オンボーディングの対話型学習は、答えの扱いを先に伝えます
新入社員の受け入れ研修で質問を投げかけると、当たり障りのない受け答えが並ぶことがあります。内容が難しかったからとは限りません。入社したばかりの受講者には、そこで出した答えがどう扱われるのかが、まだ見えていないのです。
入社直後に始まる、答えてもらう進め方
答えてもらいながら進める形
オンボーディングでの対話型学習は、説明を聞くだけで終わらせず、受講者に質問し、自分の言葉で答えてもらいながら進める形を指します。配属前の受け入れ研修に組み込まれることが多く、扱う内容は、社内の手続き、製品の基礎、業務の進め方が中心。答え方も一通りではなく、口に出して説明してもらうこともあれば、二人組で話してもらうことも、書いて出してもらうこともあります。共通しているのは、聞いた内容を受講者自身の言葉で言い直してもらう場面を、進行の中に置いている点です。
答える側は、入社したばかりの人
同じ進め方でも、オンボーディングでは答える側の条件が違います。入社して数日から数週間の受講者は、社内でどの言葉がどう受け取られるか、誰がどこまで見ているかをまだ知りません。答える相手も、その日はじめて会った講師や同期。答えるという行為そのものが、内容を答える以上の意味を持つ場面になっているのです。
当たり障りのない答えが並ぶ理由
間違えたときにどう扱われるか
入社して間もない受講者は、ここで間違えた答えを出したときに、自分がどう扱われるかを知りません。あとで配属先に伝わるのか、その日限りで終わるのか、判断する材料を持っていないのです。判断する材料がないとき、選びやすいのは安全側の答えです。教科書どおりの言い方、誰も反対しない一般論。当たり障りのない受け答えが並ぶ背景には、内容の難しさとは別の事情があります。
口頭のひと言では足りない部分
最初に伝えておきたいのは、この場で出した答えがどう扱われるかという取り決めです。ただ、口頭で「気楽に答えてください」と添えるだけの案内は、その場の空気に上書きされてしまいます。取り決めは、進め方そのものに組み込んでおく必要があると言えます。ここを置いたまま質問の数だけを増やしても、対話の量は増え、中身は変わりにくいままです。
業務シーンを1つ選ぶと、AIが顧客役を務めてあなたと1回の会話を行います。終了後、評価フィードバックを確認できます。
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本編の準備だけで埋まる、開催までの時間
本編とは別に用意する最初の回
取り決めを進め方に組み込むとなると、その回は本編の内容とは別に用意することになります。どこまでを先に伝えるか、どんな順で進めるか。講師が自分で決める部分が多く残ります。扱いをどう伝えるかは職場ごとに違い、他社の例をそのまま持ってくるわけにもいきません。
兼任のまま開催日が来ます
一方で、企業内で受け入れ研修を担当する講師の多くは、本業と兼任しています。製品資料や手順書を読み直し、本編の教材を仕上げるだけで開催日が来ます。最初の回は本編を少し前倒しして済ませる形に落ち着きやすく、扱いの取り決めは口頭のひと言に戻ってしまうのです。
本編の下書きを、AIに任せる形へ
手元の資料から組み立てる部分
AIが軽くするのは、手元の資料から本編の教材を組み立てるところです。製品資料、社内手続きの文書、前年に配った教材。すでにある文書をもとに、構成の整理から初稿の下書きまでを進められるため、講師が一から書き起こす時間は短くなります。ただし、下書きの内容が自社のやり方に合っているかを講師が読み、手を入れる作業は残るのです。出てきたものを、そのまま当日に持ち込めるわけではありません。
空いた分を、最初の回に回せます
本編にかけていた時間が少し戻ると、最初の回を別に用意するだけの余地が生まれます。何をどこまで伝えると約束できるか。そこを正確につかんでいるのは、その職場を見てきた講師です。守れない約束を並べても、受講者の側は早い段階で気づきます。どの取り決めなら実際に守れるのかを選ぶ作業は、人の側に残ると言えます。
扱いを先に決めた、最初の一回へ
先に伝えておける三つのこと
先に決めておけることは、たとえば三つあります。一つ目は、最初の回で出た答えを、あとから読み返す資料には入れないと伝えておくこと。二つ目は、講師の側が先に、自分が新人だったころに取り違えた場面を話しておくこと。三つ目は、一人ずつ順番に答えてもらう形をやめ、書いたものを持ち寄る形にすることです。どれも、扱いを先に決めているという点で共通しています。
慎重な答えのままでも構いません
当たり障りのない答えが出ること自体は、困ったことではありません。入社直後に慎重になるのは自然な反応で、急いで踏み込ませる必要もないのです。扱いを先に決めておく狙いは、どこまで話すかを受講者本人が選べる状態にしておくところにあります。
重要なポイント
オンボーディングの対話型学習で先に効いてくるのは、質問の作り込みよりも、出した答えの扱いが受講者に見えているかどうかです。入社直後は判断する材料が少なく、安全側の答えが選ばれやすくなるのです。取り決めを進め方に組み込んでおくと、どこまで話すかという選択が、受講者の側に戻ります。
最初の回を終えたあとに、確かめておきたい一点があります。出てきた答えが、当たり障りのないものばかりになっていないか。似た言い回しが続いているなら、内容が難しかったからではなく、扱いが伝わっていない可能性があります。次の回で何をどこまで先に伝えておくか、そこを見直すときの材料になります。