ヤマト運輸、170時間の評価工数削減を実現。「安全第一」を支える教育DXと標準化の全貌

ヤマト運輸株式会社 安全部

濱 敏明 さん、磯崎 良子さん

企業概要

社名:ヤマト運輸株式会社

業種:運送・物流業

従業員数:158,295名(2025年3月31日時点)

ホームページ:https://www.kuronekoyamato.co.jp/

 

Performance Learning Award 2025 受賞企業

 

本事例のヤマト運輸株式会社は、ユームテクノロジージャパンが主催する「Performance Learning Award 2025」の受賞企業です。同アワードは、学習を企業の業績や経営インパクトに直結させた革新的な取り組みを表彰するものです。ヤマト運輸株式会社は、AIテクノロジーを活用した「評価プロセスの標準化」と「育成コストの劇的な削減」を実現した点が評価され、2025年度の受賞企業として選出されました。

 

Key Takeaways(要点まとめ)

  • 課題:全国350名の「安全指導長」育成において、評価プロセスが属人化し、評価者の工数が限界に達していた。また、組織の継ぎ目で指導品質が途切れるリスクがあった。
  • 解決策:AI活用学習プラットフォーム「UMU」を導入し、指導スキル検定に「AI評価」を組み込んだ。基礎スキルはAI、高度な指導力は人が評価する分業体制を構築。
  • 成果:評価時間を1人あたり6時間から30分へ短縮し、全体で約170時間の工数削減を実現。評価のバラつきを解消し、持続可能な教育モデルを確立した。

1. 導入のきっかけ・背景

ヤマト運輸のDNA「安全第一、営業第二」とその継承課題

 

── まず、今回のプロジェクトが発足した背景について教えてください。

 

磯崎さん:私たちヤマト運輸には、創業者の小倉昌男が1950年代に考案した「安全第一、営業第二」という絶対的な理念があります。「安全も能率も一番とすると、どちらも中途半端になる」という考えに基づき、約70年間にわたり守り続けてきた私たちのDNAです。この理念を現場で体現し、継承していくキーパーソンが、全国に約350名いる「安全指導長」です。彼らは交通事故や労災事故の防止に取り組む専門職であり、いわば安全の守護神です。

 

しかし、その育成と評価のプロセスは限界を迎えていました。最大の課題は「指導スキルの属人化」と「評価コストの肥大化」です。これまで、安全指導長の認定には、ベテランの評価者が現地へ赴き、実際の研修に長時間立ち会って評価を行う必要がありました。これには莫大な移動時間と労力がかかります。また、人が評価する以上、どうしても評価基準にバラつきが生じたり、組織の変更や人の入れ替わりによって指導の品質が途切れてしまったりするリスクも抱えていました。「安全」という最も大切な価値を、特定の個人の頑張りに依存せず、組織として高いレベルで維持し続ける仕組みが必要だったのです。

 

2. 選定理由・決め手

評価時間を1/12に。AI評価導入の合理的理由

 

── 多くのツールがある中で、なぜAI活用学習プラットフォーム「UMU」を選定されたのでしょうか?

 

濱さん:最大の決め手は、UMUの「AIビデオ評価機能」が、私たちが目指す「評価の標準化」と「工数削減」の両立に合致したからです。私たちは2019年から「安全指導者スキル検定」を展開していますが、評価者の負担を減らしつつ、質を落とさない方法を模索していました。そこで着目したのが、「AIと人との協業」というアプローチです。

 

UMUのAIは、話すスピード、流暢さ、アイコンタクトといった「基礎的なプレゼンテーションスキル」を即座に、かつ公平に採点してくれます。これにより、人間の評価者は、AIでは判断できない「講師の熱意」や「受講者の参加を促すファシリテーション」といった、より高度で本質的な指導力の評価だけに集中できるようになります。

 

単なるeラーニングによる知識習得だけでなく、こうした「実技の評価プロセス」そのものをデジタル化できる点がUMUの大きな魅力でした。既存の教育体系を崩すことなく、評価のフェーズにUMUを組み込むことで、劇的な効率化が見込めると判断し、導入を決断しました。

3. 導入後の効果・成果

170時間の工数削減。数字が証明する教育DXのインパクト

 

── 実際にUMUを導入して、どのような定量的・定性的な成果が得られましたか?

 

磯崎さん:数字として表れた成果は劇的でした。まず、評価にかかる工数が大幅に削減されました。これまでは1人の受検者を評価するために、移動や立ち会いを含めて約6時間を要していましたが、UMU導入後はこれがわずか30分に短縮されました。これは実に12分の1への圧縮です。プロジェクト全体で見ると、約170時間もの工数削減を実現しています。

 

この時間の余裕が生まれたことで、評価者はより丁寧で質の高いフィードバックを行えるようになりました。「評価疲れ」から解放され、本来注力すべき「どうすればもっと伝わる指導になるか」というコーチングの部分に時間を割けるようになったのです。

 

また、移動コストの削減も大きな成果です。従来は全国10カ所の会場に人を集めて行っていた法令テストなどをオンライン化したことで、89カ所での分散実施が可能になりました。これにより、受検者一人あたり約2時間の移動時間を削減できています。コストを下げながら、教育の機会と質を向上させるという、まさに「教育DX」の理想的な成果が得られたと実感しています。

4. 今後の展望・ビジョン

「個人の知」を「組織の資産」へ。持続可能な安全文化の未来

 

── 今回の成功を経て、今後どのような展望を描かれていますか?

 

濱さん:今回のプロジェクトで得られた最大の資産は、安全指導のノウハウが「個人の知」から「組織の資産」へと転換されたことです。UMU上に蓄積された優秀な指導動画やフィードバックの記録は、担当者が変わっても消えることのない恒久的なナレッジとなります。これにより、組織の継ぎ目をなくし、「安全第一、営業第二」という理念を未来へ永続的に継承する強固な基盤が整いました。

 

今後は、このモデルをさらに広げていきたいと考えています。すでに検定以外のカリキュラムでもAI評価を活用する動きが始まっています。私たちのこの取り組みが、ヤマト運輸社内だけでなく、物流業界全体、ひいては「安全教育」に取り組むあらゆる企業の模範となるような、持続可能な教育モデルへと進化させていきたい。それが、社会からの信頼に応え続ける私たちの責任だと考えています。

 

UMU 活用POINT

1.AIと人の「評価分業」による工数圧縮

 

話す速度やアイコンタクトなどの「基礎スキル」はAIが即時採点し、熱意や動機付けなどの「応用スキル」は人が評価。役割を明確に分けることで、評価時間を従来の1/12(6時間→30分)に短縮しました。

 

2.動画トレーニングによる自己認識の深化

 

受検者が自身の指導風景を録画し提出することで、自身の「話し方の癖」や「表情」を客観視。AIからのフィードバックと合わせることで、メタ認知を促し、自律的な改善サイクルを回す仕組みを構築しました。

 

3.ハイブリッド型検定プロセスの構築

 

知識習得(eラーニング)、基礎実技(AI動画提出)、応用実技(対面研修・実車指導)を組み合わせたブレンド型学習を設計。デジタルと対面の長所を融合させ、学習効果と実務転移を最大化しました。

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