アクティブラーニングの効果は、想起があるかで変わります
アクティブラーニングを取り入れた新人研修でも、受講者が想起する時間はごく短いことがあります。手元の資料を開いたまま話し合い、翌週には内容を思い出せません。ただ、参加の形が足りないわけではないのです。
想起が始まるのは、資料を閉じてから
想起とは何か
アクティブラーニングでは、受講者が説明を聞くだけでなく、考えを言葉にしたり判断を示したりする時間を組み込みます。想起とは、そのうち教材や資料を見ずに、学んだ内容を自分の記憶から引き出している時間を指すのです。手元の資料を読み上げて答える場合や、隣の受講者の発言を聞いて同意する場合は、参加はしていても想起は起きていません。この違いが、効果の差になっていきます。
参加と想起は、別のもの
参加型の形式を取っているかどうかは、想起が起きているかの目安になりません。確かめたいのは、受講者が答えを出すときに何を見ていたかという点です。答えを出す前に資料を確かめたのか、それとも記憶だけをたどったのか。同じ発言に見えても、この二つは受講者にとって別の経験になります。グループワークやケーススタディといった形式の名前ではなく、資料を閉じている時間がどれだけあったか。そこを数えると、研修の中身が具体的に見えてきます。
知識が残る条件は、間隔と回数の両方
日を置いた二度目の問い
学んだ内容は、聞いた直後よりも、自分の言葉で説明したり問いに答えたりしたあとのほうが記憶に残りやすいとされています。さらに、研修の当日にうまく答えられたかどうかと、一週間後に同じ内容を思い出せるかどうかは、別の話です。当日は資料の内容が頭に残っているため、思い出す負担は軽くて済むと言えます。日を置いてから同じ内容を問い直すと、記憶をたどる作業が改めて必要になります。
一人ずつ違う、想起の回数
グループワークで発言した受講者には記憶をたどった経験が残り、聞いていた受講者には残りません。同じ研修に同じ時間だけ参加しても、想起した回数は一人ずつ違います。人数が多い回では、一度も答える順番が回ってこない受講者も出てくるのです。この差は、研修が終わったあとに何を思い出せるかという差につながります。
業務シーンを1つ選ぶと、AIが顧客役を務めてあなたと1回の会話を行います。終了後、評価フィードバックを確認できます。
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間隔を空けた問い直しが続かない理由
講師が確保できない時間
日を置いて同じ内容を問い直すには、研修の当日とは別に時間を取る必要があります。企業内研修の講師は、ニーズの調査から教材の作成、当日の講義、実施後のフォローまでを一人で兼任していることが多いのです。受講者一人ずつに二度目、三度目の問いを用意する余裕はありません。
後回しになる教材の見直し
想起を求める問いは、扱う製品や制度が変わるたびに見直しの対象になります。担当する部署や役割ごとに内容を調整しようとすると、準備の負担はそのまま積み上がります。改定のたびに作り直す前提では、二度目の問いを用意する作業が後回しになりやすいと言えます。手を入れられないまま時間が経てば、読むだけの資料を配る形に戻っていきます。
問いを作る側から、確かめる側へ
AIが引き受ける準備の作業
資料の整理、問いの下書き、間隔を空けた二度目の提示といった準備の作業は、AIが一部を引き受けます。読んで終わる教材と、答えを出す場面を含む教材。その差は、この準備の段階で生まれるのです。講師が一から作らなくても、想起を求める問いを継続して用意しやすくなります。ただし、問いの内容が業務に合っているかを見る作業は、引き続き講師の側に残ります。
判断に充てられる時間
空いた時間の使いどころも変わります。問いが受講者の前提知識に合っているか、想定した状況が実務に即しているか。講師はこうした判断に時間を充てやすくなります。業務の実態と照らして内容を確かめられるのは、その業務を日々担当している人だと言えます。AIが変えるのは、労力のかけどころです。
想起は、当日限りから続く運用へ
当日の前後にも置ける想起
これまで研修の当日にまとめていた想起の機会を、事前学習や実施後のフォローにも分けて置けるようになります。当日に確保できる時間の長さで、想起の回数が決まる状態ではなくなると言えます。通勤の合間や業務の合間といった短い時間でも、前回の内容を思い出してから答える流れを挟めます。
理解のずれが見えてきます
受講者が答えた記録が残るため、どの内容で理解のずれが起きやすいかを、講師が学習ポイントごとに確認しやすくなります。次に用意する問いの重点も、その記録をもとに決めやすくなるのです。ただし、そこから分かるのは、用意した問いと条件のもとで受講者がどう答えたかという範囲にとどまります。業務での行動が変わったことまでを示すものではありません。
重要なポイント
アクティブラーニングが記憶に残るかどうかは、形式の名前だけで決まるものではありません。受講者が資料を閉じ、自分の記憶から答えを出した回数。それも、効果を左右する要素の一つです。参加型の進め方を整えても、答える順番が一部の受講者に偏れば、経験する中身は一人ずつ変わってきます。
進め方を見直すときに確かめたい点は、二つあります。受講者全員が資料を閉じて答える機会を持てるか、そして日を置いた二度目の問いを担当者が無理なく続けられるか。単発の企画で形を整えられても、翌年も同じ形で回せるかどうかは別の問題です。この二つを無理のない範囲でそろえておくと、想起の機会は積み上がっていくのです。