アクティブラーニングの実践は、渡す材料で変わります
新任管理職向けの研修にケース討議を組み込んでも、出てくるのは各自の経験談にとどまることがあります。ただ、活動の選び方だけの問題とは言えません。討議で処理してもらう材料を、事前にどこまで渡せているかも関わってくるのです。
実践は、材料とアウトプットの場面を組む作業
アウトプットを求める場面
アクティブラーニングの実践とは、受講者が説明を聞くだけでなく、自分の言葉で言い換えたり、条件を比べて選んだり、判断とその理由を示したりする場面を、学習の流れに置くことです。進め方の名称はケース討議、教え合い、疑似的な商談の練習などさまざまですが、受講者にアウトプットを求める点は共通しています。実践に着手するときは、どの内容でアウトプットを求めるのかを決めることが出発点になると言えます。
出す前に、何が渡っているか
もう一つ決めるのは、そのアウトプットに必要な材料です。条件を比べてもらうなら比較の軸となる知識、判断を示してもらうならその基準が、受講者に先に渡っている必要があります。何を渡し、そこから何を出してもらうか。この二つを対にして組む作業が、実践の中身にあたるのです。研修の企画書に討議の時間だけを書き込んでも、材料の側が決まっていなければ、当日の中身は受講者ごとに変わってきます。
受講者の手元に材料がそろっているか
軸がないまま始まる討議
新任管理職の研修で、部下の評価に迷った場面を持ち寄る討議。評価制度の考え方や、評価が分かれやすい条件を先に渡していなければ、受講者が使える材料は自分の記憶だけなのです。その場は活発に見えても、処理しているのは研修で扱う内容ではありません。判断の理由を言葉にできないまま、経験の紹介が並んでいきます。
必要な量は人によって違います
渡す材料の量は、受講者によって変わります。同じ製品知識でも、配属直後の受講者と、扱った経験を重ねた受講者とでは、説明を始める位置が違います。全員に同じ資料を同じ量だけ渡すと、新人には難しすぎ、中堅には物足りない内容になりやすいと言えます。アウトプットを求める場面をそろえても、材料の側がそろっていなければ、受講者が処理する中身までは同じになりません。
業務シーンを1つ選ぶと、AIが顧客役を務めてあなたと1回の会話を行います。終了後、評価フィードバックを確認できます。
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材料の渡し分けが続かない事情
設計から当日までを一人で
企業内では、内容の整理から教材づくり、講義、実施後のフォローまでを一人の講師が受け持つことも少なくありません。限られた時間でまず優先するのは、当日の研修を成立させることです。手元の製品資料をそのまま配り、足りない説明は当日の進行で口頭で補う形。設計に充てられる時間が短いほど、渡す材料は資料の並びに近づいていきます。
改定のたびに戻る一律の配布
制度や製品が変われば、渡す材料も、そこで求めるアウトプットも見直しの対象になります。改定のたびに作り直す前提では、この作業は後回しになりがちです。役割や経験年数ごとに渡す量を変える余地は、さらに残りにくくなるのです。
一律の配布から、段階を踏んだ渡し方へ
下書きから始める材料づくり
一つの資料を処理できる大きさに分け、前提知識に応じて説明やヒントを補う作業には時間がかかります。この整理と初稿づくりをAIが引き受けると、講師が一から書き起こす必要は薄れます。空いた時間は、扱う範囲の判断や、渡す材料と求めるアウトプットが対応しているかの確認に充てられるようになるのです。変わるのは労力のかけどころです。内容を確かめて公開を認める工程は、これまでどおり講師の側に残ります。
渡す量を変える余地
経験年数や役割ごとに渡す量を変えるには、これまで教材を作り直すのに近い手間がかかっていました。整理にかかる負担が軽くなると、同じ内容から、説明を厚めにした版と要点だけの版を用意する進め方も取りやすくなります。ただし、どこで量を変えるかを決め、実務に照らして妥当かを確かめる作業。この判断は、引き続き講師が担います。
実践は、一度の活動から小さな往復へ
小さな単位で組む往復
これまでは、ケース討議のようにまとまった時間を確保できる場に、アウトプットの機会を寄せていました。材料を段階的に渡せるようになると、要点を渡してすぐ短く答えてもらう組み方を、学習の流れの中に何度も置けます。1回で扱う範囲が狭くなるほど、受講者がどこで詰まっているかも講師に見えやすくなるのです。
経験差に合わせた渡し分け
新人には難しすぎ、中堅には物足りないという状態も、全員に同じ量を渡す前提から動かせます。経験の浅い受講者には説明を厚めに、経験のある受講者には要点だけを渡し、そのうえで同じアウトプットを求める組み方も取りやすくなると言えます。ただし、そこから分かるのは、用意した材料と場面のもとでの学習の状況までです。
重要なポイント
アクティブラーニングの実践は、ケース討議やグループワークといった進め方を選んだところで完結するものではありません。その活動で何を処理してもらうか、そのために何を先に渡すか。この対応を決めることも、実践を成り立たせる条件の一つです。材料が渡っていなければ、受講者が処理できるのは自分の経験にとどまります。
進め方を見直すときは、二つの点を確かめておくと、手をつける場所が定まります。一つは、求めるアウトプットに必要な材料が、受講者の前提知識に照らして渡っているかという点です。もう一つは、その渡し分けを改定のたびに続けられるかという点なのです。この二つがそろえば、活動の形式を選ぶ判断にも根拠が置けます。