インストラクショナルデザインの原理は、学ぶ側の条件
インストラクショナルデザインの解説では、ADDIEのような工程や代表的な原理の一覧がまず並びます。ただ、原理そのものが定めているのは教える側の手順ではなく、受講者が学習の途中で何をするかという条件です。
原理とは、何を定めたものか
原理が示すのは、学ぶ側の条件
インストラクショナルデザインの原理とは、教える側が守るべき手順の規則ではありません。人が知識を理解し、記憶し、必要な場面で引き出すときに成り立つ条件を整理したものだと言えます。だからこそ、原理を満たしているかどうかは、教材の見た目や説明の丁寧さには表れません。表れるのは、受講者が学習の途中で何をしているかという部分なのです。
どの原理も、受講者の行動を指します
代表的な原理として、学習後の目標から扱う内容を逆算すること、受講者が自分の言葉で言い直したり条件を比べて選んだりする場面を置くこと、一度に扱う情報量を抑えること、時間を置いてもう一度思い出す機会を作ること、答えに対して理解のずれを返すことが挙げられます。並べてみると、どれも受講者の行動を指しているという共通点が見えてきます。教える側の作業を並べた一覧ではなく、学習の途中で受講者に何が起きているかを条件として書いたもの。それが原理です。
原理を適用する単位は、学習ポイント
同じコースの中でも差が出ます
原理を満たしているかどうかは、コース単位では判定しにくいものです。製品知識研修でも、条件を比べて選ぶ設問を置いた項目と、長い動画を再生するだけの項目が同じコースに並びます。答える場面のある項目と、再生するだけで修了まで進む項目。同じコースを受けても、原理が働いた項目と働かなかった項目が混ざるのです。
手がかりは、受講者の行動
判断の手がかりは、その項目で受講者が実際に何をしたかにあります。説明を読んだだけか、自分の言葉で言い直したか、条件を比べて選んだか。同じ制度改定の内容を扱っても、条文をそのまま読み上げる項目と、例外の扱いを選ばせる項目では、受講者に残るものが違います。原理が示すのは学ぶ側の条件ですから、確かめる単位も一つひとつの学習ポイントになると言えます。
業務シーンを1つ選ぶと、AIが顧客役を務めてあなたと1回の会話を行います。終了後、評価フィードバックを確認できます。
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原理の適用が担当者ごとにばらつく理由
先に立つのは、計画どおりの実施
研修責任者の手元では、年間研修計画の達成状況や受講率、従業員1人当たりの研修時間が先に問われます。限られた予算と人員のなかで優先されるのは、計画した研修を予定どおり実施すること。学習ポイント単位まで原理に照らして組み立て直す作業は、その次に回りがちです。
同じ判断を、更新のたびに繰り返します
コースに含まれる学習ポイントの数だけ、情報量、順序、答えてもらう場面の判断が発生します。制度や製品が変われば、同じ判断を更新のたびに繰り返すことになります。担当者が方法論の参考書を手元に置いていても、すべての項目に手を回せるわけではないのです。
出発点は、白紙から既存の型へ
構成が安定している研修領域
新入社員研修や製品知識研修のように、構成が比較的安定している領域では、すでに確立されたコースの組み立て方を出発点として使えます。AIが資料の整理と構成の下書きを引き受けることで、この再利用は現実的な選択肢になってきました。学習ポイントの区切りや、答えてもらう場面の候補が入った状態から検討を始められること。担当者の経験の差に左右される部分は、その分だけ小さくなります。
突き合わせは担当者に残ります
出発点があっても、判断が不要になるわけではありません。自社の業務内容と合っているか、想定した受講者に対して情報量が適切か、例外の扱いをどこまで含めるか。この突き合わせは、これまでと同じように残ります。下書きに充てていた時間を、その確認に回せるようになるのです。
原理の適用は、年に一度から日々へ
小さくなる、手直しの単位
年間計画を立てる時期にまとめて考えていた原理の適用が、学習ポイント単位の手直しとして日々の作業に入ってきます。新入社員研修で説明が届いていない項目が見つかれば、その項目だけ情報量を減らし、答えてもらう場面を足せます。コース全体を組み直す前提が薄れる分、着手までの負担も軽くなるのです。
確かめる対象が広がります
研修責任者が確かめる対象も、受講率や修了率の一覧から、どの学習ポイントで理解のずれが起きているかへと広がります。ただし、そこから分かるのは、用意した設問と条件のもとでの学習の状況まで。現場で同じ判断ができるかどうかは、業務の進め方や上司の関わり方にも左右されます。
重要なポイント
インストラクショナルデザインの原理は、コース設計の方針として掲げたところで働くものではありません。原理が示しているのは、受講者が学習の途中で何をするかという条件。それが成り立っているかどうかは、一つひとつの学習ポイントで受講者に何が起きたかに表れます。掲げた言葉だけでは、その中身までは決まらないのです。
研修の組み立てを見直すときは、掲げた原理が学習ポイント単位の判断まで落ちているかを確かめると、手をつける場所が定まります。あわせて、その判断を更新のたびに繰り返せる範囲に収めておくこと。一度で作り切る前提より、続けられる範囲で組み立てるほうが、原理は働き続けると言えます。