職場のアクティブラーニングは、研修の日だけでは足りません
研修の当日はロールプレイングで手応えがあっても、職場に戻れば元の進め方が続きます。ただ、当日の組み立てだけの問題ではありません。学びが残るかどうかは、業務の中に答える場面を置けるかにも関わります。
職場のアクティブラーニングとは何か
聞くだけで終わらせない進め方
職場でのアクティブラーニングとは、業務で使う知識を受け取るだけで終わらせず、学習者が自分の言葉で言い直し、条件を比べ、判断を示すところまで含めた学び方です。形としては、担当業務を題材にした勉強会、先輩役と担当者役に分かれた練習、振り返りを共有する場が挙げられます。呼び方は職場ごとに違っても、受け取った内容を学習者自身が使ってみる工程を含む点は変わりません。講義や資料配布をやめる話ではなく、インプットのあとにアウトプットの工程を置く組み立て方だと言えます。
職場ならではの前提条件
学校での実践と違い、職場には二つの前提があります。一つは、学習者が現在進行形で業務を担当していることです。題材を架空の設定に頼らず、実際に扱う顧客や手順から取れます。もう一つは、まとまった学習時間を確保しにくいことです。集合研修に割ける時間は限られ、その場で全員が発言できるとは限りません。確かめたい点は、手法の名前ではなく、担当業務の条件を題材にしたアウトプットの場面がどれだけ置かれているかという点なのです。
学習者任せになる、置き換えと反復
差を埋めるのは学習者自身
研修で扱う題材が業界一般の例にとどまると、学習者はまず、自分の担当業務に置き換える作業から始めることになります。取引先の規模も、承認の手順も、例外的な対応の多さも、部署によって違います。その差を埋める作業を学習者に任せたまま、答えを出す場面だけを用意しても、考えるのは目の前の業務ではありません。自分の業務ならどう判断するかまで踏み込めた学習者と、そこまで至らなかった学習者とでは、同じ場に参加しても残るものが変わってきます。
一度で終わる学びの限界
もう一つは、機会の置き方です。知識は、説明を聞いた直後よりも、自分で説明し直したり、質問に答えたりした後のほうが記憶に残りやすいとされています。ただし、一度答えて終わりであれば、日々の業務に押し流されていきます。数日後、別の状況で同じ判断をもう一度求められたときに、学習者は自分がどこまで思い出せるかを確かめられるのです。
業務シーンを1つ選ぶと、AIが顧客役を務めてあなたと1回の会話を行います。終了後、評価フィードバックを確認できます。
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部署ごとの題材づくりが続かない理由
同じ業務でも、条件は職場ごと
題材を担当業務に寄せるほど、用意する種類は増えます。同じ営業職でも、担当する顧客層や決裁の流れは拠点ごとに違い、一つの教材ですべてを賄うことはできません。作り分けようとすれば、講師は各部署の業務を聞き取り、判断が分かれる場面を選び直すことになります。日々の運営業務を抱えたまま、この作業を全部署分そろえるだけの時間は残っていないのです。
改定のたびに古くなる題材
手を掛けて用意した題材も、手順や制度が変われば、前提の条件が実際の業務とずれていきます。改定のたびに作り直す前提では、見直しは後回しになりがちです。そのまま使い続ければ、学習者は現場と合わない設定について考えることになります。
一から作る時間が、確かめる時間へ
職場の資料が、題材の下地に
職場にはすでに、手順書、製品資料、対応事例、議事録といった文書があります。これらを学習の題材に変えるには、扱う範囲の切り出し、判断が分かれる箇所の抽出、設問の文案づくりといった準備が必要でした。この下ごしらえをAIが引き受けると、講師が一から書き起こす必要は薄れます。部署ごとに条件の違う題材も、既存の資料を出発点に用意しやすくなるのです。
講師に残る、内容の確認
準備の負担が軽くなっても、内容を確かめる工程は人の側に残ります。この設定は実際の業務の流れに合っているか、判断の分かれ目は現場の感覚とずれていないか。こうした点は、その業務を知る講師や現場の中核メンバーでなければ判断できません。変わるのは、時間をどこに使うかという点です。書き起こしに充てていた時間を、確認と調整に回せるようになります。
職場のアクティブラーニングは、業務の中へ
担当業務を題材にした機会
これまで集合研修の当日に集めていたアウトプットの場面を、日々の業務の合間にも置けるようになります。朝礼前の数分で担当している案件に近い設定に答え、その内容を次の勉強会で持ち寄る形も取れます。まとまった時間を確保できたときだけの取り組みから、業務の流れに沿って続ける形へと近づけていけるのです。
改定に合わせた手直し
手順や制度が変わったときも、題材の全体を作り直す前提ではなくなります。関係する箇所を探して直す手間は残りますが、着手までの負担は軽くなると言えます。拠点や役割が異なる学習者に対しても、それぞれの業務の条件に近い題材を用意しやすくなります。
重要なポイント
職場でのアクティブラーニングが成り立つかどうかは、当日の進め方や手法の名前だけで決まるものではありません。学習者が、自分の担当業務に近い条件で判断を求められること。それも、この学び方を支える条件の一つです。題材が業界一般の例にとどまれば、考える対象は教材の中の会社のままになります。
進め方を見直すときに確かめたい点は、二つあります。一つは、部署ごとに違う業務の条件を、題材にどこまで反映できるかという点です。もう一つは、改定のたびの手直しを、担当者が無理なく続けられるかという点なのです。一度きりの企画として形を整えられても、業務が変わり続ける中で同じ運用を保てるかは、別に考えておきたい点だと言えます。