学習設計は、一度の研修では完結しません
新人研修も管理職研修も、実施の時期と対象者を決めた形で年間計画に並びます。ただ、受講した内容を学習者がもう一度扱う機会をどこに置くかは、計画の中では決まっていないことが少なくありません。
習得目標を起点にした、学習期間全体の設計
決める順番は、目標が先
学習設計は、手元の資料をどう並べるかから始める作業ではありません。出発点に置くのは、学習を終えた人が業務のどの場面で何をできるようになるかという習得目標です。扱う知識の範囲、説明を始める位置、学習中に取り組む活動、習得を確かめる方法。いずれも、目標が定まって初めて、そこから逆算して決められます。年間計画に研修の項目名だけが並んでいる状態では、当日の中身は決められても、どこまで到達すれば十分なのかという線を引けないのです。
設計の範囲は当日にとどまりません
もう一つ、学習設計が扱う範囲は研修当日の中にとどまりません。同じ習得目標を掲げても、学習活動を当日の数時間に集めるか、事前と事後にも分けて置くかで、受講者が経験する中身は変わります。何をどの順で扱うかという中身の組み立てと、その機会をいつ、何回置くかという配分の組み立て。学習設計は、この二つを合わせて決める仕事だと言えます。
時間をあけて、もう一度答える機会
理解した実感と、引き出せることは別
研修の場では、説明を聞いた直後にどれくらい理解できたかを尋ねる形が一般的です。ただ、そこで集まるのは、受講者本人が理解できたと感じたかどうかまでの情報にとどまります。数週間後の商談や問い合わせの場面で、必要な知識を自分で引き出せるかどうか。その時点では、まだ確かめようがありません。理解した実感と、必要なときに引き出せることは、切り離して考えたほうが確かです。
同じ時間でも、分け方で変わります
同じ内容を同じ時間かけて学んでも、残り方には差が出ます。一度にまとめて扱う進め方と、期間をあけて数回に分け、そのつど自分の言葉で答える進め方とでは、後から引き出せる度合いが違ってくるのです。思い出そうとすること自体が、記憶に残す助けになるためです。学習設計で決めておきたいのは、その思い出す機会をどこに置くかという点になります。
業務シーンを1つ選ぶと、AIが顧客役を務めてあなたと1回の会話を行います。終了後、評価フィードバックを確認できます。
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計画から抜け落ちやすい、研修後の期間
承認されるのは、実施の予定まで
年間の研修計画で承認されるのは、どの階層に、いつ、どの研修を実施するかという予定です。実施後の数週間に何を置くかは、その枠の外に残されます。研修マネージャーが経営層へ報告する指標も受講率と修了率が中心のため、実施が終わった時点で一区切りがつく形になっているのです。
事後の準備は、後回しになりがちです
実施後に置く学習活動は、対象者や扱う製品ごとに内容を変える必要があり、制度や手順が改まれば作り直しの対象にもなります。設計から講義、実施後のフォローまでを兼任している担当者が、次の研修の準備と並行してこの作業を続けるのは難しく、後回しになりがちです。
一度きりの準備から、繰り返せる準備へ
AIが引き受ける、初稿づくり
既存のマニュアルや製品資料から、答えてもらう課題や判断を求める設定を組み立てるには、内容の整理と初稿づくりに時間がかかります。この部分をAIが引き受けると、担当者が一つずつ書き起こす必要は薄れます。空いた時間は、扱う範囲が業務の実態と合っているか、受講者の前提知識に対して難しすぎないかという確認に充てられるようになるのです。
判断は、担当者の側に残ります
変わるのは、労力のかけどころです。内容を確かめ、公開してよいと判断する工程は、これまでどおり担当者の側に残ります。それでも、一つの研修に学習活動を一度しか用意できない状態からは離れやすくなると言えます。準備の負担が軽くなる分だけ、期間をあけて複数回置く進め方も、無理のない選択肢になってきます。
学習設計の単位は、一回から期間へ
範囲は、実施の前後まで広がります
学習設計で向き合う対象は、当日の数時間の組み立てから、実施の前後を含む数週間の組み立てへと広がります。当日に確保できる時間の長さで学習活動の量が決まる状態ではなくなり、当日は答えが分かれる論点の検討や、受講者同士の意見交換に時間を使いやすくなります。
記録が示すのは、そこまでの学習状況
学習の途中に記録が残るため、どの内容で理解のずれが起きやすいかを、研修マネージャーは把握しやすくなります。ただし、そこから読み取れるのは、用意した活動と設問のもとでの学習の状況までです。受講者が現場で同じ判断をできるかどうかは、業務の進め方や上司の関わり方にも左右されるのです。
重要なポイント
学習設計が決めるのは、扱う内容と説明の順序だけではありません。学習者がその内容にもう一度向き合う機会を、いつ、何回置くか。この配分も、設計を成り立たせる要素の一つです。中身をどれだけ練り上げても、機会が実施日の一点に集まっていれば、後から引き出せるかどうかは受講者任せになります。
研修の進め方を見直すとき、手をつける場所は、続けられる回数から逆算すると定まります。実施後に置く学習活動を、年に何度の改定があっても用意し直せるかどうか。担当者が無理なく回せる範囲で回数を決め、そこに合わせて中身を組み立てるほうが、学習設計は計画として残りやすくなるのです。