インストラクショナルデザインの評価、設計そのものも対象です
期末の報告に向けて、研修の最終日に満足度と理解度のアンケートを配る運用は、多くの企業で定着しています。ただ、そこに集まる結果は、設計のときに置いた判断が当たっていたかどうかまでは映しません。
確かめる対象で分かれる、二つの評価
受講者の習得状況を測る評価
一つは、受講者がどこまでできるようになったかを確かめる評価です。確認テストの正誤、演習での受け答え、研修後のアンケートが材料になります。対象になるのは受講者であり、集めた結果はその人の理解を映すものとして扱います。受講者本人への振り返りに戻したうえで、実施回数や修了率とあわせて期末の報告へ上げるのが通例で、研修マネージャーが経営層や事業部門から求められるのは、たいていこちらの評価です。
設計の判断を見直すための材料
もう一つは、設計のときに置いた判断が当たっていたかを確かめる評価です。この内容をこの順で並べた、この演習をここに入れた、という一つひとつの決定が対象になります。材料になるのは、判断と、その判断に対応する結果の組み合わせです。使い道は、次の回の設計にあります。同じ評価という言葉でも、確かめる相手が受講者から設計そのものへ移ると、必要な材料も結果の使い道も変わるのです。
結果と照らすのは、設計時の判断
判断の理由が残っているか
設計の評価が成り立つのは、置いた判断とその理由が言葉として残っている場合です。導入の説明を厚くしたのは前提知識にばらつきがあると見込んだためであり、演習を後半に寄せたのは説明の直後では手が動きにくいと考えたためです。こうした理由を書き留めてあれば、結果を見たときに何と照らせばよいかが決まります。書き留めていなければ、数字だけが手元に残り、どの決定に戻ればよいかは分かりません。
二つの評価で違う、集める材料
材料の違いも、二つを分けて扱う理由になります。受講者の習得状況を測るなら、必要なのは一人ひとりの回答や受け答えです。設計の判断を確かめるなら、必要なのは決定ごとに対応する結果です。前者は人を単位に集まり、後者は決定を単位に集まります。単位が違う以上、同じ項目でまとめて取ることには無理があると言えます。
業務シーンを1つ選ぶと、AIが顧客役を務めてあなたと1回の会話を行います。終了後、評価フィードバックを確認できます。
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評価項目に手をつけるのは、実施の後
先に固まるのは、日程と教材
新任の管理職向け研修を任された研修マネージャーの手元では、実施日と対象者、前任者が使っていた教材が先に決まっています。設計に充てられる時間は、教材の差し替えと当日の進行の準備で埋まり、判断の理由を書き留める作業は後回しになりがちです。
一枚に兼ねて、残る二つの数字
評価の準備に取りかかるのは、実施が終わってからになります。限られた時間で選ばれるのは、満足度と理解度をまとめて聞く一枚のアンケートです。集まるのは受講者の反応と点数で、どの設計判断が効いてどれが外れたのかは、そこには残りません。次の回に向けて何を変えるかは、担当者の記憶に頼ることになります。
評価項目づくりを、設計と同じ時点へ
素案づくりに要る時間
変えられる余地があるのは、項目を書き起こすまでの工程です。研修の目的を書いたメモ、構成の下書き、教材そのもの。手元にある資料を起点に、受講者の習得状況を確かめる項目と、設計判断を確かめる項目を作り分けるところまでは、AIで進めやすくなりました。白紙から書き始める時間が縮む分、設計している最中でも着手できます。
決めるのは、確かめる対象
もっとも、どの判断を確かめるかを決めるのは、引き続き研修マネージャーの仕事です。出てきた案のうち、自分が置いた決定に対応するものはどれか、外してよいものはどれかを選ぶ手間は残ります。制度や商品が変わったときに項目へ手を入れる作業も同じです。負担がなくなるわけではなく、着手できる時期が前に動くのです。
判断と確かめ方が、対で残る形へ
改定の場で、比べられるもの
次の回の設計に入るとき、前回どの判断をどんな理由で置いたか、その判断に対応する結果はどうだったかを並べて見られます。順序を入れ替えるか、演習を差し替えるか。話し合いの出発点が、印象から記録へ移ります。そのためには、前回の判断を後からたどれる状態にしておく必要があります。ただし、結果が伸びない理由が設計だけにあるとは限りません。
報告と見直しで、材料を分ける
期末の報告に出す材料と、次の設計に使う材料を、別々に用意しやすくなります。受講者の習得状況は習得状況として、設計判断の検証は検証として整理できるため、一枚の様式に押し込む理由が薄くなります。学習の記録から分かるのは、用意した項目と条件のもとでの結果までです。
重要なポイント
インストラクショナルデザインの評価という一語には、受講者の習得状況を確かめる作業と、置いた設計判断を確かめる作業が同居しています。二つは対象も、集める材料も、結果の使い道も異なるのです。どちらも評価と呼ぶために、同じ様式で両方を取れるように見えてしまいます。分けずに一枚で兼ねると、どちらにも届かない結果だけが手元に残ります。
手元の研修を見直すときは、評価項目をいつ決めているかを確かめます。設計のときに置いた判断と対になっていれば、結果を判断に照らし直せます。実施が終わってから考え始めた項目では、受講者の反応は集まっても、どの決定に戻ればよいかまでは見えてきません。項目を決める時期の違いが、そのまま使える材料の違いになります。