アクティブラーニングの人材育成は、教材だけが配れます
一部の研修で試したアクティブラーニングを、育成の体系全体へ広げるという年度計画。それが動き出したとき、資料なら人数分そろえられます。ただ、当日その場で起きるやり取りまでは、同じようには増やせません。
体系に広げるとき、増えるものと増やせないもの
人数と回数が同時に増えます
一部の研修で試したやり方を育成の体系に組み入れるという話は、年度の計画づくりのなかで出てきます。ここで増えるのは、対象になる社員の人数と、開催する回数の二つです。新人向けの回、管理職向けの回、拠点ごとの回。階層別の研修に入れるなら、それぞれを用意することになります。講師が自分で回せる範囲に収まっていた開催が、体系に載せた後は、その範囲を超えたところまで同じ内容を届けることになります。
複製できない、当日の進行
増える分をそろえるとき、教材と進行では事情が違います。資料やスライドは、人数分だけ複製できます。一方、出てきた答えを受けて次の問いを出す、手が止まっている参加者に声をかける、話が逸れたところで本筋に戻すこと。こうした動きは、その場にいる人が担います。録画を残しても、次の回の参加者が同じところでつまずくとは限りません。同じ内容を配ることはできても、同じ進行をもう一度置くことはできないのです。
開ける回数は進行できる人の数まで
承認された計画と、増えない回数
そのため、体系に載せた時点で、開ける回数は進行を担える人の数に収まります。研修部門の人員が計画に合わせて増えることは、あまりありません。そこで出てくるのが、各部門の管理職に進行を頼むという案なのです。ただ、その人たちはこれまで進行の経験を積む機会を持っておらず、本業の目標も抱えたままです。広げる計画は承認されているのに、開ける回数だけが前年のまま。この形で止まることがあります。
進行がなくても成立する部分へ
回数の限りを動かせないとき、講師にできるのは、すべての回を同じ形にそろえることではありません。進行する人がいなくても成立する部分と、進行する人がいないと成立しない部分を分けて、体系に載せるのは前者からにすることです。用語や手順の確認、事前に読んで答えを書いておく問い。この種の部分は、一人でも進められます。判断が割れたときの擦り合わせや、言い直しの練習は、進行できる人がいる回に集めます。
業務シーンを1つ選ぶと、AIが顧客役を務めてあなたと1回の会話を行います。終了後、評価フィードバックを確認できます。
業務シーンを1つ選ぶと、AIが顧客役を務めてあなたと1回の会話を行います。終了後、評価フィードバックを確認できます。
体系に載せる前に増える作り直しの手間
口頭の補いがあって通る資料
成立する部分から先に体系へ載せるという順序を取ろうとすると、教材の側で引っかかります。これまでの資料は、講師が横で説明を足すことを前提に作られてきました。図表だけのページ、要点だけを並べたスライド。当日の口頭の補いがあって、初めて意味が通ります。そのまま配っても、読む側は途中で手が止まってしまうのです。
作り直しは範囲の分だけ増えます
一人で読み進められる形にするには、省いていた前提を書き足し、確認の問いを添え、読む順序を組み直す作業が要ります。試す段階では一つの研修で済んでいた作業。それが、体系に載せる範囲の分だけ発生します。設計から当日の進行までを抱える社内講師にとって、この作り直しは広げる前の段階で立ちはだかります。
一人で読み進められる形の下書きへ
社内文書から下書きまで
変わりつつあるのは、この作り直しにかかる工数です。業務の手順書、製品の説明資料、制度の案内文書。社内には、教材のもとになる文書がすでにそろっています。AIを使うと、こうした文書から、一人でも読み進められる形の下書きを組み立てるところまでを、短い時間で用意できます。省いていた前提の書き足しや、途中に挟む確認の問いも、下書きの段階で形になるのです。
内容を知っている人が決めます
出てきた下書きを、そのまま体系に載せるわけではありません。どの説明が自社の実務と合っているか、どの問いが確認として働くか。それを見るのは、内容を知っている講師です。どの回を進行つきで残すかという判断も、同じ人の手元にあります。組み立ての速さが変わっても、内容に目を通して決める時間は、変わらず予定に入れておく必要があると言えます。
その場でしか起きないやり取りが残る回へ
開催日を待たずに配れる部分
体系に載せる順序が変わります。用語や手順の確認、事前に読んで答えを書いておく問いは、開催の枠を押さえなくても、進行できる人の予定を待たずに配れます。対象の部署が増えても、この部分は同じ形のまま届くのです。年度の途中から加わった社員も、次の開催日を待たずに読み始められます。
その場でしか起こらないことを残します
一人で進められる形に寄せるのは、進行つきの回を減らすためではありません。判断が割れたときの擦り合わせ、その場で言い直してみる練習。これらは、居合わせた人どうしでなければ起こりません。確認で足りる部分を先に外しておくと、限られた回に、その場でしか起こらないことだけを残せます。
重要なポイント
アクティブラーニングを育成の体系に広げるとき、教材と進行は同じようには増えません。資料は人数分そろえられますが、当日その場で起きることは、複製して配ることができません。広げ方を考える起点は、教材をどう増やすかよりも、進行をどこに置くかという側にあると言えます。体系に載せる範囲を決めるときは、この違いが先に来ます。
体系に載せる候補を見るときは、その回が進行する人なしでも成立するかを先に確かめておくことで、載せる順序を組みやすくなります。確認で足りる部分は開催日を待たずに広げ、進行が要る部分は担える人がいる回に寄せます。この二つを分けたところが、広げる順序を決める起点になるのです。