アクティブラーニング型の効果は、活動の種類だけでは決まらない
新入社員研修では、講師が説明し受講者が聞くだけの一方向型の講義が中心になりがちです。ただ、アクティブラーニング型を取り入れさえすれば、参加者全員が内容を十分に身につけられるとは限らないのです。
アクティブラーニング型とは何か
能動的な処理を指す分類
アクティブラーニング型とは、講師の説明を受講者が聞くだけで終わる一方向型の研修に対して、受講者自身が発言、実演、成果物の作成などを通じて学習内容を能動的に処理する研修設計を指す分類です。討議やケーススタディ、ロールプレイといった手法は、いずれもこの分類に含まれる具体的な活動の一例にあたります。動画や資料の閲覧であっても、視聴後に自分の言葉で説明させるなど、能動的な処理を求める設計が加われば、この分類に含まれると言えます。
分類が保証しない効果
ただし、討議やロールプレイのような活動に分類されること自体は、学習効果を保証するものではありません。同じ活動形式でも、参加者が実際に内容を能動的に処理できたかどうかは、活動の設計条件によって差が出るのです。つまり、アクティブラーニング型という言葉は活動の形式を示す分類名であり、効果の有無を判定する基準そのものではありません。
同じ活動でも定着に差が出る理由
前提知識との適合度
同じ討議やロールプレイであっても、課題の難易度が受講者の前提知識と噛み合っていなければ、能動的な処理は起こりにくくなります。すでに実務経験がある中堅社員にとって易しすぎる課題は発言が形だけになりがちで、逆に前提知識のない新入社員にとって難しすぎる課題は、発言や実演そのものが成立しにくくなると言えます。
フィードバックの有無
また、発言や実演といった能動的な処理をしたとしても、その内容が正しいかどうかを確認する機会がなければ、誤った理解がそのまま定着してしまう場合があります。能動的に取り組んだという体験と、正しく理解できたという結果は、必ずしも一致しないのです。能動的な処理と、その後のフィードバックは、それぞれ独立した要素ではなく、組み合わさって初めて理解を深める関係にあります。
業務シーンを1つ選ぶと、AIが顧客役を務めてあなたと1回の会話を行います。終了後、評価フィードバックを確認できます。
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設計とフィードバックが追いつかない現場
新人と中堅が混在する教室
新入社員向けの研修では、社会人経験のない新卒と、他社での実務経験を持つ中途採用者が同じ討議課題に参加する場面が珍しくありません。前提知識の異なる受講者ごとに課題の難易度を調整しようとすると、活動案を複数用意する分だけ準備の工数がかさむのです。
手が回らないフィードバック
討議やロールプレイの後に、発言内容や実演の適否を一つずつ確認してフィードバックを返せるかどうかは、講師の人数に左右されます。少人数の講師で大人数を担当する研修では、全員に目を配りきれず、確認が一部の受講者にとどまることがあります。この積み残しが、次の研修回まで持ち越されることも少なくないと言えます。
前提知識別の対応負担が、AIで軽くなる方へ
難易度分けの初期負担
AIは、同じ教材や資料をもとに、前提知識の異なる受講者向けに難易度の異なる課題や説明文の初期案を用意する作業を助けます。研修担当者は、ゼロから複数バージョンの課題を書き起こす手間を抑えながら、新人向けと中堅向けの活動を分けて用意しやすくなります。ただし、案として使えるかどうかの判断は、引き続き担当者が行うのです。
つまずいた時の支援
受講者が課題の途中で行き詰まった際に使う、ヒントや補足説明の初期案を、AIによって用意しやすくなります。研修担当者がすべての場面をあらかじめ想定して書き出す負担が軽くなり、想定していなかったつまずきに気づいた場合にも、その都度、補足説明の案をすぐ用意しやすくなります。最終的な内容の確認と調整は、引き続き担当者の役割であると言えます。
個別最適な学習支援が、日常の運用へ
レベル別の教材が定番に
前提知識別に難易度を分けた課題を用意することが、特別な準備ではなく、通常の研修設計に組み込みやすくなります。新入社員向けの討議課題と、中堅社員向けの討議課題を、同じテーマでも別々に用意する運用が、現実的な選択肢になっていくのです。アクティブラーニング型という分類が意味を持つかどうかは、活動を導入した実績ではなく、こうした運用が根づくかどうかで見えてきます。
つまずきへの即応
受講者にとっても、自分の前提知識に見合った難易度で発言や実演に取り組む機会が増え、極端に易しすぎたり難しすぎたりする活動を避けやすくなります。行き詰まった場面でも、その場でヒントや補足説明を受け取りやすくなり、理解のずれを早い段階で解消しやすくなると言えます。
重要なポイント
アクティブラーニング型という分類は、討議やロールプレイなど活動の形式を示すものであり、それ自体が学習効果を保証するわけではありません。効果を分けるのは、課題の難易度が受講者の前提知識に合っているか、そして能動的な処理の後にフィードバックが用意されているか、という設計条件なのです。
研修の手法を検討する際は、討議やロールプレイといった活動の名称だけで判断するのではなく、前提知識の異なる受講者に合わせて難易度を調整できるか、能動的な処理の後にフィードバックを用意できるか、という運用条件を基準に選ぶことが有効です。そのうえで、実際に運用を続けられる体制があるかどうかも、あわせて確認しておくとよいでしょう。