アクティブラーニングのポイントは、課題の難易度にもあります
アクティブラーニングのポイントは形式の選び方にあると考え、演習やグループワークを組み込む企業は増えました。ただ、その場で答えに詰まる受講者と、確認だけで終わる受講者に分かれることがあるのです。
アクティブラーニングの要点は、課題の置き方
処理する場面が全員に回るか
アクティブラーニングは、受講者が受け取った内容を自分で処理する場面を含む学習の形です。自分の言葉で説明する、選択肢を比較して選ぶ、状況に応じて判断するといった行動が、そこに含まれます。一つ目のポイントは、この処理の場面が受講者全員に回っているかという点なのです。グループワークに切り替えても、実際に発言するのは数人にとどまり、ほかの受講者は聞き役のまま終わる回もあります。研修一回あたり、全員が一度はアウトプットする組み方になっているか。ここが最初の目安になります。
前提知識に見合う水準
二つ目のポイントは、その場面で求める水準が、受講者の前提知識に見合っているかという点です。新任の担当者に必要なのは用語の意味を確かめる段階、実務で扱ってきた経験者に必要なのは判断が分かれる場面の検討。同じ設問を全員に配ると、前者は周囲の答えを写すだけになり、後者は知っている内容の確認で時間を使います。どちらもアウトプットの形は取っていますが、そこで起きている学習は同じではありません。
同じ課題でも、学習の中身が分かれる理由
手が止まる人と、すぐ進む人
同じ演習を実施しても、受講者に残るものは違ってきます。新任の担当者は課題の前で手が止まり、周囲の答えをそのまま書き写します。同じ課題を、担当歴の長いメンバーは数十秒で確かめて先へ進むのです。前者には理解のずれが残り、後者には新しく考える機会が生まれません。アウトプットの回数だけを数えていると、この差は見えないままです。
段階を追って水準を上げる
そこで必要になるのが、求める水準を段階に分ける設計です。はじめは用語の意味や手順を確かめる課題、答えられるようになった段階では、条件が複雑な場面の判断。つまずいたときに戻れる説明や手がかりを添えておけば、受講者は自力で進み直せます。同じ内容を扱っても、どの順序で、どこまでの水準を求めるかによって、受講者が経験する学習は変わると言えます。
業務シーンを1つ選ぶと、AIが顧客役を務めてあなたと1回の会話を行います。終了後、評価フィードバックを確認できます。
業務シーンを1つ選ぶと、AIが顧客役を務めてあなたと1回の会話を行います。終了後、評価フィードバックを確認できます。
教材を作り分ける時間と担い手の不足
見極められる人は限られる
マニュアルや製品資料を、水準の違う複数の課題に組み替える作業には、学習目標の整理と、押さえるべき知識の見極めが必要です。この見極めができるのは、その業務を日々担当している少数のメンバーに限られます。年間の研修計画を預かる立場から依頼しても、通常業務の合間に確保できる時間はわずかなのです。
改定のたびに増える手直し
制度や製品が変わると、階層ごとに分けた課題も見直しの対象になります。一律の資料なら差し替えは一箇所で済みますが、水準を分けた分だけ、直す箇所は増えていきます。改定が年に何度もある領域では、作り分けをいったん諦め、全員に同じ資料を配る形へ戻りやすくなると言えます。
段階の組み立てから、内容の確認へ
下準備の初稿はAIが引き受ける
資料をどこで区切るか、それぞれにどの説明を添えるか。こうした下準備の初稿づくりをAIが引き受けると、水準を分けた課題を用意するまでの工数は軽くなります。担当者が一から書き起こす前提ではなくなり、空いた時間を、求める水準が実務に見合っているかの確認に充てられるようになるのです。内容を確かめ、公開を認める工程は、引き続き人の側に残ります。
一律配布を前提にしない計画へ
これまでは、受講者の層ごとに課題を用意する余力がないため、一律の資料を配る前提で年間の計画を組む場面が多くありました。整理と初稿にかかる負担が下がったときに見直せるのは、この一律配布という前提。同じ資料から、前提知識の違う層に向けた課題を派生させる進め方も選べます。ただし、どこまで分けるかを決めるのは担当者の判断です。
アクティブラーニングは、一律の課題から段階設計へ
入口を層ごとに分けられる
これまで一つの演習に全員を集めていた進め方から、前提知識の近い層ごとに入口を分ける形へ移していけます。新任の担当者は用語の意味を確かめる課題から、経験者は判断が分かれる場面の検討から始められます。集合研修の当日は、層をまたいだ意見交換に時間を使いやすくなるのです。
単発の企画から、続く運用へ
改定のたびに課題へ手を入れやすくなると、アクティブラーニングは単発の企画で終わりにくくなります。受講者の回答は学習データとして残ります。次の設計に持ち込めるのは、どの段階で理解のずれが起きやすいかという情報。ただし読み取れるのは、用意した課題の範囲での学習の状況までです。
重要なポイント
アクティブラーニングが成り立つかどうかは、グループワークや演習といった形式の名前で決まるものではありません。受講者一人ひとりが、自分の前提に見合った水準でアウトプットできているか。それも、押さえておきたい条件の一つです。形式を整えても水準が合っていなければ、同じ研修の中で経験する学習は分かれていくのです。
アクティブラーニングの進め方を見直すときに確かめたい点は、二つあります。一つは、受講者全員にアウトプットの場面が回る組み方になっているかという点です。もう一つは、水準を分けた課題の更新を、担当者が無理なく続けられるかという点。この二つを満たせる範囲で設計しておけば、形式の選び方は後から決められます。