インストラクショナルデザインによる授業設計で決まる時間配分
インストラクショナルデザインによる授業設計の解説では、導入、展開、まとめという1回の授業の型がまず紹介されます。ただ、各パートに何分を割き、その時間に受講者が何をするかまでは、型の側では決まっていないのです。
授業設計とは、授業時間の使い方を決める作業
1回の授業を単位にした設計
インストラクショナルデザインとは、学習を終えた人が何をできるようになるかを先に決め、扱う内容と順序、受講者が取り組む活動、習得の確かめ方までを一続きに組み立てる考え方です。授業設計は、この考え方を年間の研修体系ではなく、90分や2時間といった1回の授業に当てはめる作業。研修体系の側で決まるのは、どの階層にどのコースを置くかまでです。その先の、限られた時間に何を入れて何を外すかは、1回ごとの設計で決めていきます。
型が示すのは順番まで
1回の授業の組み立てには、導入、展開、まとめという型が広く使われています。開発の工程を分析、設計、開発、実施、評価に分けたADDIEのような枠組みも知られています。ただ、どちらも示すのは、進め方の骨格と順番までなのです。各パートに何分を割くか、その時間に受講者が何をするかは、枠組みの外に残ります。型をなぞるだけでは、授業時間の中身までは決まりません。
アウトプットの時間は、どこから作るか
聞く時間だけでは足りません
学習した内容を理解し、必要な場面で引き出せるようにするには、受講者が学習の過程でその内容を自分で処理する必要があります。説明を聞いている間、受講者は受け取る側にとどまります。自分の言葉での手順の説明、二つの進め方の比較、実際の操作の実演。こうした取り組みを進行表の中に置いてはじめて、講師は受講者の理解の状態を確かめられるのです。
内容を絞ってはじめて生まれる時間
1回の授業の長さは、あらかじめ決まっています。90分の枠を広げられない以上、受講者が取り組む時間は、扱う内容を絞ることでしか生まれないのです。手元の製品資料や手順書の分量に合わせて時間を割り振ると、説明で枠が埋まり、演習は最後の数分に押し出されます。何を扱わないかを決める判断が、授業設計にはついてまわります。
業務シーンを1つ選ぶと、AIが顧客役を務めてあなたと1回の会話を行います。終了後、評価フィードバックを確認できます。
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説明に時間が寄っていく二つの事情
一人では抱えきれない、絞る判断
企業内研修では、事業部門から資料や要望を受けて1回の授業を組むことも少なくありません。この内容も加えたいという要望が重なると、扱わないと決める判断を講師一人では下しにくくなるのです。開催できる回数も限られるため、渡された内容を一度に説明する構成になりがちです。
演習の素材は、開催ごとに作り直します
受講者に取り組んでもらう場面を用意するには、ケースの前提や設問を作る時間が必要です。コース設計から講義、実施後のフォローまでを兼任していると、開催のたびに素材を用意し直す余裕は残りません。結果として、前回のスライドをそのまま使い、説明中心の構成に戻っていくと言えます。
1回に詰め込む前提から、段階を追う構成へ
分ける下書きはAIが引き受けます
手元の資料を扱いやすい学習単位に分け、それぞれに説明を添える作業。この下書きの部分をAIが引き受けると、1回の授業にすべてを入れる前提を見直しやすくなります。集まっている時間に何を残し、何を前後の単位に回すか。その組み替えを、限られた準備時間の中でも検討できるようになるのです。どの単位に何を置くかを決めるのは、これまでどおり講師の側です。
取り組む場面を、用意し続ける条件
段階に応じて受講者が取り組む場面を用意する作業も、毎回一から書き起こす前提ではなくなります。開催のたびに素材を作り直す負担は、その分だけ軽くなります。ただし、設問やケースが自社の業務の実態と合っているか、想定する受講者に対して難しすぎないか。それを確かめる工程は残ります。内容を確認して公開を認めるところまで、AIが代わるわけではありません。
説明の時間から、受講者が取り組む時間へ
集まっている時間の使い方が変わります
説明の一部を前後の学習単位に移せると、集まっている時間の使い方が変わります。講師が話し続ける時間は短くなり、その分を、受講者が手を動かして講師がその場で補う時間に回せます。1回の授業で講師が見る対象も、進行の段取りから、受講者のつまずき方へと移っていくのです。
進み方の違いに合わせた配分へ
段階を追う構成なら、補足が必要な受講者と、先の単位に進める受講者が、同じ時間の中で別の内容に取り組めます。一律の時間配分では手が回りにくかった調整だと言えます。ただし、そこから分かるのは、用意した学習単位と設問の範囲での取り組み方までです。受講者が現場で同じ判断をできるかどうかは、業務の進め方や上司の関わり方にも左右されます。
重要なポイント
インストラクショナルデザインによる授業設計で決めているのは、教える項目の一覧ではありません。限られた授業時間の中で、受講者が説明を聞く時間と、自分で手を動かす時間をどう割り振るか。その判断も、受講後に何を説明できるようになるかを左右する要素の一つです。先に配分を決めておくと、扱う内容の取捨も判断しやすくなります。
見直しの糸口は、進行表の側にあります。受講者が手を動かす時間が何分残っているか。その時間を作るために、扱わない内容を誰が決めているか。この二つを確かめると、次の授業で手を入れる場所が絞れます。1回で完成させる前提より、続けられる範囲で組み立てておくほうが、配分は保ちやすくなります。