間隔型学習法は、間隔だけでなく想起で効果が変わります
新人研修や製品知識の定着を目的に、一定の間隔を空けてから同じ内容を再度届ける仕組みを取り入れる企業が増えています。ただ、間隔さえ空ければ効果が出るとは限らず、その間に何を求めるかも重要な観点です。
間隔型学習法の仕組みと、間隔の決め方
忘却に合わせて復習する考え方
間隔型学習法とは、学んだ内容を一度で終わらせず、時間を置いてから繰り返し復習する学習の進め方です。人は学んだ直後から少しずつ内容を忘れていくため、記憶が薄れかけたタイミングで復習を挟むと、再び記憶が強まりやすくなります。復習が早すぎればまだ覚えている内容をなぞるだけになり、遅すぎれば一から学び直すのに近くなるため、このタイミングの取り方が学習効果を左右するのです。詰め込み型の反復とは、この点で性格が異なります。
間隔は復習のたびに広げます
復習の間隔は、常に一定にするのではなく、内容が定着してきた段階に応じて少しずつ広げていくのが基本の考え方です。最初は数日後、次は数週間後というように間を空けていくと、思い出すまでにかかる負荷が適度に保たれ、忘れかけた状態から記憶を引き出す経験を重ねられます。新入社員研修や製品知識の習得のように、一度学んだ内容を長期間覚えておく必要がある場面ほど、この間隔の設計が重要になると言えます。この負荷の調整が、間隔型学習法の中心的な設計要素です。
間隔の効果を左右する、想起の有無
再読と想起では効果が違います
復習といっても、資料を読み直すだけの再読と、内容を見ずに自分の記憶から引き出そうとする想起とでは、記憶への残り方が異なります。例えば製品仕様を復習する場面でも、資料をもう一度眺めるだけの回と、資料を見ずに仕様を説明してみる回とでは、記憶に残る度合いが変わってくると言えます。間隔を正しく設計しても、復習のたびに資料を眺めるだけであれば、思い出す力そのものは十分に鍛えられません。間隔型学習法が前提とする復習は、後者の想起を伴う形です。
想起できるかどうかを確かめる
想起を伴う復習では、問いに答える、手順を説明するなど、記憶から情報を引き出す行動が必要になります。多少あいまいであっても、思い出そうと試みること自体が、記憶を強める働きを持つとされています。この行動があって初めて、間隔を空けたことの効果を確かめられるのです。間隔のスケジュールだけを整えても、各回で想起を求める設計がなければ、狙った定着にはつながりにくくなります。
業務シーンを1つ選ぶと、AIが顧客役を務めてあなたと1回の会話を行います。終了後、評価フィードバックを確認できます。
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想起型の復習設計が、続けにくい理由
想起を促す問いの用意に手間がかかる
資料を読み直すだけの復習であれば準備は簡単ですが、想起を求める復習には、記憶を引き出させるための問いや課題をコンテンツごとに用意する作業が必要です。新製品や制度が追加されるたびに、担当者が一つずつ問いを考え直すことになり、対象となる知識点が増えるほど、この準備を少人数だけで続けるのは難しいと言えます。
配信のタイミング管理も負担になる
学習者ごとに研修の開始時期や進捗が異なると、次に復習を届けるべき時期も一人ひとり違ってきます。誰にいつ何を届けるかを表計算ソフトなどで手作業により管理しようとすると、対象人数やコンテンツの数が増えるにつれて、担当者が把握しきれない範囲が広がっていきます。
復習設計の負担から、継続的な提供へ
問いの用意にかかる労力が減る
想起を求める問いや課題の土台を、元になる資料からAIが用意できるようになると、担当者はコンテンツごとに一から作成する必要がなくなります。空いた時間を、問いの内容が実際の業務に即しているかどうか、想定する場面として無理がないかどうかの確認に充てられるようになるのです。ただし、内容の適否を判断する役割は、引き続き担当者に残ります。
配信の管理も引き受けやすくなる
学習者ごとの進捗に合わせて、次の復習を届けるタイミングをAIが調整できるようになると、対象人数が多い場合でも、一人ひとりの状況に応じた配信を続けやすくなります。担当者は個別のスケジュールを一つずつ手で組む作業から離れ、全体の状況を確認する側に回りやすくなると言えます。管理の手間がなくなるわけではありませんが、対応しやすい範囲は広がります。
想起を伴う復習が、コース設計の標準装備へ
復習をコースにあらかじめ組み込める
復習の設計と配信にかかる負担が軽くなると、公開後に思い出したように復習を追加するのではなく、コースを設計する段階から、間隔を空けた想起の機会をあらかじめ組み込みやすくなります。新入社員研修や製品知識の更新など、対象となるコースが増えても、同じ考え方を横展開しやすくなると言えます。
思い出せたかどうかを確認しやすくなる
想起を伴う復習を継続的に提供できると、学習者が一定期間の後にどの内容を思い出せているかを、担当者が確認しやすくなります。例えば製品知識に関する問いへの回答状況を追えば、忘れやすい範囲の見当がつけやすくなるのです。ただし、そこから分かるのは、設定した問いに対する学習者の反応にとどまり、現場での実践までを保証するものではありません。
重要なポイント
間隔型学習法は、間隔さえ空ければ効果が出る学習法ではありません。各回の復習で記憶から情報を引き出す想起を求められるかどうかが、効果を分ける重要な観点と言えます。資料を眺めるだけの復習を間隔だけ整えても、狙った定着にはつながりにくくなります。間隔の設計と、想起を求める設計は、あわせて考える必要があるのです。
既存の復習の仕組みを見直す際は、間隔の長さだけでなく、各回で学習者に何をさせているかを確認します。資料の再読にとどまっている場合は、想起を求める形に変えられないか、そして、それを多くの学習者・コンテンツに対して継続的に提供できる体制があるかを、あわせて検討します。