アンドラゴジーとアクティブラーニングの違いは、考え方と進め方
参加型の研修を取り入れても、新人には課題が難しく、中堅には物足りないという声が残ることがあります。ただ、進め方を組み替える前に、大人の学習をどう捉えるかという考え方の側を確かめておきたいところです。
学び手の前提と、場の進め方
学び手をどう捉えるかという前提
アンドラゴジーは、大人の学習に共通する前提を整理した考え方です。学ぶ理由を先に知りたいと考えること、これまでの仕事の経験を学習の材料として持ち込むこと、いま担当している業務の課題に直結する内容を求めること。こうした前提を出発点に、学習の組み立て方を考えます。扱うのは活動の種類ではなく、受講者をどのような学び手として捉えるかという点です。階層ごとに題材を入れ替えるだけでは、この前提を満たしたことにはならないと言えます。
学習の場で何をさせるかの進め方
一方のアクティブラーニングは、学習の場で受講者に何をさせるかという進め方を指します。グループワーク、教え合い、ロールプレイング、ケーススタディ。手段の名称はさまざまですが、どれも聞くだけで終わらせず、自分の言葉で説明する、条件を比較して選ぶ、実際にやってみせるといったアウトプットを求めます。前提を扱う言葉と、進め方を扱う言葉。答えている問いが違うため、二つを並べて優劣を決める関係にはならないのです。
形式をそろえても、かみ合わない前提
同じ活動でも、手応えは分かれます
同じロールプレイングを同じ条件で実施しても、受講者の受け止め方は分かれます。経験の浅い新人には判断を求める課題が難しく、経験を積んだ中堅には基本の確認が物足りなく映ります。この差が生まれるのは、アンドラゴジーが前提に置く、持ち込む経験の量が一人ひとり違うからなのです。活動の形式をそろえるほど、かみ合わない層が出てきます。
題材が業務に接しているか
もう一つの前提は、学ぶ理由が今の業務と結びついているかどうかです。活動を双方向にしても、それだけで学ぶ理由が生まれるわけではありません。扱う題材が担当業務から離れていれば、受講者が学ぶ理由を実感するところまでは至りにくいと言えます。反対に、今週の商談で迫られている判断を題材にすれば、受講者はそれを自分の課題として扱います。前提を満たす条件は、形式よりも題材の選び方に表れます。
業務シーンを1つ選ぶと、AIが顧客役を務めてあなたと1回の会話を行います。終了後、評価フィードバックを確認できます。
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作り分けに手が回らない二つの事情
作り分けるほどの時間がありません
経験や役割ごとに題材と課題の水準を作り分けようとすると、その分だけ準備の工数が増えます。事業部門で先に立つのは、日々の売上と案件の進行。教材を組み替える時間を業務の中に確保しにくい立場にあり、結果として、全員に同じ内容を配る形に落ち着きます。
余力があるのは、ごく一部の人
題材を今の業務につなげられるのは、その業務を日々担当している中核のメンバーです。ただ、その人たちが抱えているのは自身の数字と顧客。まとまった時間を教材づくりに割きにくい立場にあり、担当する拠点やチームが増えるほど、作り分けの余地は狭まっていきます。
一律の内容から、段階を踏む道筋へ
下ごしらえをAIが引き受けます
資料を扱いやすい単位に分ける、前提知識の差に応じた説明やヒントの初稿を用意する、段階を追って課題の水準を上げる作業。こうした下ごしらえにかかる工数をAIが引き受けると、同じ題材から、経験の浅い層向けの補足と、経験のある層向けの応用課題を用意しやすくなります。前提知識の違いを織り込んだ学習の道筋を、担当者が一から書き起こす必要はなくなります。
重心は、確かめる側へ
作る側にかかっていた時間が空く分、業務を知るメンバーは確かめる側へ重心を移せます。題材が今の業務に合っているか、想定した局面が実務に即しているか。そこに時間を充てられるようになります。判断そのものは引き続き人が担い、確認と調整の工数が消えるわけではありません。変わるのは、時間をどこにかけるかという点なのです。
一斉の活動から、経験に沿った学びへ
新人と中堅で、始め方を変えられます
これまでは同じロールプレイングに全員を入れていたところを、経験の浅い層は手順の確認から、経験を積んだ層は判断を求める課題から始める形に組み替えやすくなります。アンドラゴジーが置く学び手の前提と、アクティブラーニングの進め方が、同じ題材の上でつながります。
業務の合間に置ける学習活動
まとまった研修時間を確保できたときに限られていた活動を、短い対話の積み重ねとして日々の業務の合間に置きやすくなります。新人の立ち上がり期間でも、説明する、選ぶ、やってみせるといったアウトプットの機会を重ねられるのです。ただし、変わるのは学習の場で能動的に扱う内容の量までです。現場での行動が変わるかどうかには、運用やマネジメントも影響します。
重要なポイント
アンドラゴジーとアクティブラーニングは、どちらを採用するかを決める関係ではありません。前者は大人の学習をどう捉えるかという考え方、後者はその捉え方を学習の場でどう形にするかという進め方です。考え方の側に触れずに形式だけを整えても、受講者が持ち込む経験の差や、題材と業務との距離はそのまま残るのです。
進め方を見直すときに確かめておきたい点は、二つあります。一つは、受講者が持ち込む経験の差に応じて、始め方と課題の水準を変えられるかどうか。もう一つは、扱う題材が、いま担当している業務にどこまで接しているかという点です。活動の形式をそろえることは、この二つを満たすための入り口にすぎません。