アクティブラーニングの事例は、型を取り出して使います
アクティブラーニングの事例は、グループワークやロールプレイングといった活動の名前で紹介されます。ただ、自社で同じように機能するかは、名前だけでは読み取れません。手がかりは、受講者に求めていたアウトプットの型にあります。
事例を整理する軸は、求めるアウトプット
企業研修で挙がる事例
アクティブラーニングの事例として企業研修で挙がるのは、グループワーク、ケーススタディ、疑似的な商談を体験するロールプレイング、受講者同士の教え合い、事前に資料を読んでから集まる反転授業、時間を置いて同じ内容を問い直す小テストなどです。進め方の名称はさまざまですが、受講者が説明を聞くだけで終わらず、受け取った内容を自分で処理して外に出す場面を含む点は共通しています。
求めるアウトプットは3つ
これらの事例を、受講者に求めるアウトプットの種類で並べ替えると、「自分の言葉で言い換える」「条件を比べて選ぶ」「実際にやってみせる」という3つの形式に整理できます。グループワークや教え合いは一つ目、ケーススタディは二つ目、ロールプレイングは三つ目に重なります。自社に何を取り入れるかを考えるときは、活動の名前をそろえる前に、受講者にどの形式で答えてもらいたいのかを決めておくと、選ぶ範囲が定まるのです。
同じ事例でも中身が変わるのは、条件の差
紹介文に書かれない前提
事例の紹介文には、活動の名前と当日の進め方までは書かれています。一方で、その回の受講者数、確保できた時間、進行役の人数、受講者がすでに持っていた前提知識まで読み取れることは、あまり多くありません。ところが、一人の受講者にアウトプットが何回回るかを左右するのは、この書かれていない条件の側なのです。
同じ名前でも、経験は別
6人で行うグループワークと、20人を超えるグループワークでは、一人が説明に回る回数が違います。発言した受講者には考えを組み立て直した経験が残りますが、聞いていた受講者には同じ経験がありません。つまり、活動の名前が同じでも、受講者が経験する中身は変わってくると言えます。事例を読むときは、その活動を成り立たせていた条件まで一緒に確かめておきたいところです。
業務シーンを1つ選ぶと、AIが顧客役を務めてあなたと1回の会話を行います。終了後、評価フィードバックを確認できます。
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アウトプットの機会が偏ったままの理由
確保しにくい人手と時間
事例が前提にしていた人数や時間を、自社の研修でそのまま用意できるとは限りません。年間の研修体系の中で1回に割ける時間は決まっており、拠点が分かれていれば同じ場に集めることも難しくなります。進行役も一人であることが多く、全員分のアウトプットに耳を傾ける余裕までは残らないのです。
作り替えの担い手は限られます
教材の側にアウトプットの場面を用意し直す方法もあります。ただ、扱う範囲や設問が妥当かを判断できるのは、その業務を深く知る講師や現場の中核メンバーです。通常業務を抱えている中で、改定のたびに作り直す前提を置けば、着手は後回しになりがちだと言えます。
事例をなぞる作業から、型を組み込む作業へ
下書きまでをAIが担います
事例で使われていたアウトプットの型を自社の教材に組み込むには、資料の整理、構成の組み立て、答えてもらう場面の下書きが必要です。この準備作業をAIが担うと、講師が一から書き起こす必要は薄れます。空いた時間の使い先は、扱う範囲の判断や、想定した場面が自社の業務と合っているかの確認。変わるのは労力のかけどころであり、内容を確かめて公開を認める工程は、これまでどおり講師の側に残ります。
機会は、進行の枠の外にも
教材の側に答えてもらう場面を置ければ、受講者は進行役の空きを待たずにアウトプットできます。まとまった時間を確保しにくい場面でも、自分の言葉で言い換えたり、条件を比べて選んだりする機会を持てるようになるのです。ただし、準備と確認の手間がなくなるわけではありません。妥当かどうかを判断する役割は、引き続き講師の側に残ります。
借りてきた事例から、自社に残る事例へ
事例は、真似る対象から素材へ
他社の事例を当日の進行としてそのまま再現する形から、そこで求められていたアウトプットの型だけを取り出し、自社の教材に置き直す形に変えていけます。まとまった時間を確保できた回に限られていた活動も、日々の学習に分けて組み込みやすくなります。研修の当日は、答えが分かれた論点の検討に時間を使いやすくなるのです。
手元に残るのは、自社の事例
受講者が答えた学習データが残るため、研修担当者は、どの形式のアウトプットでつまずきやすいかを把握しやすくなります。他社の事例を借りる状態から、自社の事例を積み上げる状態へ。ただし、そこから分かるのは、用意した場面と設問のもとでの学習の状況までです。現場での実践や業務の成果まで示すものではありません。
重要なポイント
アクティブラーニングの事例から持ち帰れるのは、活動の名前ではありません。その事例が受講者に何を求め、どの形式のアウトプットを何回引き出していたか。そこまで読み取れて初めて、自社の研修に置き直す判断ができるようになります。名前だけをそろえても、受講者が経験する中身は事例と同じにはならないのです。
事例を自社に移すときの手がかりは、二つあります。一つは、そのアウトプットの機会が受講者全員に回る組み方になっているかという点です。もう一つは、その場面を制度や製品の改定のたびに用意し直せるかどうか。この二つがそろっていれば、事例は一度の企画にとどまらず、続けられる形として自社に残ります。