アクティブラーニングの効果は、課題の水準で変わります
グループワークを取り入れた研修で、議論を引っ張る受講者と、資料を見返すだけで終わる受講者に分かれます。アクティブラーニングの効果を左右するのは、活動の種類よりも、課題の水準が受講者に合っているかどうかなのです。
アクティブラーニングの効果とは
理解が深まり、思い出しやすくなる
アクティブラーニングの効果とは、受講者が学習の途中で内容を自分で扱うことによって、理解が深まり、後から必要な場面で引き出しやすくなることを指します。自分の言葉で言い換える、複数の選択肢を比較して選ぶ、条件に応じて判断する、返ってきた指摘をもとに理解を修正する。研修で扱う内容に、こうしたアウトプットの場面を組み込んでいるかどうかが、聞くだけの学習との分かれ目になると言えます。
形式の名前は、効果を保証しません
一方で、グループワークやケーススタディといった形式の名前が、効果そのものを表すわけではありません。同じケーススタディでも、数人が議論を進め、残りの受講者は結論を聞いて終わる回があります。アウトプットを求められたのは、発言した数人だけなのです。効果と呼べる範囲にも限りがあります。学習によって変わるのは、受講者が内容を理解し、必要なときに引き出せるところまで。実務での行動や事業の数字には、上司の関与や業務の手順、使える道具も影響します。
受講者ごとに違う、効果が出る水準
手が止まる人と、考えずに答える人
新卒2年目と中途入社の中堅が同じ回に並ぶ研修は珍しくありません。取引の全体像をまだつかめていない受講者にケースの検討を求めると、前提が足りず、どこから手をつけるか決められないまま時間が過ぎます。逆に、同じ内容を何度も扱ってきた受講者が向き合うのは、考える前に答えが浮かぶ課題。どちらの側でも、内容を自分で扱う作業はほとんど起きていないのです。
効果は、努力が要るときに出ます
知識は、聞いた直後よりも、自分で思い出したり言葉にしたりした後のほうが記憶に残りやすいとされています。ただし、その働きが生まれるのは、思い出す作業に少しの努力が必要なとき。答えがすぐに浮かぶ課題では、記憶をたどる作業が起きません。必要なのは活動の種類を増やすことではなく、受講者の前提知識に合わせて、求めるアウトプットの水準を刻むことだと言えます。
業務シーンを1つ選ぶと、AIが顧客役を務めてあなたと1回の会話を行います。終了後、評価フィードバックを確認できます。
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全員に同じ課題を渡すしかない事情
前提知識の幅は、事前に見えません
受講者の前提知識にどれだけ幅があるかは、事前の申込情報だけでは分かりません。事前アンケートで経験年数を尋ねても、返ってくるのは自己申告。20人を超える集合研修で、一人ひとりの理解度を確かめてから課題の水準を変える進め方は、当日の進行に組み込めません。
水準を分けるほど増える、教材の量
難易度を3段階に分ける設計にすれば、設問も、つまずいたときの補足説明も、その分だけ用意する必要があります。研修講師がニーズの調査からコース設計、講義、事後のフォローまでを兼任している職場では、そこまで手が回りません。結果として、全員に同じ課題を渡す形に落ち着きやすいのです。
一つずつ書き起こす作業から、確認と判断へ
水準ごとの初稿を組み立てられます
ここで変わるのは、水準を分けた課題を用意するまでの工数です。既存の研修教材や業務資料をもとに、易しい入り口の設問、応用を扱う設問、つまずいたときの補足説明といった初稿を、AIが組み立てられるようになります。講師が一つずつ書き起こしていた作業は軽くなるのです。ただし、その切り分けが自社の業務に合っているか、判定の基準が妥当かを確かめ、公開してよいと決めるのは、引き続き講師の役割です。
確かめる作業に時間を回せます
初稿を用意する負担が下がると、これまで1本しか作れなかった課題を、複数の水準で持てるようになります。講師が時間を充てる先は、水準の切り分けが受講者の経験に見合っているかを確かめる作業へ移ります。ただ、誰にどの水準を渡すかを決めるのは講師の判断。返ってきた内容に目を通す作業も残ります。負担がなくなるわけではありませんが、時間の使いどころは変わります。
一律の課題から、水準を刻んだ研修へ
同じ回でも、入り口を分けられます
研修の進め方が変わります。全員に同じケースを渡していた回でも、取引の流れをまだ知らない受講者には手順を確かめる課題を、経験を重ねた受講者には条件を比べて選ぶ課題を用意できます。同じ時間のなかで、それぞれが自分の水準で答える場面を持てるようになるのです。
確かめる対象は、どこでつまずいたか
効果の見方も変わります。満足度の評価に加えて、どの学習ポイントで理解のずれが繰り返し起きているのか、どの水準の課題までなら答えられるのかを、講師が確認できるようになります。ただし、そこから分かるのは、設定した課題と条件のもとでの受講者のパフォーマンスまで。業務での実践や行動の変化そのものを示すものではありません。
重要なポイント
アクティブラーニングの効果は、グループワークやケーススタディという形式の名前に現れるものではありません。同じ活動でも、課題の水準が受講者の前提知識に見合っていなければ、手が止まるか、考えずに答えて終わります。効果を設計する作業とは、活動を選ぶことではなく、求めるアウトプットの水準を受講者に合わせて刻むことなのです。
アクティブラーニングの進め方を見直すときは、二つの点を確かめておきたいところです。一つは、受講者の前提知識に幅がある前提で、課題の水準を分けられているかという点。もう一つは、その分だけ増える準備を、講師が日々の業務と並行して続けられるかという点です。この二つがそろって、活動の選択が意味を持ちます。