フィードバックは、もう一度試す機会があって学習になります
研修では、演習のあとに講師が講評を返し、受講者はそれを読んで一日を終えます。フィードバックの質を上げようという議論も、返し方をどう工夫するかに集まりがちです。ただ、受け取った内容を使う機会は、その先にあるのです。
フィードバックが学習を助ける条件
違いと、次の一手を返します
学習におけるフィードバックとは、受講者が出したアウトプットに対して、期待される考え方とどこが違っていたか、次はどう直すかを伝える情報です。テストの点数は、何問正解したかを示しますが、どの考え方でつまずいたのかまでは示しません。研修のあとに配る模範解答も、正しい答えは分かるものの、その受講者がどこで判断を誤ったかには触れていません。この二つがそろって、はじめてフィードバックと呼べるのです。
返し方の目安は、早さと具体性の二点
返し方の目安としてよく挙げられるのは、二点です。一つは返すまでの早さ、もう一つは示す内容の具体性です。答えた記憶が残っているうちに返すほど、受講者は自分の考えをたどり直せます。どの箇所がどう違うかまで示すほど、次に何を変えればよいかが分かります。研修設計の議論も、この二点をどう満たすかに向かいがちです。どちらも、講師が手を入れれば整えられる条件だからです。
受け取った時点では、学習はまだ途中
読んだ直後は、分かったつもりのまま
フィードバックを読んだ受講者は、その場では納得します。書かれている理屈は分かりますし、次はこうすればよいという方針も受け取っています。ただ、納得することと、次に同じ状況で違う判断ができることは別です。読み終えた時点で残っているのは、直し方を知っているという状態にすぎません。理解のずれが直ったかどうかは、もう一度同じ論点に取り組んでみるまで、本人にも講師にも見えてこないのです。
次の一手は、使う機会があって生きます
フィードバックに含まれる「次はこうする」という指示は、実行する機会があってはじめて働きます。研修が終わったあとの実務で試すこともできますが、そこには講師の目が届かず、直せたかどうかを一緒に確かめてくれる相手もいないのが実情です。同じ論点に条件を変えてもう一度取り組む機会を研修の中に置けば、直した結果をその場で確かめられます。
業務シーンを1つ選ぶと、AIが顧客役を務めてあなたと1回の会話を行います。終了後、評価フィードバックを確認できます。
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二度目の演習が組みにくい理由
同じ論点で、もう一組つくる工数
二度目を置くには、一度目とは条件を変えた課題をもう一組用意することになります。同じ問題をそのまま出せば、答えを覚えているかどうかを見るだけです。資料を読み直し、想定する状況を組み替え、判断の分かれ目を置き直す作業が、論点の数だけ発生します。
一日の集合研修に入りきりません
研修マネージャーが企画から登壇、受講後のフォローまで兼任している職場では、教材づくりに割ける時間が限られます。一日の集合研修では、説明と一度目の演習で予定の時間を使い切ることも珍しくありません。二度目は宿題や現場任せに回りがちで、直せたかどうかは講師に返ってこないのです。
一度きりの演習から、直して試す形へ
二組目を、案から組み立てられます
資料を読み解いて論点を取り出し、条件を変えた課題の初稿を用意するところまでは、AIが引き受けられる範囲に入ってきました。講師は白紙から二組目を組み立てるのではなく、示された案を自社の業務に照らして直すところから始められます。同じ論点でも、想定する状況を入れ替えた案を並べて比べられます。作成の工数が下がると、二度目を前提にしたコースの組み方を選びやすくなるのです。
講師が担い続ける判断
ただし、その条件が実務に即しているか、どこまで直せたら次へ進めてよいかを決めるのは、引き続き講師の仕事です。AIが変えるのは時間と労力のかけ方であって、専門的な判断の責任ではありません。二度目を置く分だけ、確認する対象はむしろ増えると言えます。
返して終わりから、直して確かめるまでへ
条件を変えて、同じ論点に二度
一度目の演習で判断を書き、フィードバックを受け取り、条件を変えた二度目に取り組みます。この流れが一日の中に収まると、受講者は直した結果をその日のうちに確かめられます。研修後の実務に預けていた部分が、講師の見える範囲に戻ってくるのです。
講師の時間が、二度目の設計へ
講師が時間をかける先も変わります。返す言葉を一人ひとり考える作業から、二度目に何を出すかを決める作業へと、時間の使い方が移ります。もっとも、そこから分かるのは、設定した課題と条件のもとでの受講者のパフォーマンスまでです。同じ判断が実務でもできるかどうかは、業務の中で別に確かめることになります。
重要なポイント
フィードバックを見直すとき、多くの場合は返すまでの早さや、どこまで具体的に書くかという返し方から手をつけます。ただ、受講者がその内容を使うのは、次に同じ論点へ取り組むときです。取り組む機会が用意されていなければ、返し方をどれだけ整えても、学習としては途中で止まると言えます。
研修の進め方を確かめるときは、コースの中に二度目の機会がいくつ置かれているかが手がかりになります。説明と一度目の演習だけで組まれているなら、フィードバックの文面を整えるより先に、その置き場所を決めることになります。返し方の工夫が生きてくるのは、そのあとなのです。