アクティブラーニングの手法は、前提知識まで含めて選びます
新人研修にグループワークを組み込んでも、発言するのは一部の受講者にとどまり、残りは聞き役のまま終わることがあります。ただ、手法の種類が足りないわけではありません。受講者の前提知識の差に、進め方が合っていないのです。
アクティブラーニングの手法は、どう選ぶか
手法を整理する三つのアウトプット
アクティブラーニングの手法とは、受講者が説明を聞くだけでなく、受け取った内容を自分で処理して外に出す場面を含む進め方です。グループワーク、ケーススタディ、教え合い、疑似的な商談の練習など、呼び方はさまざまです。ただ、受講者に求めるアウトプットで整理すると、自分の言葉で言い換える、選択肢を比べて決める、実際の動作として再現する、という三つに分かれるのです。手法の名前より、どの型を求めているのかを押さえるほうが、選ぶ場面では役に立ちます。
型を選ぶ二つの基準
どの型が向くかは、扱う内容の性質で変わります。制度や定義の理解を確かめたい場面では、自分の言葉で言い換える形が向きます。状況に応じた判断を身につけてほしい場面なら、選択肢を比べて決める形やケーススタディのほうが向いていると言えます。ただ、基準はもう一つあります。同じ研修に集まる受講者の前提知識が、どこまでそろっているかという点。内容に合った型を選んでも、受講者の出発点がばらついていれば、想定した通りには進みません。
経験の差に合わない、一律の進め方
活発に見える討議の偏り
同じケーススタディを実施しても、受講者に残るものは違ってきます。近い経験を持つ受講者は、自分の判断を言葉にし、他の受講者の考えと比べる時間を得られます。一方、前提となる知識が足りない受講者は、議論についていくだけで時間が終わり、判断を示す場面まで届かないのです。活発に見える討議でも、アウトプットの機会が集まるのは経験のある受講者の側です。
変えるのは入り口の難しさ
この差を埋める手立ては、手法の入れ替えではありません。同じ手法に入るまでの段取りを、経験の段階ごとに分けること。前提となる知識が浅い受講者には、短い確認と補足の説明を先に置き、判断を求める課題は後に回します。経験のある受講者には、最初から条件の複雑な課題を渡したほうが、考える余地が生まれます。手法は同じでも、入り口の難しさを変えることで、全員がアウトプットする側に回れるようになると言えます。
業務シーンを1つ選ぶと、AIが顧客役を務めてあなたと1回の会話を行います。終了後、評価フィードバックを確認できます。
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作り分けと更新に、手が回らない運用
把握と作り分けにかかる工数
入り口を分けるには、まず受講者の前提知識をつかむ必要があります。事前アンケートや短い確認テストで理解の状況を集め、階層や職種ごとに教材を作り分ける作業も加わります。新任管理職研修から製品知識研修まで、年間で何十本もの研修を抱える担当者が、この工程をすべての研修で回すのは難しいのです。
手を入れられる本数の上限
作り分けた教材は、制度や製品が変わるたびに、どの版も見直しの対象になります。限られた人員で複数の階層を受け持つ体制では、手を入れられる本数に上限があります。結局は全員に同じ教材を配る形に戻りやすくなると言えます。
一律の組み立てから、段階を踏む設計へ
分割と下書きはAIの側へ
AIは、資料を学習しやすい単位に分ける作業、補足の説明の下書き、課題の難しさを段階的に上げる並びの組み立てを引き受けます。担当者が一から組み立てる前提ではなくなるため、経験の段階ごとに入り口を分ける設計にも着手しやすくなるのです。ただし、どこまでの範囲を扱い、どの水準を求めるかを決めるのは担当者です。内容を確認し、公開を認める工程は残ります。
基礎から入る版を用意する余地
同じ内容を複数の版に作り分ける負担も軽くなり、基礎の確認から始める版と、条件の複雑な課題から始める版を、同じ資料をもとに用意しやすくなります。作り分けた教材を見比べ、表現をそろえる工数は残ります。それでも、階層ごとに一から書き起こす場合と比べれば、着手までの負担は軽くなると言えます。
当日の進め方から、一人ひとりの入り口へ
当日の時間に縛られない配分
手法を選ぶ場面が、研修当日に何を実施するかという判断だけではなくなります。同じケーススタディを扱う研修でも、基礎の確認から始める受講者と、条件の複雑な課題から始める受講者を分けて置けるようになります。当日に確保できる時間の長さで、アウトプットの量が決まる状態からも離れやすくなるのです。
全員が判断を示す討議へ
討議の時間も、経験のある受講者が中心になって進める形から、全員が一度は判断を示す形に近づけやすくなります。どの課題で受講者がつまずいたかもつかみやすくなり、次の設計に反映しやすくなると言えます。ただし、そこから分かるのは、用意した課題と条件のもとでの学習の状況に限られます。
重要なポイント
アクティブラーニングの手法は、名前や種類だけで選び分けられるものではありません。受講者の前提知識がどこまでそろっているかも、選ぶときの基準の一つ。内容に合った型を選んでも、入り口の難しさが受講者に合っていなければ、アウトプットの機会は一部の受講者に集まります。
手法を入れ替える前に確かめておきたいのは、二つの点です。一つは、求めるアウトプットの型が、身につけてほしい内容の性質に合っているかという点です。もう一つは、経験の段階に応じて入り口を分ける工数を、担当者が年間を通して負担できるかという点なのです。この二つがそろって初めて、手法選びに意味が出てきます。