技術継承が人任せと言われたら、止まった時点を探します
研修部門が年度の途中で報告する場で、技術継承の項目だけが計画どおりに進んでいないと分かることがあります。そこで出てくるのが、人任せになっている、という言葉。ただ、この一言のままでは、次に何をするかは決まらないのです。
後から出てくる、結果の呼び名
始める時点では出てこない言い方
技術継承が人任せになっている、という指摘は、取り組みを始める時点ではまず出てきません。年度の計画に項目を立てた段階では、誰もそうは言わないのです。この言い方が選ばれるのは、年度の途中や期末に、思ったほど進んでいないと分かったときです。熟練者の退職まで1年を切っているのに、予定していた回の半分も開けていない状況。そうした場面で、進んでいないという事実を短い言葉で伝えなければならなくなります。そこで手が届く言い方として使われているのであって、その言い方が不適切だという話ではありません。
この一言は、原因を指していません
気をつけたいのは、この言葉が原因を言い当てたものではないという点です。誰かが手を離したから進まなかったのか、日を押さえられなかったのか、材料が出てこなかったのか。そこまでは何も示していません。進んでいないという結果に、後から付いた呼び名だと言えます。呼び名として使うぶんには、状況を手短に共有できて便利です。ただ、そこから次に何をするかを割り出すことまではできません。
関与の度合いに寄っていく対策
関与を増やすという結論
この呼び名を原因として受け取ると、対策の形はおのずと決まってきます。研修部門がもっと関与する、現場に本腰を入れてもらう、次はきちんと巻き込む。どれも間違ってはいませんが、関与の度合いという、量りようのない話に寄っていきます。どれだけ増やせば足りるのかという目盛りが、この言い方には付いていません。誰の時間を何時間分空けるのか、いつまでに何を出すのか。その手前で議論が止まってしまうのです。
次の期にも同じ言葉が出ます
量りようのない対策には、期限も担当も付きません。年度が変わっても、現場の忙しさは前の年のまま。研修部門の手も増えていません。そうして次の期の報告でも同じ言葉がもう一度出てきますが、二度目には、前の期に何をどう変えたのかを説明しにくくなります。原因を取り違えているというより、原因の在りかをまだ一度も指せていない、という状態が続いていると言えます。
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思い出しでしか言えない、止まった時点
日付と名簿だけが残る年度の終わり
では、どこで止まったのかを一つ挙げてみるとします。年度の終わりに手元へ残るのは、開いた日と、その日に来た人の名前。配った資料の控えはあっても、出してもらうはずだった材料の側は、そもそも一覧になっていません。どの回のあとで連絡が途切れたのか、どの資料が出てこなかったのか。そこまでたどれる形にはなっておらず、覚えている人の記憶に頼ることになります。
挙げられても、頼み直しになります
記憶をたどって、あの資料が出てこなかった、と挙げられたとします。それでも、研修部門から打てる手は限られているのです。もう一度出してもらうよう現場に頼む形になり、頼む側にも受ける側にも、前の期と同じ負担がかかるからです。
部門の側に寄せられる手前の作業へ
現場に頼む分量が小さくなります
変わってきているのは、現場から出してもらう分量のほうです。社内に残っているのは、これまでの作業手順書や、設備を引き渡すときに作った説明資料。この文書群を受講者が順を追って読める形に組み替えるには、必要な範囲を選び出し、説明の抜けを埋める手数がかかります。ここをAIに任せられる範囲が広がると、研修部門の側で先に形を作り、現場には足りない箇所だけを見てもらえます。一から書き起こす依頼と、目を通して直す依頼とでは、現場に戻る重さが違うのです。
効く時点と、効かない時点
ただし、効くのは材料の時点だけです。日を押さえられなかったこと、受け取る人が決まっていなかったこと。こうした時点には、手数が下がっても届きません。どこまでを教材に含めるか、いま現場で回している手順と合っているか。これを見るのは、これまでどおり人の仕事として残ります。手数が軽くなっても、確かめる時間はそのままです。
一つ挙げてから選ぶ手当てへ
一つ挙がれば、次が選べます
進め方として変わるのは、振り返りで挙げるものの数です。全体がなぜ進まなかったのかをまとめる代わりに、止まった時点を一つ挙げます。なぜ一つでよいのか。忙しさの重なり方はその年によって違い、同じところで止まるとも限らないからです。挙げた時点を誰かの落ち度として扱う必要もありません。挙げるのは、次に手を入れる場所を決めるためだと言えます。
時点ごとに分かれる手当ての種類
挙げた時点によって、次に打つ手も分かれます。日を押さえられなかったのなら決め方を先に変え、材料が出てこなかったのなら出してもらう分量を小さくし、受け取る人が決まっていなかったのならそこから決め直します。同じ人任せという一言でも、必要な手はそれぞれ違うのです。どれを選んだのかは、次の報告でそのまま話せます。
重要なポイント
技術継承が人任せだという言い方は、進んでいないことを伝える言葉として自然に出てきます。ただ、その言葉のまま対策を立てると、関与を増やすという形に落ち着き、期限も担当も決まらないまま次の期を迎えます。同じ言葉がもう一度出てくるのは、この筋道をたどったときなのです。問い直したいのは、その言葉から先の立て方のほうです。
次に振り返るときの手がかりは、止まった時点を一つ挙げられるかどうかにあります。どの回のあとで連絡が途切れたのか、どの資料が出てこなかったのか。一つ挙げられれば、それに対応する手当ては選べます。挙げられないのであれば、各回で何を用意し、何が出てきたのかを残すところから。書き足す先は、いま使っている年間計画の行で足ります。