企業のアクティブラーニングは、機会の届き方で差が出る
研修部門では、グループワークやロールプレイングといった、アクティブラーニングの手法をすでに取り入れている企業が増えています。ただ、拠点が増えるほど、その機会が全社員に届いているかどうかは、実施後まで分かりません。
企業のアクティブラーニングとは何か
手法ではなく機会が基準
企業におけるアクティブラーニングとは、グループワークやロールプレイング、教え合いといった、特定の手法を指す言葉ではありません。共通しているのは、参加者が説明を聞くだけで終わらず、自分の言葉で言い換えたり、条件を比べて判断を示したりする、アウトプットの場面を含んでいる点です。手法の名称が異なっていても、この場面を含むかどうかが、アクティブラーニングと呼べるかどうかの分かれ目になります。
決め手は届く範囲の広さ
企業でこれを導入する場合、判断の基準になるのは、その機会が参加者全員に届いているかどうかです。集合研修の場でアウトプットの機会を得られるのは一部の受講者にとどまり、残りの受講者はその場面を持たないまま終わることが少なくありません。同じ研修を実施しても、機会が届いた人と届かなかった人とでは、身につく内容に差が生まれます。手法を選ぶことは、その機会を用意するための入り口にすぎません。
定着を左右するのは、答えた経験の有無
理解が残るのは説明した人
知識は、説明を聞いただけの状態よりも、自分の言葉で言い換えたり、条件を比べて判断を示したりした後のほうが、記憶に残りやすいとされています。研修の場でその機会を得られた人には、理解を組み立て直した経験が残ります。一方、聞いているだけで終わった人には、同じ経験は訪れません。同じ研修に参加していても、経験する中身は人によって変わってくるのです。この差は、満足度アンケートだけでは見えてきません。
記録に残るのは参加の事実
ところが、研修が終わったあと、研修責任者の手元に残るのは、誰が参加したか、誰が修了したかという記録までであることが少なくありません。誰がアウトプットの機会を得て、誰が聞いているだけで終わったのか。その内訳までは、通常の記録には表れてこないのです。年間の研修計画の達成状況を報告するには足りても、理解の状態までは説明できません。
業務シーンを1つ選ぶと、AIが顧客役を務めてあなたと1回の会話を行います。終了後、評価フィードバックを確認できます。
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進行役の時間による機会の制約
一人当たりの持ち時間の壁
受講者が数十人を超える研修で、全員にアウトプットの機会を回そうとすると、一人当たりに割ける時間は数分に縮みます。研修の時間には解説や演習も含まれるため、その場面だけを長く取ることはできません。発言に慣れた一部の受講者に機会が偏りやすいのは、この時間の制約によるものです。参加人数が多い研修ほど、この偏りは大きくなります。
記録は参加と修了までの内容
進行役が一度に耳を傾けられるのは、一組か一人に限られます。立ち会えなかった受講者が何をどう答えたのかは、その場で消えていきます。結果として、研修後に残る記録は、参加の状況と修了の有無にとどまり、経営層への報告に使える材料も、そこまでにとどまるのです。
双方向の対話は、進行役からAIへ
準備と進行の負担軽減
受講者に説明や判断を求める場面を、業務資料からひとつずつ組み立てるには時間がかかります。AIがこの準備を引き受けると、進行役が一から場面を書き起こす必要は薄れます。空いた時間を、扱う内容が実務に合っているかの確認に充てられるようになるのです。その分、一つひとつの内容を確かめる余裕も生まれます。内容を確かめて公開を認める工程は、引き続き進行役の役割として残ります。
持ち時間に縛られない機会
受講者は、進行役や他の受講者の順番を待たずに、アウトプットの場面へ進めるようになります。AIが個別に応答を返すため、拠点や人数が増えても、機会を用意する労力は進行役の持ち時間に比例しなくなるのです。ただし、その内容が実務に照らして妥当かどうかを判断するのは、引き続き人の役割です。
アクティブラーニングは、機会から仕組みへ
全社員に行き渡る機会
これまで一部の受講者に偏っていたアウトプットの機会を、拠点や部署を問わず全社員に届けやすくなります。進行役が直接向き合う人数は変わらなくても、実際にその場面を経験する受講者の数は広がっていくのです。拠点が増えても、対応できる範囲は広がっていきます。参加できる人数が増えるほど、チーム全体で見た理解のばらつきも把握しやすくなります。
参加以上に見える状況
受講者との対話が記録として残るため、研修責任者は、参加や修了の記録だけでなく、どの学習ポイントで理解のずれが生じやすいかも確認しやすくなります。ただし、そこから分かるのは、用意した場面と条件のもとでの学習の状況までです。
重要なポイント
企業のアクティブラーニングが機能するかどうかは、取り入れた手法の名称だけで決まるものではありません。参加者一人ひとりに、実際にアウトプットする機会が届いているか。それも、効果を分ける条件の一つです。機会が一部の受講者に偏ったままでは、同じ研修を実施しても、身につく内容は人によって変わってしまいます。
自社の進め方を見直すときに確かめたい点は、二つあります。一つは、その機会が拠点や人数の制約を越えて、全社員に届く形になっているかどうかです。もう一つは、そこから得られる記録が、参加や修了以上の状況を映しているかどうかという点です。この二つがそろって初めて、手法選びが意味を持ちます。