくり直す部門は少なくありません。ただ、新人向けと管理職向けで科目名を並べ替えるだけでは、体系は形式的な整理にとどまります。各科目の中で何ができるようになるかを決めるまでが設計なのです。
科目一覧ではなく、習得目標からの設計
分析から評価までの五つの工程
インストラクショナルデザインは、研修を分析、設計、開発、実施、評価という工程に分けて組み立てる考え方です。中心にあるのは、受講後に何ができるようになるかという習得目標、それを確かめる評価方法、そこへ至る学習活動を互いに対応させることです。これらがそろっていれば、教材の分量や講義の進め方にかかわらず、その研修が何を担っているかを説明できるのです。目標が「理解を深める」という水準でとどまっていれば、評価方法も学習活動も定まりません。
決めるのは順序だけではありません
カリキュラムに当てはめると、決めるのは科目の並び順だけではありません。階層ごとにどの達成水準をめざすか、科目をどの順序で配置するか、そして各科目の中で何を行い、何をもって習得と見なすか。この三つがそろって、はじめて一つのカリキュラムになります。研修体系図に並ぶ科目名は、その設計結果を一枚に要約したものにすぎません。
順序が意味を持つのは、前提を確かめられるとき
前の科目の達成水準が見えないまま
階層別に科目を並べる考え方は、前の科目で身につけたことを土台に次へ進むという前提に立っています。ところが、前の科目で受講者がどこまでできるようになったかを確かめる仕組みがなければ、その前提が成り立っているかどうかを検証できません。入門編を修了した受講者が、管理職向けの応用編で用語の説明から聞き直すという状況。順序は表のうえでは正しくても、受講者の準備が整っているかどうかは別の問題です。
修了率では習得を確かめられません
習得を確かめる方法は、目標の書き方に左右されます。「製品知識を理解する」という目標からは、受講の有無と修了の事実しか確かめられません。「顧客の質問に自社の条件を踏まえて答えられる」という水準まで書けば、確かめる場面も自然に決まると言えます。研修部門が経営層に示せる数字が受講率と修了率にとどまりやすいのも、目標の書き方がその手前で止まっているからです。
業務シーンを1つ選ぶと、AIが顧客役を務めてあなたと1回の会話を行います。終了後、評価フィードバックを確認できます。
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科目の数だけ必要になる設計判断
設計を担える人は限られています
研修コースの設計を担えるのは、習得目標の立て方と確認方法の組み立てに慣れた担当者です。多くの企業では、その担当者がニーズ調査から講義、研修後のフォローアップまでを兼任しています。科目が数十に及ぶカリキュラムでは、同じ設計判断をその数だけ繰り返すのです。新しい研修を追加しても、判断を担える人がすぐに増えるわけではありません。
毎年の見直しは体系図で止まりがち
年度の切り替えで研修体系を見直す際、限られた時間で手をつけられるのは、科目名の入れ替えと順序の調整です。各科目の学習活動や確認方法は、前年の内容がそのまま残ります。制度や製品が変わっても、受講者が取り組む中身は数年前の想定のまま、という状態が生まれやすいと言えます。
毎回ゼロから組み直さない設計へ
構成が安定している研修の再利用
新入社員研修、管理職研修、コンプライアンス研修のように、研修シーンによっては構成が比較的安定しています。学習内容をどの分量に区切るか、どの確認方法を対応させるか、どの順序で教えるか。こうした設計判断は、研修設計の分野で積み上がってきた知見をもとに、あらかじめ基準として用意しておけるものです。AIが資料の整理と構成の初稿づくりを引き受けることで、担当者が毎回同じ判断を繰り返す場面は減っていきます。
判断そのものは残ります
再利用できるのは、あくまで設計の型までです。自社の製品や制度、業務の前提をその型にどう当てはめるか。当てはめる範囲の判断は、業務を知る担当者に残ります。基礎的な整理にかけていた時間を、この判断と、内容が実務に即しているかの確認に振り向けられるようになります。専門的な責任がなくなるわけではなく、時間のかけどころが変わるのです。
見直しの単位が、体系図から科目へ
科目単位で手を入れられます
設計の型を土台にできれば、年度ごとの見直しで扱える範囲が広がります。科目名と順序を整えるだけでなく、この科目ではどの達成水準をめざすか、それをどの場面で確かめるかまで、科目ごとに手を入れられるようになります。研修体系図と各科目の中身が、同じ基準でつながった状態に近づいていくのです。
変更が反映されるまでの時間差
製品の改定や制度の変更があったとき、関連する科目を探し、習得目標と確認方法を見直す作業そのものは残ります。それでも、科目単位で対応できれば、体系全体を組み直すより着手しやすくなります。変更からカリキュラムへの反映までの時間差は、その分だけ縮まると言えます。
重要なポイント
カリキュラムの設計は、科目を並べる作業で終わりません。各科目でどの達成水準をめざし、それをどの場面で確かめるか。ここまで決まっていれば、研修体系図を運用の基準として使えます。並びを整え直す前に、一つの科目の中身を最後まで設計してみると、足りていない判断が見えてきます。
自社のカリキュラムを見直すときの手がかりは、二つあります。一つは、各科目の習得目標が、確かめられる行動の水準で書かれているかという点。もう一つは、毎年の見直しが科目名の入れ替えで終わらず、中身の見直しにまで及んでいるかという点です。この二つがそろっていれば、事業の変化に合わせて体系を保ちやすくなります。