アクティブラーニングの問題は、前提知識のばらつきに表れます
アクティブラーニングを取り入れ、グループワークを組み込んでも、意見を出すのは決まった顔ぶれで、ほかは聞き役で終わる回があります。ただ、これは進め方だけの問題ではないのです。受講者が持つ前提知識の差も影響します。
アクティブラーニングで起きる問題の中身
現場で挙がる二つの問題
アクティブラーニングの問題として現場で挙がるのは、大きく二つです。一つは、参加の偏り。4人ほどのグループに分けても、口を開くのは業務経験のある受講者に限られ、新入社員は相づちだけで1時間を終えることがあります。もう一つは、かけた時間に見合う手応えが残らないという声です。ケーススタディを一本回すには準備にも当日にも時間がかかりますが、何を持ち帰ればよいのか受講者が言葉にできないまま終わる回もあるのです。
進め方の工夫だけでは減りにくい
この二つは、時間配分やグループの分け方、進行役の力量といった運営の課題として語られがちです。ただ、同じ進め方で実施しても、うまくいく回とそうでない回があります。分かれ目になりやすいのは、その活動が求める判断に、受講者が答えられるだけの前提知識を持っていたかどうか。運営の工夫だけでアクティブラーニングの問題を片づけると、活動の難度と受講者の前提が合っているかという観点が抜け落ちます。
なぜ同じ活動で差が開くのか
答えるには、前提知識が要ります
説明を聞く段階と、判断を求められる段階とでは、受講者に必要な前提が違います。手順の名前を知っていれば追える説明でも、二つの条件を比べてどちらを選ぶかを問われた瞬間に、業務の背景や例外の扱いを知らない受講者は答えを組み立てられません。残るのは、周りの発言を書き写すだけの時間。考えていないのではなく、考える材料がそろっていません。
同じ活動が、別の時間になります
一方、その業務を何年も担当してきた受講者にとって、同じ活動は知っていることの確認で終わります。新入社員には難しすぎ、中堅には物足りない活動。この両方が、1回の研修の中で同時に起きているのです。受講者名簿の上では同じ講座でも、前提知識のばらつきがそのまま経験の差になっていると言えます。活動の名称をそろえても、中身までそろうとは限りません。
業務シーンを1つ選ぶと、AIが顧客役を務めてあなたと1回の会話を行います。終了後、評価フィードバックを確認できます。
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作り分けに割ける時間の少なさ
作り分けられる人は限られます
前提の違いに合わせて教材を分けるには、目標の整理、扱う範囲の切り分け、補う説明の用意が要ります。この判断ができるのは、業務の中身と受講者の状況の両方を知る講師に限られます。通常業務を抱えながら、そこにまとまった時間を確保できるかどうか。作り分けの必要は分かっていても、着手が翌期に持ち越されることは珍しくありません。
改定のたびに一律版へ戻ります
制度や製品が変われば、段階を分けた教材も見直しの対象になります。改定のたびに作り直す前提では、更新は後回しになりがちです。結局、全員に同じ一本を配る形に戻り、活動の難度も一律のままになるのです。制度改定の多い領域ほど、この揺り戻しは早く訪れます。
段階を分ける準備は、人とAIの分担へ
区切りと補足の下書きを任せます
資料を学習の単位に区切り、前提を補う説明の下書きを用意し、難度の上げ方の案を並べる作業。こうした準備の工数をAIが引き受けると、講師が段階を一から組み立て直す必要は薄れます。空いた時間の使いどころは、どの受講者にどこまで求めるかという判断です。ただし、内容が実務に合っているかを確かめ、受講者に出してよいと認める工程は、講師の側に残るのです。
作り分けの単位が小さくなります
教材全体を作り直す前提ではなくなるため、足りない段階だけを足す、補足だけを差し替えるという進め方も取りやすくなります。難度ごとに教材を分けて持つことも、現実的な選択肢に入ってきます。改定のたびに一律版へ戻る流れは、以前よりは止めやすくなると言えます。関係する箇所を探して直す手間まで消えるわけではありません。
一律の進行から、つまずきに合わせた運営へ
活動の前に、前提をそろえます
討議やロールプレイングに入る前に、短い確認と補足を置けるようになります。前提が足りないまま判断を求められ、そのまま黙り込む受講者。そうした受講者が出る場面を、活動の前に減らしておけるのです。短い確認の結果を見てから、グループの分け方を決める進め方も取れます。
当日は、理解のずれが出た論点へ
全員に同じ説明を繰り返す時間が減り、講師は答えの分かれた論点に時間を使いやすくなります。受講者の答えが割れた箇所は、次の回で前提を補う候補にもなります。もっとも、そこで分かるのは、用意した活動の範囲で受講者がどう答えたかまで。現場の業務で生きるかどうかは、別に確かめる必要があります。
重要なポイント
アクティブラーニングがうまく回らないとき、原因を進行の工夫に求めたくなります。ただ、活動が学びになるかどうかは、受講者がその判断に答えられるだけの前提を持っているかにも左右されるのです。手段を増やす前に、いま用意している活動の難度が、受講者の現在地と合っているか。そこを見ておきたいところです。
作り分けを一度だけ実現しても、改定のたびに一律版へ戻るのであれば、同じ問題がまた繰り返されます。前提に合わせた段階を用意できるか、そしてその手直しを毎年続けられるか。この二つがそろう範囲で設計しておくと、アクティブラーニングは単発の企画で終わらず、翌年も同じ形で回しやすくなります。