建設業の担い手育成のための技術継承は、配属先で偏ります
入社から三年、と年数で育成の進み方を語る場面は少なくありません。ただ、同じ三年でも、担当した現場が改修中心だった人と新築中心だった人とでは、手をかけた工程が違います。年数は、経過した時間しか示さないのです。
年数に表れない、経験の中身
同じ三年でも、中身は違います
建設業では、育成の進み方を年数で語ることが多くあります。一人前になるまで何年、という言い方です。ただ、その年数の中身にあたるのは、その人が現場で出会えた工種です。担当した現場が変われば、手をかけた工程も変わります。年数は経過した時間を示すだけで、何に出会ったかまでは示しません。育成の進み方をつかむには、期間の長さよりも、これまで担当してきた工程の並びを見ることになるのです。
渡していく単位は、工種の側です
本社で育成計画を立てる立場から見ると、渡していく単位は期間ではなく工種になります。誰がどの工程に手をかけ、どこにまだ触れていないのか。そこが見えて初めて、次に用意する場を決められます。なお、ここで扱うのは育成の進め方の側だけです。施工技術そのものの良し悪しや、安全管理、法令への対応について、専門的な内容を示すものではありません。制度上の要件は所管の定めによります。
配属先は、誰が決めているのか
巡り合わせで決まる配属先
では、なぜ人によって出会う工程が変わるのでしょうか。配属先は、受注と工期の巡り合わせで決まります。本人が選べるものではありませんし、上司の采配だけで決まるものでもありません。現場は着工から竣工までで解散し、次はまた別の顔ぶれ、別の条件のもとで始まります。工場のラインのように、同じ場所で同じ工程が毎日回るわけではないのです。
まだ出会っていない工種を把握します
放っておけば、経験はその巡り合わせのまま偏っていきます。本社側で育成を担当する立場にできるのは、施工の中身に点数をつけることではありません。その人がまだ出会っていない工種を、把握しておくことです。どこに触れていないかが分かっていれば、次にどの現場へ送るかを考える材料になります。巡り合わせを待つ前に、触れておく機会を用意することもできます。
業務シーンを1つ選ぶと、AIが顧客役を務めてあなたと1回の会話を行います。終了後、評価フィードバックを確認できます。
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本社側の人手では追いつかない洗い出し
現場ごとに散らばる担当の記録
ただ、誰がどこに触れていないのかを本社側でつかむのは、思うほど簡単ではありません。担当した工程の記録は現場ごとに散らばり、書き方の細かさもそろいません。竣工とともに現場が解散すれば、聞ける相手も入れ替わります。現場の数だけ、集めて読む作業が増えていくのです。
一人ずつ突き合わせる時間がありません
集めた後には、一人ずつ、経験した工程とまだ経験していない工程を突き合わせる作業が待っています。本社側で育成を担当する人数は限られ、日々の研修運営と並行して進めることになります。結果として、この洗い出しは後回しになりやすいと言えます。
手元の資料から組み立てる教材へ
施工要領のままでは教材になりません
現場で使われている施工要領や作業手順の資料は、そのままでは教材になりません。何をどこまで理解してほしいのかを決め、読む順序を整え、前提となる説明を足す作業が要ります。AIがこの整理と初稿づくりを引き受けると、まだ経験していない工種について先に目を通しておく教材を組み立てる工数が下がります。手元にある資料を、そのまま出発点にできるのです。
決める役割は本社側と現場に残ります
軽くなるのは、教材をそろえるまでの工数です。どの工種を先に用意するのか、どこまで目を通しておいてもらうのかを決める役割は、引き続き本社側と現場に残ります。書かれた中身がいまの現場のやり方に沿っているかを見る工程も、これまでどおり必要です。負担がなくなるわけではありません。資料を書き起こす手前の作業が軽くなる、という程度の変化です。
配属を待たずに触れておく段取りへ
配属の相談で、工程の並びを見ます
次の現場が決まる前に、一度目を通しておく段取りを、育成計画の中に置けるようになります。配属の相談の場でも、これまで担当してきた工程の並びを見ながら、次はどこに触れてもらうかを話せます。年数の長さだけを手がかりにしていた頃とは、話の材料が変わってくるのです。
目を通したことと、担当できること
ここで確かめておきたいのは、先に目を通すことと、その工程を担当できることは別だという点です。触れた記録が増えたこと自体を、育成の成果として受け取らないようにします。また、法令で定められた資格、特別教育、技能講習にあたるものは、教材や座学で置き換えられるものではありません。ここで述べている進め方は、それらを代替するものではないのです。
重要なポイント
育成の進み方を年数で語ると、話は伝わりやすくなります。ただ、その年数の中身は、その人がどの工程に手をかけてきたかによって変わるものです。同じ期間を過ごしても、出会えた工種が違えば、次に渡せるものも違ってきます。年数の長さだけでは、その並びまでは見えてこないのです。育成計画を組み直すときに見たいのは、その並びの側です。
育成の進め方を点検する場面では、一人ひとりについて、まだ出会っていない工種を言葉にできるかどうかを見てください。言葉にできていれば、次の配属を考える材料になりますし、先に触れておく場も用意できます。ただし、目を通した記録が増えたこと自体を、育成の成果として受け取らないことです。