アクティブラーニングの失敗は、設計の段階にも原因があります
新人研修にグループワークを組み込んでも、発言するのは一部の受講者にとどまり、アクティブラーニングが失敗に終わる回があります。原因は当日の進め方だけでなく、理解を確かめる場面を先に決めていたかにもあるのです。
失敗の線引きと、活動を先に置く組み立て
活動が成立しても、失敗は起きます
アクティブラーニングの失敗は、場が動かなかった回だけを指すものではありません。発言が活発で、受講後の評価も高い回であっても、扱った内容を後から自分の言葉で説明できなければ、ねらいは果たせていません。失敗かどうかを分けるのは、活動が成立したかどうかではなく、受講者に理解が残ったかどうか。この線引きに変えると、振り返りで確かめる材料も、当日の進行の様子から、受講者が後から何を説明できたかに移ります。
活動の形を先に選んでいないか
失敗が繰り返される回には、組み立ての順序に共通点があります。何をどこまで理解してほしいかを言葉にする前に、グループワークやケーススタディという活動の形を先に選んでいるのです。形が決まると、当日はその活動をこなすことが目的になり、理解を確かめる場面は最後の感想共有に置き換わります。順序を入れ替えれば、活動の形は後から選べます。
その場では見えない失敗
活発さは理解の裏づけになりません
研修の直後に取る満足度アンケートは、その場の活発さをよく反映します。議論が盛り上がった回ほど、受講後の評価は高く出ます。ただ、その評価が示しているのは受講者の反応か、それとも理解の残り方か。講師の手元にある数字が参加度と評価点だけであれば、二つを区別できないまま、理解が残らなかった回も成立した回と同じ形で報告されていきます。
失敗は、研修の後に現場で現れる
理解が残らなかったことは、受講者が現場に戻った後に表に出ます。顧客への説明が途中で止まる、覚えたはずの手順を先輩に聞き直す、といった形。ただ、その場で対応するのは現場の上司であり、研修を担当した講師まで戻ってくるとは限りません。講師は次の回も同じ組み立てで実施し、気づかないまま同じ結果を繰り返すことになると言えます。
業務シーンを1つ選ぶと、AIが顧客役を務めてあなたと1回の会話を行います。終了後、評価フィードバックを確認できます。
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兼任の講師に集まる、判断と作り直し
判断できるのは、業務を知る講師
どこまで理解してほしいかを決め、それを確かめる場面を教材に組み込む作業には、扱う業務そのものへの理解が必要です。この判断ができるのは、日々その業務に接している講師や現場の中核メンバーに限られます。同じ担当者がニーズ調査から講義、研修後のフォローまで兼任していれば、組み立てにまとまった時間は割きにくいのです。
改定のたびに、作り直しに戻る
制度や製品が変わると、組み込んだ場面も見直しの対象になります。改定のたびに一から作り直す前提では、手が入らないまま次の回を迎えがちです。資料を読ませて最後に感想を共有する形に戻り、失敗した回と同じ組み立てが残っていくと言えます。
重複する設計作業から、業務の判断へ
毎回ゼロから決めない設計判断
新入社員研修やコンプライアンスのように、扱う内容が変わっても構成が大きく動かない研修があります。押さえる内容の分量、教える順序、確認を置く位置といった判断のうち、こうした場面で毎回変わらない部分は、確立された考え方を引き継いで使えます。AIが資料の整理と初稿づくりを担う分、講師が判断を一から積み上げ直す場面は減っていくのです。
時間は、業務の中身の確認へ
重複する組み立ての作業が減ると、講師が時間を向けられる先が変わります。この会社の業務に内容が合っているか、例外的な取り扱いが抜けていないか、想定した状況が現場と近いか。こうした確認は、業務を知る人にしか下せない判断です。作業量が変わっても、内容を確かめて公開を認める工程は講師の側に残ります。
失敗に気づく時点は、研修の途中へ
形式は、後から選べます
確かめたい内容と、その置きどころを先に決めた状態から着手しやすくなります。グループワークにするか、教え合いにするか、短い問答にするかは、その後で選べます。当日に確保できる時間や人数に合わせて形を変えても、確かめる場面は残るため、活動をこなすことが目的になりにくくなるのです。
途中で、理解のずれに気づく
受講者が答えた学習データが残るため、どの内容で理解のずれが起きやすいかを、研修が終わる前に確認しやすくなります。現場で問題が出てから講師に伝わるのを待たずに、次の回の組み立てに手を入れられるようになると言えます。ただし、そこから分かるのは、用意した場面と設問のもとでの学習の状況に限られます。
重要なポイント
アクティブラーニングが成立するかどうかは、当日の進行の巧拙だけで決まるものではありません。理解が残ったかを確かめる場面を、活動の形より先に決めておけるか。それも、失敗を繰り返さないための条件の一つです。形式の名前をそろえても、確かめる場面がなければ、受講者に何が残ったかは見えないままです。
アクティブラーニングの進め方を見直すとき、判断の基準として使えるのは、改定のたびに講師が手を入れられる分量かという点です。確かめる場面を厚く作り込んでも、翌年に見直す余力がなければ、資料を配る形に戻ります。続けられる分量に収めておくことが、この形式を研修に残していく条件なのです。