インストラクショナルデザインの課題は、使う回数で変わります
今年だけと言われて用意した説明資料が、翌年も同じ形で配られることがあります。反対に、毎年続ける前提で組んだ研修が、制度の変更で一度きりで終わることもあります。ただ、どちらも作り始めた時点では見通せなかったものなのです。
使う回数に手のかけ方を合わせる難しさ
一度きりの説明会と、毎年の研修
インストラクショナルデザインが扱うのは、教える内容をどの順で、どこまで書いて渡すかという組み立てです。そのなかで毎回決めることになるのが、どこまで作り込むかという度合いなのです。手がかりになるのは、その教材を何回使うことになるかという見通しです。一度きりの説明会であれば、その日に口頭で補いながら伝われば足ります。何年も回す研修であれば、講師が横にいない場面でも一人で読み進められる形にしておく価値があります。
見通せないまま始まる作り込み
ところが、何回使うことになるかは、作り始める時点では決まっていません。今年だけと言われて用意した資料が、翌年も同じ形で配られます。逆に、毎年やる前提で組んだ研修が、制度の変更で一度で終わります。どちらも事前には見通せないのです。そのため、かけた手間と実際に使った回数が合わなくなります。この領域で課題として語られるものの多くは、その合わなさが表に出たときの姿だと言えます。
粗すぎた教材と、作り込みすぎた教材
その場の補足で埋めていく回
一度きりのつもりで粗いまま渡した資料が、翌年も同じ形で使われるとします。教材の側には説明が足りていないので、講師は毎回その場で言葉を足すことになりますし、担当が別の人に移れば足す言葉も変わります。ただ、この外れ方は表に出やすいと言えます。教える側が同じところで毎回つまずくため、どこが足りないのかは回を重ねるほどはっきりしてくるからです。
一度で役目を終えた教材
反対の外れ方もあります。長く使う前提で細部まで整えた教材が、制度の変更で一度使われただけで役目を終える場合です。かけた時間は戻ってきません。こちらは表に出にくい外れ方です。教材そのものは仕上がっていますし、当日の講義も滞りなく進みます。手をかけすぎたという事実は、次に開く機会が来なかったという形でしか残らないのです。
業務シーンを1つ選ぶと、AIが顧客役を務めてあなたと1回の会話を行います。終了後、評価フィードバックを確認できます。
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二回目に手を入れるまでの工数
思い浮かぶ順序と、その前提
読めないのであれば、二回に分ければよいという順序が思い浮かびます。一回目は形になるところまでにとどめ、実際に使ってから手を入れる進め方です。一度使ってしまえば、どこが足りなかったのかは自然と見えてきます。この順序が取れるのは、二回目に手を入れる工数が現実的な場合に限られます。
開き直して直すまでの負担
ところが、一度仕上げた教材を開き直して直す作業は軽くありません。当時の資料を探し直し、変える範囲を決め、前後のつながりを整えます。本業を持ちながら研修を受け持つ社内講師にとって、これは新しく組むのと変わらない負担になりがちです。結局、一回目で仕上げるほかなくなります。
資料から組み直す工数が下がる先へ
取りかかるまでが軽くなります
変わりつつあるのは、その開き直す作業の入り口です。部門に残っているのは、以前配った説明資料や、作業のたびに書き足してきた手順書です。そこから必要な部分を選び、抜けている記述を補って教材の形にするところまでは、AIの手を借りられる余地が広がってきました。二回目に開くときも、資料を並べ直す段階から始めずに済みます。取りかかるまでが軽くなれば、一回目を仕上げきらないという選び方も現実的になるのです。
直す場所を決めるのは講師の側
工数が下がるのは、形にするまでの部分に限られます。どこに手を入れるかという判断は、その回を実際に受け持った講師の側に残ります。受講者がどの説明で止まったのか、どの例が担当業務と噛み合わなかったのか。それが分かるのは、その場に立っていた人です。出てきた下書きを読んで確かめる時間も、これまでどおり必要になります。
一回目と二回目に分ける組み方へ
使ってから、直す場所を絞ります
順序を選べるようになると、一回目の作り方が変わってきます。すべてを整えきる前に、伝わる形になった時点で一度使ってみる進め方が現実的になるのです。実際に使えば、受講者がどこで手を止めたか、どの説明が長すぎたかが見えてきます。二回目に手を入れるのは、その場所だけです。二回目まで来た教材は、少なくとも一度は人前に出ています。直す場所を一から探さずに済みます。
一回目から正確にしておく部分
ただし、一回目から軽くしてよい部分と、そうでない部分があります。安全にかかわる手順、制度上の要件に触れる記述、間違ったまま伝わると後から取り返しがつかない箇所。ここは最初から正確である必要があります。後回しにできるのは、言い回しの磨き方や構成の作り込みといった、読みやすさの側だけです。
重要なポイント
何回使うことになるかを、作る前に読み当てるのは難しいことです。見立てが甘かったのではなく、決まっていないものを決まったものとして扱ったところに無理があります。読めないという前提を置いたうえで、手の入れ方を二回に分けておきます。課題の扱い方は、その順序から変わってくるのです。
手元の教材を一つ開いて、二回目に手を入れる前提で作られているかを確かめてみます。ここでいう二回目は、何回で完成という基準ではなく、いつ手を入れるかという順序の話です。一回目で仕上げきる作り方しか選べていないのであれば、直しにかかる工数のほうを先に見ることになります。