属人化を防ぐ研修は、担当が一人だと依存を減らせません
業務の進め方を教材にまとめて研修の形で共有するところから、属人化を防ぐ取り組みを始める職場は少なくありません。ただ、その教材を組み立てて当日を進められる人が、社内に一人しかいないこともあります。
属人化を防ぐとは、別の人が再現できる状態
書き出した時点では終わりません
属人化を防ぐという言葉は、手順を書き出す作業とほぼ同じ意味で使われることがあります。ただ、書き出した資料が共有フォルダに並んだだけでは、その業務を進められる人の数は変わりません。別の人がその資料を読み、同じ場面で同じ判断にたどり着けるかどうか。属人化を防げたかどうかは、そこに表れます。資料が増えるほど作業は進んだように見えますが、読む側が再現できるかどうかは、分量とは別の問題です。書き出す作業は、そこに至るための手段の一つです。
教材と研修という進め方
実際の職場では、その手段として業務の進め方を教材にまとめ、研修の形で共有する進め方が広く採られています。口頭で伝える場合と違うのは、内容が形に残り、同じ説明を何度でも同じ水準で伝えられる点です。研修を担当する人がその場にいれば、資料だけでは伝わりにくい前提や例外も、質問を受けながら補えます。教材と研修を組み合わせるこの形が、属人化を防ぐ取り組みとして一般に語られてきた範囲です。
対策の側に移った、二つ目の一人依存
移ったのは依存の先だけ
教材を作り、その回を進行できる人が社内で一人だけの場合、業務そのものを進められる人は増えても、その進め方を伝えられる人は一人のままです。その一人の予定が本業で埋まっている間は、次の回を開けません。増えたのは教材の数であって、その回を開けられる人の数ではありません。部門として見れば、頼る先が業務の担当者から研修を担当する人へ移っただけで、一人に集まっている状態そのものは残っているのです。
自分がいなくても成立するか
だからこそ、属人化を防ぐ作業を設計する段階で、確かめる相手を自分の外に置いておく必要があります。教材が読みやすいか、内容が正しいかに加えて、自分がその場にいなくても同じ回が成立するかどうかを、最初から条件に入れます。この条件を後から足そうとしても、教材はすでに一人の頭の中を前提にした形で出来上がっているはずです。
業務シーンを1つ選ぶと、AIが顧客役を務めてあなたと1回の会話を行います。終了後、評価フィードバックを確認できます。
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兼任のまま一人で回している準備と当日
二人目の分だけ増える準備
社内で研修を担当する人の多くは、本業を持ちながら、設計から当日の進行までを引き受けています。二人目を立てるには、その人の準備時間に加えて、教材には書かれていない前提や、想定外の質問への答え方を伝える時間が新たにかかります。どちらも本業の合間から捻出することになり、結局は同じ人が担当を続けることになるのです。
完成した日で止まる教材
もう一つの制約は、教材が完成した時点で更新の手が止まりやすいことです。当日に受講者から出た質問と、その場で足した補足は、担当した本人の記憶にとどまります。次に別の人が同じ回を持とうとしても、手元にあるのは初回のままの教材です。
準備の負担が、一人に集まらない形へ
組み立てる作業から確かめる作業へ
AIが社内文書の整理と初稿づくりの一部を引き受けると、研修を担当する人の時間の使い方が変わります。返ってくるのは整理された下書きにとどまり、そのまま公開できる形にはなりません。教材を一から組み立てる作業に充てていた時間を、内容が自社の業務に合っているか、説明の範囲が広すぎないかを確かめる作業に回せます。確かめる判断そのものは人が行うため、手間がなくなるわけではありません。
二人目が自分で読み込める材料
準備の進め方が変わるのは、二人目に立つ人も同じです。整理された材料が先にあれば、一人目が説明できる時間を待つ代わりに、自分で目を通したうえで、分からない点だけを確認する形を取れます。業務上の判断が必要な部分は引き続き人が補いますが、二人目を立てるまでの期間は短くなりやすいと言えます。
教材の完成から、二人目が担当する日へ
設計に含める二人目の一回
属人化を防ぐ作業の区切りが変わります。教材が仕上がった時点で完了とせず、自分以外の担当者がその回を一度受け持つところまでを、同じ一続きの作業として設計に含めておく形です。担当する人を先に決めておけば、教材を作る段階から、その人が読んで分かる書き方を選べます。
質問が教材に戻る往復
二人目が担当した回で出た質問こそ、教材のどこが足りていないかを示す手がかりです。整理や更新にかかる負担が下がれば、その質問への答えを次の回の教材に反映し、また別の人が担当するという往復を続けやすくなります。往復のたびに手を入れる作業は残りますが、一人の記憶だけに頼る部分は少しずつ減っていきます。
重要なポイント
属人化を防ぐ取り組みそのものも、担い手を一人に絞ったままでは同じ形を繰り返します。誰の手を離れても回るようにするための作業が、別の誰か一人の手元にとどまっていないかどうかは、教材の出来ばえとは切り離して見ておきたい点です。設計の段階でこの点を条件に加えておけば、後から足し直す手間を避けられます。
防げたかどうかを確かめる時点は、教材が完成した日でも、受講した人数でもありません。自分以外の誰かがその回を一度担当し、受講者から出た質問にその人が答えられた日です。そこまで進んで初めて、教材の外に残っていた部分が見えてきます。その日を先に決めておくと、教材づくりの進め方も変わります。