自己調整学習フィードバックは、理解のずれに返す材料
新人研修でも管理職研修でも、受講者が自分で計画を立て、学習後に振り返る工程は設計に組み込まれています。ただ、本人の見立てが実際の理解とずれていれば、その振り返りは空回りしやすいのです。
自己調整学習で、フィードバックが担う役割
計画、実行、振り返りの循環
自己調整学習とは、受講者が学ぶ順序と時間を自分で決め、学習しながら理解の状態を確かめ、終わったあとに次の進め方を決め直すという循環を指します。eラーニングの受講計画を本人に委ねる運用は、この形に近い例です。フィードバックは、この循環の外側に置く講評ではなく、循環の途中で本人が判断に使う材料と言えます。返す内容が本人の判断に使える形になっているかどうかで、次の一手は変わってきます。
見立てのずれに、学習の途中で返します
返す対象は、設問への答えが合っていたかどうかにとどまりません。本人が説明できると考えていた箇所と、実際に説明してみた結果との差。つまり、理解の見立てのずれです。営業の新人研修であれば、価格表の項目は読み上げられても、値引きを認める条件までは言葉にできないという差が出るのです。返す時点も同じく重要で、学習の途中であれば、受講者はその場で理解を組み立て直せます。
なぜ振り返りが次につながらないのか
読んだ直後に生まれる自信
資料を読み終えた直後は、内容が頭に入ったという感覚が残ります。説明の整った教材であればなおさらで、読みやすさを理解の深さと結びつけて考えがちです。ところが数日後に同じ内容を自分の言葉で説明しようとすると、順序が思い出せない箇所が出てくるのです。教材の分量をこなした感覚と、自分の言葉で説明できる状態は、切り分けて考える必要があります。本人の見立ては、学習の直後にもっとも高く出やすくなります。
一般的な講評では動けません
どの学習ポイントで、どの条件を取り違えているのか。そこが示されないまま「復習をしておきましょう」と返ってきても、受講者は次に何をすればよいのか分かりません。取り違えている条件まで分かって初めて、受講者は「この二つをもう一度比べる」という次の一歩を選べます。自分で学習を組み立て直すには、返す対象がここまで細かく分かれている必要があると言えます。
業務シーンを1つ選ぶと、AIが顧客役を務めてあなたと1回の会話を行います。終了後、評価フィードバックを確認できます。
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答える場面を置く余力の限界
設計から講義までを兼任します
学習の途中に自分の言葉で答える場面を置くには、どの学習ポイントで何を答えさせるかを一つずつ決める作業が必要です。ただ、企業内の研修講師は、ニーズの確認からコース設計、講義、受講後のフォローまでを兼任していることが多く、この作業にまとまった時間を確保できないのです。
点検の場は、講義の中だけ
受講者が自分の理解を試せる場は、講義中の演習や質疑に限られがちです。参加人数が増えるほど、一人ずつの見立てまで確かめる時間は取れず、返す時点は修了後にずれ込みます。修了後の講評は年間計画の報告材料にはなりますが、受講者が自分で直せる余地は小さくなっていくと言えます。
アウトプットの機会を、学習の途中へ
設問づくりの工数が下がります
AIが、資料の整理や設問の下書きといった準備の部分を引き受けると、研修講師は同じ工数のままでも、自分の言葉で答える場面や、条件を比べて選ぶ場面をコースの流れに組み込みやすくなります。どの学習ポイントに置くか、下書きの内容が業務の実態に合っているかを判断する作業は、引き続き人の手に残ると言えます。
講評を待たずに直せる場面
答える場面がコースの流れに入っていれば、受講者は自分の見立てをその場で試せます。説明に詰まった箇所が、そのまま次に確かめる箇所になります。研修講師が一人ずつに講評を書き足さなくても、受講者は学習の途中で自分のずれに気づけるようになるのです。ただし、何をどの順で問い直すか、その中身を決めるのは設計する側の仕事です。
修了後の講評から、途中の自己点検へ
返す時点が、学習の途中に移ります
自己調整学習フィードバックは、修了後にまとめて渡す講評から、学習の途中で本人が使う材料へと位置が変わります。受講者が次の章に進む前に、自分の見立てを直せるようになるのです。研修講師の側も、つまずきの集まる学習ポイントに補足を用意するのか、取り違えの目立つ一部にだけ返すのかを選べるようになります。
同じ材料が、設計の見直しにも
受講者に返した材料は、コースを組み直すときにも使えます。多くの受講者が同じ条件を取り違えているのであれば、説明の順序と扱う分量の両方に見直す余地があると言えます。もっとも、そこから言えるのは用意した設問に対する応答の傾向までです。現場での実践や業績の変化までを裏づけるものではありません。
重要なポイント
自己調整学習は、計画と振り返りを受講者に任せる仕組みだと読まれやすい面があります。ただ、本人が自分の理解を高く見積もったままでは、任せた分だけ判断の材料が足りなくなります。外から返る情報が、その見積もりを確かめる基準になるのです。任せる範囲を広げる前に、確かめる基準の側を用意しておきたいところです。
自社の進め方を見直すとき、はじめに確かめたいのは返す時点。受講者が次の学習に移る前に返っていれば、本人はその場で見立てを直せます。修了後の講評は記録としては残りますが、本人が直せる余地は小さいと言えます。同じ内容でも、返す時点を前に動かすだけで、その使いみちは変わります。