行動変容研修が担えるのは、行動の前提づくりまで
行動変容研修を実施し、受講後のアンケートでは高い評価を得ながら、数カ月後の業務の進め方は以前と変わらないという結果になりがちです。ただ、行動が変わるかどうかは、研修の外側の条件にも左右されるのです。
行動変容研修が置く到達点は、業務での判断
到達点を、知識から行動へ
行動変容研修とは、知識を伝え終えることを到達点とせず、受講者が業務の場面で判断し、実行できる状態に近づけることを目標に置く研修です。取り入れられる進め方には、事前の課題整理、実際の業務に近いケースでの判断の練習、実施後の一定期間のフォローなどがあります。扱う題材が同じでも、到達点をどこに置くかで、研修の組み方は変わってきます。形式の名称はさまざまですが、業務の中で起きる具体的な場面を扱う点は共通していると言えます。
行動の順序まで書き出します
設計の起点になるのは、その到達点をどこまで具体的に書き出せるかという点です。「傾聴力を高める」「主体性を持つ」といった状態の記述でとどめると、扱う内容も、確かめ方も決めにくくなります。顧客との面談で、要望を聞いた後にどの条件を確認するか。部下との面談で、どの情報を先に共有するか。業務の場面と、そこでとる行動の順序まで下ろして書き出しておくと、研修で扱う範囲が決まります。
到達点との差が表れるのは、受講者の答え
理解と判断は、別の状態です
説明を聞いて理解できたかどうかと、業務の場面で判断を示せるかどうかは、別の状態です。受講者に必要なのは、自分の言葉で説明すること、条件を比べて選ぶこと、選んだ理由を述べることです。こうした場面を通った後のほうが、必要になったときに内容を引き出しやすくなります。説明を聞く時間が続くだけでは、内容を覚えていても、業務で使おうとする手前で止まりやすいのです。
確かめる材料は、答えの中身
そのため、到達点との差を確かめる材料も変わります。受講後のアンケートで高い評価が並んでも、それは受講者が研修をどう感じたかを示す情報です。修了率や受講時間も、参加の記録にとどまります。同じ研修を受けても、示せる判断は受講者ごとに違います。確かめるには、受講者が実際に示した判断の中身を残しておく必要があると言えます。
業務シーンを1つ選ぶと、AIが顧客役を務めてあなたと1回の会話を行います。終了後、評価フィードバックを確認できます。
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場面づくりと更新を抱える、兼任の担当者
答えに応答する時間が足りません
業務に近い場面で判断を示してもらい、その答えに応答するには、一人あたりの時間が必要です。企業では、コース設計、講義、実施後のフォローまでを一人の担当者が受け持つことも少なくありません。受講者数が増えるほど、答えを聞いて補足を返せる相手は一部に偏っていきます。
更新のたびに増える組み直し
扱う場面は、製品や制度、業務の手順が変わるたびに見直しの対象になります。部署や役割ごとに条件が違えば、その分だけ組み直す作業が増えます。日々の業務と並行してこの作業を続けにくいため、一度作った内容をそのまま使い続ける選択になりがちなのです。
判断を示す場面を、続けやすい条件へ
場面の下書きは、AIが用意します
業務に近い場面を洗い出し、判断を求める設問やケースの初稿を用意する作業は、AIが引き受けられる部分が増えました。講師が一つずつ書き起こさなくても、扱う場面の候補と、受講者に答えてもらう内容の下書きがそろいます。空いた時間は、その場面が実務に合っているか、判断の基準が自社の運用と一致しているかの確認に充てられるようになるのです。内容を確かめ、公開を認める工程は、これまでと同じように人の側に残ります。
講師の手を離れても続く場面
受講者が答えを示し、そこに応答が返る場面も、講師が一人ずつ相手を務めなくても続けられるようになります。受講者は自分の時間に取り組み、答えた内容は記録に残ります。記録を読み、どこを指導するかを決めるのは、引き続き講師の役割です。
行動変容研修は、当日から前後の期間へ
場面を、当日の前後にも置けます
判断を示す場面を続けやすくなると、行動変容研修の組み方も変わります。これまで当日の時間に集めていた判断の練習を、事前学習や実施後の期間にも分けて置けるようになるのです。当日は、答えが分かれる論点の検討や、受講者同士の意見交換に時間を使いやすくなります。期間を置いてから同じ場面に戻る形も取りやすくなります。
分かるのは、学習の状況まで
受講者が示した判断の内容が残るため、どの場面で理解のずれが起きやすいかを把握しやすくなります。次に扱う内容を決めるときや、現場の上司が声をかけるときの材料にもなります。ただし、そこから分かるのは、用意した場面と設問のもとでの学習の状況に限られます。業務での行動が変わったことを示す記録ではありません。
重要なポイント
行動変容研修で研修の側が担えるのは、受講者が業務の場面で判断し、実行できる状態に近づけるところまでです。実際に行動が変わるかどうかには、現場のマネジメントや業務の進め方、使う道具も関わります。担える範囲を先に見定めておくと、研修で扱う内容と、現場に引き継ぐ内容を分けて考えられます。
進め方を見直すときの基準の一つは、受講者が判断を示す場面を、次の年度も同じ形で用意できるかという点です。一度の企画としては形を整えられても、業務や制度が変わるたびの手直しが続かなければ、説明を配るだけの形に戻りやすくなります。無理なく更新を続けられる範囲で組んでおくと、行動変容研修は運用として定着しやすくなるのです。