アクティブラーニングは古いのか、言葉と設計は別の軸
研修の企画会議で、アクティブラーニングという言葉に、それはもう古いのではという反応が出ることがあります。ただ、会議で使われなくなった言葉と、その言葉が示していた設計上の判断が、同じ速さで古びるとは限りません。
古いのは言葉か、設計の判断か
数年ごとに入れ替わる呼び名
研修や人材育成の分野では、数年ごとに新しい言葉が現れ、前の言葉は表に出なくなります。同じ内容が別の名前で語り直されることも珍しくありません。企画書に書き入れる言葉が数年で入れ替わるのは、研修部門では見慣れた光景。だからこそ、アクティブラーニングはもう古いのではという受け取り方は、的外れではないのです。
言葉が退いても、判断は残ります
一方で、言葉が使われなくなることと、その言葉が示していた設計上の判断が不要になることは、別の出来事です。アクティブラーニングという呼び名を会議で聞かなくなっても、受講者に自分の言葉で説明してもらう、条件を比べて選んでもらうといった判断まで、同時に効力を失うわけではありません。呼び名が残るのは企画書の表紙、判断が残るのは教材の設問と進め方の中。古いかどうかを論じる前に、問われているのが呼び名なのか判断なのかを分けておきます。
見分ける手がかりは、求める行動が変わるか
同じ行動を求めるなら、看板の掛け替え
見分ける手がかりは、その言葉に沿って研修を組み立てたとき、受講者に求める行動が前と変わるかどうかにあります。グループで話し合う、考えを書き出す、選んだ理由を説明する。求める行動がこれまでと同じであれば、変わったのは章立ての見出しと説明の言い回しだけです。看板を掛け替えただけの研修に、中身から作り直す理由はありません。
求めることが変われば、別の設計
逆に、新しい言葉に沿って組み立てた結果、受講者に求める行動が前と変わるのであれば、それは呼び名の問題ではありません。個人で考える時間だけを置いていた場面に、他の受講者へ説明する場面を加える。答えを選ぶだけだった設問を、選んだ根拠まで書いてもらう形に変える。こうした変更は、教材の中身に手を入れる理由になるのです。呼び名だけが新しくなったのか、求める行動まで新しくなったのか。この違いによって、手を入れる範囲は変わります。
業務シーンを1つ選ぶと、AIが顧客役を務めてあなたと1回の会話を行います。終了後、評価フィードバックを確認できます。
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時間が回らない、確かめる作業
教材を読み直して拾う作業
手元の研修が受講者に何を求めているかは、教材のどこかに一言で書き出されているわけではありません。スライドの流れ、配布資料の設問、進行メモ。順に読み直して、初めて拾い上げられます。企画から講義、実施後のフォローまでを一人で兼ねている講師に、その時間はまとまって取れません。
比べるには、一度作るしかありません
新しい言葉に沿って組み直した場合との違いも、実際に一度作ってみるまでは見えません。作ってから比べる余裕がないため、章立ての見出しだけを新しい言葉に合わせるか、今回は見送るかという二択に落ち着きやすくなると言えます。どちらを選んでも、その研修が受講者に何を求めているかは確かめないままです。
作り直しの前に、見比べる段階へ
下書きの出どころは、手元の資料
変わりつつあるのは、案を一つ形にするまでの労力。比べるための案をもう一つ用意すること自体が、これまでは実務の中で後回しになりがちでした。すでに社内にある研修資料や業務文書をもとに、AIが構成と初稿を組み立てられるようになりました。白紙から書き起こす前提が外れると、いま使っている教材から受講者に求める行動を書き出す作業も、別の言葉に沿った案を用意する作業も、以前より着手しやすくなるのです。
並べても、選ぶのは講師のまま
ただし、受講者に何を求めるかを決めるのは講師のままです。AIが用意するのは見比べるための材料であり、どちらの案を採るかという判断まで代わりに下せるわけではありません。並んだ案を読み合わせる手間、自社の業務に合っているかを確かめる手間。どちらも残ります。軽くなるのは、比べ始めるまでの準備のほうです。
話の起点が、言葉から求める行動へ
会議で先に決めるもの
企画会議の論点も置き換えられます。先に決めるのは、新しい言葉を取り入れるかどうかではなく、受講者に求める行動を変えるかどうか。変えないと判断した回は、資料の言い回しをそろえるだけで足ります。変えると判断した回だけ、該当する場面の設問と進め方に絞って組み替えます。新しい言葉が出るたびに全体を組み直す進め方からは、少しずつ離れられるのです。
説明の中身が入れ替わります
関係者への説明も変わります。流行している手法を取り入れたという説明ではなく、この研修では受講者にここまでを求めるという説明になります。ここで示せるのは、研修の中で受講者に求める行動の範囲まで。現場での実践がそのまま変わると言い切れるわけではありません。
重要なポイント
研修の分野では言葉が数年ごとに入れ替わりますが、その言葉が示していた設計上の判断まで、同じ速さで古びるわけではありません。古いのは呼び名なのか、それとも受講者に求める行動なのか。アクティブラーニングは古いのかという問いの答えは、この二つを分けたところから見えてきます。
新しい言葉に出会ったときは、その言葉に沿って研修を組んだら受講者に求める行動が変わるかを確かめます。変わらなければ、見出しをそろえるだけで足ります。変わるのであれば、手を入れるのは該当する場面だけ。この一点を手元に置いておけば、言葉が入れ替わるたびに全体を組み直さずにすみます。