学習フィードバックは、受講者の言葉が出てから始まります
研修が終わるたびに講評を返し、受講後のアンケートを集めている研修部門は少なくありません。ただ、学習フィードバックとして返せる言葉は、受講者が学習の中で自分の考えを外に出したものの範囲にとどまります。
学習フィードバックは、何を誰に返す情報か
返す先は、受講者の理解の状態
学習フィードバックとは、正解をもう一度説明し直すことではありません。受講者がいま何をどこまで理解できているか、その状態に向けて返す情報です。新入社員向けの製品知識研修であれば、仕様を覚えているかどうかよりも、二つの型のどちらを勧めるかを理由つきで説明できるかどうか。そこに理解の状態が表れます。相手の状態が見えないうちは、返す内容も一般的な助言にとどまるのです。
受講者と、設計する側の両方へ
返る先は一つではありません。一つは受講者に返る流れで、自分の理解のどこを直せばよいかを知る材料になります。もう一つは、コースを設計する側に返る流れです。どの説明で受講者が止まりやすいかが分かれば、次の改訂で手を入れる箇所を絞り込めます。受講者に伝えて終わりと捉えると、この二つ目の流れは見落とされがちです。同じ回答から二種類の材料を取り出せる点が、研修部門にとっての利点だと言えます。
一般論で終わるか、具体的な指摘になるかの分かれ目
返せる範囲は、出したものまで
受講者に返せる内容は、その人が学習の中で外に出したものの範囲を超えません。動画を見て資料を読むだけの学習では、手元に残るのは再生の履歴と受講の記録です。材料がないまま講評を書こうとすれば、言葉は理解を深めましょうという一般的な助言に近づきます。受け取った側は、次に何を確かめればよいのか分からないまま終わってしまうのです。
理解のずれは、選んだ理由に表れます
受講者が自分の言葉で手順を説明したり、二つの条件を比べてどちらを選ぶかを書いたりすれば、取り違えている箇所はその場で表に出ます。答えが合っているかどうかよりも、なぜその答えを選んだのかという理由のほうに、理解のずれが表れるからです。そこまで見えて初めて、返す言葉は、どの前提を取り違えているのかを名指しできる具体的な指摘に変わります。
業務シーンを1つ選ぶと、AIが顧客役を務めてあなたと1回の会話を行います。終了後、評価フィードバックを確認できます。
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なぜ、返すところまで手が回らないのか
答える場面を組み込む作業の重さ
受講者が考えを出す機会をコースに組み込むには、状況の設定、設問、想定される答えの整理までを用意する必要があります。年間の研修計画には階層別研修も職種別研修も並び、担当は数名という研修部門も珍しくありません。動画と資料を配信するところまでは進んでも、答える場面を全コースに用意し続ける作業は、後回しになりやすいのです。
一人ずつ確かめる時間が足りません
出てきた回答を一人ずつ読み、どこで取り違えたのかを確かめて返す作業も、受講者が数百人規模になると同じ形では続きません。研修が終わってから満足度アンケートと修了率を集計する形に落ち着き、手元に残るのは、参加したかどうかまでの記録になります。
準備の負担が下がり、答える場面を挟む設計へ
設問を用意するまでの時間
状況の設定や設問の作成にAIを使えば、研修チームは同じ人数のままでも、コースの途中に受講者が答える機会を挟みやすくなります。これまで一部のコースにしか用意できなかった機会を、対象を広げて置きやすくなるのです。ここで変わるのは、時間のかけどころです。どの場面を入れるか、内容が自社の実態と合っているかを判断し、必要なら書き直す工程は、引き続き人の手に残ります。
回答を並べ直す手間が軽くなります
集まった回答を学習ポイントごとに並べ直す作業も、人手だけでは負担の大きい部分です。整理にかかる手間が軽くなれば、担当者は、どの説明で受講者が止まりやすいかを確かめやすくなります。ただし、そこから読み取れるのは、用意した設問や条件のもとでの学習の状況までです。
事後のまとめから、途中の立て直しへ
受講者は、修了を待たずに直せます
答える機会が学習の流れに入っていれば、理解のずれは修了を待たずに表に出ます。受講者は、いま扱っている内容と返ってきた指摘を結びつけながら、その場で考え直せます。修了から時間が空いたあとに講評だけを受け取る形と比べると、自分で直せる余地は残りやすいと言えます。
次の改訂で手を入れる箇所の絞り込み
研修部門には、どの学習ポイントで理解が止まりやすいかという材料が残ります。次の改訂では、説明を足す箇所や、順序を入れ替える箇所を絞り込めます。ただし、そこから分かるのは、用意した活動のもとでの回答の傾向までです。現場で正しく応用できることや、業務の成果が上がったことを示すものではありません。
重要なポイント
学習フィードバックを見直すとき、多くはまず講評の書き方に手をつけます。ただ、受講者に返せる内容は、その人が学習の中で外に出したものの範囲にとどまります。自分の言葉で説明する機会、条件を比べて選ぶ機会、理由を書く機会。こうした機会が学習の流れに入っていなければ、表現をどれだけ整えても、受け取った側にできることは増えないのです。
自社の進め方を確かめる手がかりは、コース1本の中に受講者が答える機会がいくつあるかを数えてみることです。ほとんどなければ、講評の書き方を練り直す前に、そちらから手をつける番になります。そのうえで、返ってくる情報が学習ポイント単位まで分かれているかを見ていくと、次に直す箇所がはっきりします。