インストラクションデザインとは、確かめ方まで決める設計
インストラクションデザインの解説は、決まった工程を順に追う形が中心です。ただ、新人研修を終えた社員が何をできるようになったのかを確かめる方法は、工程の最後ではなく、目標を決める段階で方向が定まります。
設計の起点は、学習後にできること
一体で組み立てる四つの要素
インストラクションデザインとは、教える内容を並べる作業ではありません。学習を終えた人が何をできるようになるかを先に決め、扱う内容と順序、学習中に取り組む活動、習得を確かめる方法までを、ひとつながりに組み立てる考え方です。インストラクショナルデザインとも呼ばれ、ADDIEのように、分析、設計、開発、実施、評価という工程で整理した枠組みも知られています。ただし工程が示すのは進め方の骨格までで、四つをどう対応させるかは、使う人に委ねられているのです。
先に決めるのは、学ぶ側の目標
起点に置くのは、教える側が伝えたい情報ではなく、学ぶ側が業務で何をできるようになるかという目標です。目標が定まれば、扱う内容の範囲も、説明を始める位置も、そこから逆算して判断できます。研修の企画書に「製品知識の理解」とだけ書かれている状態では、講義の中身は決められても、受講者がどこまで到達すればよいかまでは決められません。順序が逆になると、資料は充実しているのに、受講後に何ができるようになったのかを説明しにくくなります。
目標の書き方で変わる、確かめ方の幅
測れる言葉で書かれているか
目標を「製品知識を理解する」と書いた場合、理解したかどうかを外から見分ける手立ては残りません。確かめられるのは、受講したかどうかと、受講者本人が難しいと感じたかどうかまでです。一方、「主要な3製品の違いを、顧客に説明できる」と書けば、説明してもらう場面を用意しなければ確かめられないことがはっきりします。目標をどう書くかによって、選べる確認の方法も変わってくるのです。
三つがずれると、残るのは満足度
目標、学習活動、確認方法の三つは、互いに対応していて初めて設計として働きます。目標には説明できることを掲げながら、学習は動画の視聴だけ、確認は最後のアンケートだけという組み合わせでは、手元に集まる情報は満足度の評価にとどまります。満足度の高さと、必要な場面で知識を引き出せることは、別の事柄です。三つのつながりが切れている限り、講師は次にどこを直せばよいかを判断する材料を持てません。
業務シーンを1つ選ぶと、AIが顧客役を務めてあなたと1回の会話を行います。終了後、評価フィードバックを確認できます。
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後回しになりやすい、確認の設計
実施を成立させることが最優先
企業では、コース設計から講義、実施後のフォローまでを一人の担当者が受け持つことも少なくありません。限られた時間でまず優先されるのは、当日の研修を滞りなく実施することです。扱う内容と順序は手元の製品資料の並びをそのまま移し、確認は最後の理解度テストと満足度アンケートに寄っていきます。
改定のたびに、確認は積み残ります
制度や製品、業務の手順が変われば、教材を差し替えるだけでは足りません。習得を確かめる設問や場面も、変更に合わせて作り直すことになります。年に何度も改定がある領域ほど、講師はこの作業を積み残していきます。手を入れられないまま時間が経つと、確認は一律のテストに戻っていくのです。
答える機会を、用意し続けられる形へ
素材を整える作業をAIが担います
既存のマニュアルや製品資料から、答えてもらう設問や、判断を求める場面を組み立てるには、内容の整理と下書きに時間がかかります。この部分をAIが担うと、講師が一から書き起こす必要は薄れます。空いた時間を、設問が業務の実態と合っているか、受講者の前提知識に対して難しすぎないかという確認に充てられるようになるのです。内容を確かめて公開を認める工程は、これまでどおり講師の側に残ります。
変わった分だけ手を入れる更新
更新のときも、教材と確認の場面をまとめて作り直す前提ではなくなります。制度や製品の変更に関係する箇所を探し、その部分だけ手を入れる進め方を取りやすくなります。探して直す手間そのものがなくなるわけではありません。それでも、一から組み立て直す場合に比べれば、着手までの負担は軽くなると言えます。
確認は、研修の最後から学習の途中へ
途中で見つかる、理解のずれ
学習の流れのなかに答える機会を組み込むと、受講者は説明を読むだけで終わらず、自分の言葉で言い直したり、条件を比べて選んだりしながら進みます。講師が理解のずれに気づく場所も、研修の最後の一点から学習の途中へと移ります。新人研修であれば、配属前に説明が届いていない箇所を見つけ、そこだけ補う進め方も取りやすくなるのです。
見えるのは、設定した範囲まで
学習の途中に残る記録からは、どの学習ポイントで理解のずれが起きやすいかを把握しやすくなります。ただし、そこから分かるのは、用意した設問と条件のもとでの学習の状況までです。受講者が現場で同じ判断をできるかどうかは、業務の進め方や上司の関わり方にも左右されます。確認の設計が支えるのは、その手前までだと言えます。
重要なポイント
インストラクションデザインは、内容を組み立て、順序を決めたところで完結するものではありません。学習を終えた人が何をできるようになるかと、それをどこで確かめるか。この二つを対にして決めておくことも、設計を成り立たせる条件の一つです。目標だけを掲げて確認の方法を決めずにいると、手元に残るのは受講の記録と満足度の評価に限られます。
研修の組み立てを見直すときは、二つの点を確かめておくと、手をつける場所が定まります。一つは、目標が外から確かめられる言葉で書かれているかという点です。もう一つは、確認の場面を改定のたびに用意し直せるかという点なのです。一度作り切る前提で組むより、続けられる範囲で設計しておくほうが、確認は残りやすくなります。