オンラインのアクティブラーニングは、形式によって手法が変わる
研修担当者が、新人向けのオンライン研修にグループワークや投票機能を取り入れる例が増えています。ただ、拠点や勤務時間が分かれる組織では、全員が同じ時間にオンラインへ集まれる回はごく一部にとどまります。
手段の種類より、能動的な出力の有無
オンラインでの手法の種類
オンラインでのアクティブラーニングには、大きく分けて二つの実施形態があります。一つは、ビデオ会議でのグループディスカッションやライブ投票のように、参加者が同じ時間にオンラインへ集まって行う形態です。もう一つは、eラーニング教材の途中に選択式の設問や分岐するシナリオを組み込み、受講者が個別のタイミングで取り組む形態です。対面の教室で行われてきた討議や演習を、オンラインの環境に置き換えたものだと言えます。
アクティブと呼べる条件
手段の種類にかかわらず、その学習をアクティブと呼べるかどうかを分けるのは、ツールの種類ではありません。受講者が、聞くだけでなく、自分の言葉で説明したり、選択肢を比較して判断したりする場面が含まれているかどうかです。グループディスカッションであっても発言しないまま終われば受動的な参加にとどまり、eラーニングの設問であっても、正誤を選ぶだけで説明を求めなければ、能動的な処理としては手薄になります。同じ形態でも、この条件次第で中身は変わってきます。
使える手段を左右する、配信形式の違い
同時参加が前提の手段
ビデオ会議でのグループディスカッションやライブ投票は、参加者が同じ時間にオンラインへ集まっていることを前提にしています。進行役がその場で発言を促し、回答に応じて追加の質問を返すことで、討議は成立します。参加者の誰かが不在であれば、その場のやり取りは成立しません。同期型の手段は、対面の教室で行われてきた双方向のやり取りを、オンラインの画面越しに再現したものだと言えます。
個別受講が前提の手段
一方、eラーニング教材に組み込まれた設問や分岐するシナリオは、受講者が個別のタイミングで取り組むことを前提にしています。進行役がその場にいないため、双方向のやり取りは、教材そのものに組み込んでおく必要があります。あらかじめ用意した設問と分岐の範囲でしか、やり取りは成立しません。実施形態が変われば、双方向のやり取りをどこに組み込むかという設計そのものが変わってくるのです。
業務シーンを1つ選ぶと、AIが顧客役を務めてあなたと1回の会話を行います。終了後、評価フィードバックを確認できます。
業務シーンを1つ選ぶと、AIが顧客役を務めてあなたと1回の会話を行います。終了後、評価フィードバックを確認できます。
非同期教材への組み込みが進まない理由
同期の手段が使えない組織
拠点が分かれていたり、勤務時間帯が交代制であったりする組織では、参加者全員が同じ時間にオンラインへ集まる前提そのものが成立しません。ビデオ会議でのグループディスカッションやライブ投票を用意しても、参加できる人数は一部にとどまり、研修は個別のタイミングで受講できるeラーニング教材に頼らざるを得なくなります。
組み込みには専門知識が要る
eラーニング教材に分岐するシナリオや説明を求める設問を組み込むには、受講者がどこでつまずきやすいかを見極め、選択肢や分岐を設計する作業が必要です。この作業を担えるのは、業務内容と学習設計の両方に通じた一部の担当者に限られ、通常業務と並行して進められる分量には限りがあります。
非同期教材の設計負担が、AIで軽くなる方向へ
分岐設計の下書きを担う
受講者に説明を求める設問や、選択肢に応じて分岐するシナリオの下書きを、AIが引き受けられるようになります。担当者が一から書き起こす作業は減り、空いた時間を、その分岐が実務の状況に合っているかどうかの確認に充てやすくなるのです。ただし、内容を確かめて公開を認める工程や、業務に即した分岐かどうかの判断は、これまでどおり担当者の側に残ります。
更新の範囲を絞り込める
業務内容や制度が変わったときも、教材全体を作り直す前提ではなくなります。関係する設問や分岐だけを見つけて手を入れる進め方を取りやすくなるのです。探して直す手間そのものがなくなるわけではありませんが、一から組み立て直す場合に比べれば、着手までの負担は軽くなると言えます。拠点が分かれた組織でも、更新を反映するまでの時間差を縮めやすくなります。
アクティブラーニングは、同期の場から教材自体へ
参加できない層にも届く
これまで、ライブ配信のグループディスカッションに参加できなかった拠点や勤務時間帯の受講者にも、双方向のやり取りを伴う学習を届けやすくなります。進行役が同じ時間に対応できる人数の上限に、学習の機会が左右されにくくなるのです。参加できる人数が増えるほど、拠点や勤務形態によって生じていた学習経験の差も縮めやすくなります。
運用は継続的な見直しへ
制度や業務の変更に合わせて、分岐や設問に手を入れやすくなったことで、教材を一度作って終わりにするのではなく、継続的に見直す運用へと近づきます。受講者が答えた記録も残るため、どの分岐でつまずきやすいかを把握しやすくなるのです。ただし、そこから分かるのは、用意した設問と条件のもとでの学習の状況にとどまります。
重要なポイント
オンラインのアクティブラーニングは、グループワークや投票機能といった手段の名前だけで成り立つものではありません。参加者が同じ時間に集まれる同期型か、個別に取り組む非同期型か。この配信形式によって、そもそも使える手段の範囲が変わってきます。手段を選ぶ前に、まず自社の研修がどちらの形式に当たるかを確かめる必要があるのです。
進め方を見直すときに確かめたい点は、二つあります。一つは、受講者全員が同じ時間にオンラインへ集まれる組織かどうかという点です。もう一つは、集まれない場合、双方向のやり取りを教材そのものに組み込めているかという点です。この二つがそろって初めて、オンラインでのアクティブラーニングは機能します。