インストラクショナルデザイン入門編、着手は手元の資料から
インストラクショナルデザインの入門編は、対象の分析から目標の設定、教材づくりへと進む順序で説明されます。ただ、研修講師が引き受ける時点では、実施日と前任者の資料が先に決まっていることも少なくありません。
入門編の並びは、判断の前後関係
対象の分析から効果の確認まで
入門編が扱う範囲は、おおむね四つの工程に整理できます。受講者と業務の状況を調べ、身につけてほしい行動を目標として決め、内容と学習活動を組み立て、最後に効果を確認する流れです。どれも目新しい手法というより、研修を作るときに誰もが通る作業に名前をつけて並べたものです。教材の見た目や話し方の工夫は、この四つが決まった後の話になります。入門編の価値は、その並びを一度言葉にして示してくれる点にあると言えます。
前の工程が、次の判断の材料
並び順そのものにも意味があります。目標が決まっていなければ、教材に何を入れて何を省くかを決められません。効果の確認方法も、目標がなければ形になりません。前の工程で出した答えが、次の工程で判断するときの材料になります。入門編が順を追って説明するのは、この依存関係を伝えるためです。工程の名前を覚えることよりも、どの判断がどの判断に支えられているかを押さえるほうが、後で効いてきます。
並びとは別に決まる、着手の順序
判断の前後と、作業の前後
依存関係が示すのは、どの判断がどの判断を必要とするかであって、どの作業から手をつけるかまでは決めていません。目標が固まる前に教材の素案へ手を入れても、後から目標に照らして直せます。順番を守れていないように見えても、最後に判断の前後がそろっていれば、設計としては成り立ちます。入門編の並びを、着手の手順書として読む必要はありません。
先に手をつけられるのはどこか
手元に資料があるなら、内容の下ごしらえと学習活動の素案づくりは先に進められます。対象の分析と目標の整理は、素案が形になった後でも実施できます。むしろ具体的な素案があるほうが、その内容が受講者の前提知識に合っているかを判断しやすくなるのです。一方で、効果の確認方法だけは、目標が決まるまで形になりません。ここは順序を入れ替えにくい工程です。
業務シーンを1つ選ぶと、AIが顧客役を務めてあなたと1回の会話を行います。終了後、評価フィードバックを確認できます。
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先に決まっている実施日と資料
引き受けた時点で、外枠は固定
新任の管理職向け研修を担当することになった時点で、実施日と対象者の範囲は決まっています。前任者が使っていたスライドも一式そろっています。受講者の状況を調べる前に、外枠のほうが先に埋まっているわけです。分析から順に始めようとすると、すでに決まっているものを一度脇に置くことになり、そこで手が止まりやすいのです。
後から戻るはずが、残ったまま
実施日が近づけば、教材の仕上げと当日の進行の準備が先に立ちます。担当する研修が重なる時期であれば、その傾向はいっそう強まります。後から補うつもりだった対象の分析と目標の整理は、手つかずのまま次の研修へ移ることになりがちです。入門編で最初に説明される工程が、現場では最後まで残る作業になります。
AIが担うのは、下書きまでの整理
資料から素案を起こす時間
手元の資料をもとに、構成の案と説明文の下書きをまとめるところまでは、AIで進めやすくなりました。白紙の状態から形にする時間が短くなる分、教材の仕上げに追われる度合いは下がります。ただし、その内容が自社の運用と合っているか、抜けている前提がないかを確かめるのは講師の仕事で、そこは残るのです。どの説明を残し、どの例に差し替えるかを決めるのも講師です。AIが引き受けるのは、下ごしらえの部分にとどまります。
改定の工数を見通せます
制度や商品が変わったときも、関係する箇所に手を入れる形で更新を進めやすくなります。どこを直すべきかを見極める作業は残りますし、直した内容が現場の運用と食い違っていないかの確認も必要です。それでも、改定にかかる工数を見積もりやすくなる分、二度目以降の設計を計画に組み込みやすくなると言えます。
入門編の工程に、後から戻る進め方
素案を先に置いて、目標を詰める
教材の素案が早い段階で形になれば、対象の分析と目標の整理に充てる時間を作れます。受講者の前提知識に合っているか、目標として掲げた行動が具体的かを、素案を見ながら確かめられます。頭の中だけで対象像を組み立てるより、手元にある案に照らすほうが、判断の材料はそろうと言えます。順序は入れ替わりますが、通る工程は入門編と変わりません。
一度で仕上げず、回を分ける
実施後に気づいた点は、次の改定で反映しやすくなります。一度の設計ですべての工程を通しきる前提を外せば、入門編で説明される工程を、二回、三回に分けて一巡できるのです。一度目で目標の整理まで届かなくても、二度目に補う余地が残ります。何を直すかの判断は、毎回講師に残ります。
重要なポイント
入門編が並べているのは、判断の前後関係です。どの作業から手をつけるかまでを指定しているわけではありません。手元に資料と実施日がある状態から始めても、最後に判断の前後がそろっていれば、設計は成り立ちます。読んだ順序のまま着手できないことは、入門編が役に立たない理由にはならないのです。
進め方を決めるときの目安は、手元にあるものから始められる工程はどれか、後から補える工程はどれか、という二点です。素案づくりは先に進められ、対象の分析と目標の整理は後から接続できます。効果の確認方法だけは、目標が決まってからの作業です。この見当がついていれば、着手の順序は状況に合わせて組み替えられます。