アクティブラーニング批判は、手法と運用に分かれます
アクティブラーニングへの批判には、時間がかかるという指摘と、形だけで学びが起きないという指摘が混ざっています。ただ、前者は手法そのものの性質を指し、後者は実施したときの条件によって変わります。
アクティブラーニング批判の中身は二種類
時間がかかるという指摘
アクティブラーニングへの批判で、まず挙がるのが時間の問題です。講義形式なら1時間で伝えられる内容も、演習や議論を挟むぶん、同じ枠で扱える範囲は狭くなります。年間の研修時間が限られている以上、これは避けられないトレードオフです。この指摘は手法の性質そのものに向けられており、進め方を工夫しても消えるものではありません。扱う範囲を意図的に絞ることで引き受ける類の批判なのです。
形式だけが残る研修
もう一つは、導入した結果に向けられた批判です。グループワークやケーススタディを取り入れても、発言するのは毎回同じ数人で、残りの受講者は座っているだけで終わります。受講後のアンケートは悪くないのに、現場で使える理解が残った手応えはありません。こうした声は、手法そのものではなく、実施したときの条件に左右されます。同じ演習でも、うまくいく回とそうでない回が出てくるのは、この二つ目の批判が条件次第で当たりも外れもするからです。
演習の成立を左右する、前提知識と支援
受講者ごとに違う演習の負荷
同じケーススタディを配っても、受講者に起きることは同じではありません。基礎のある人にとっては、知識を引き出して判断を試す機会になります。一方、前提となる用語や手順があいまいな人にとっては、議論についていけないまま時間が過ぎがちです。数人一組のグループワークでは、後者が黙っていても場は進みます。参加しているように見えて、考える機会は生まれていません。この差は、進行を眺めているだけでは見えにくいのです。
支援の有無で変わる指摘の当否
では、前提知識の足りない受講者には向かないのかというと、そう単純でもありません。手順の示し方、判断に使う材料、つまずいたときの補足説明。こうした支援がどれだけあるかで、演習の成立しやすさは変わります。支援が薄いまま演習を増やせば、初学者に向かないという指摘は当たりやすくなります。段階を踏んだ支援があれば、必ずしも当てはまりません。ただし、時間がかかるという指摘は、支援を手厚くしても残ります。
業務シーンを1つ選ぶと、AIが顧客役を務めてあなたと1回の会話を行います。終了後、評価フィードバックを確認できます。
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前提知識が見えず、支援まで手が回らない現実
当日まで見えない理解の幅
受講者の前提知識を、事前につかむのは簡単ではありません。事前アンケートで経験年数や担当業務を聞いても、どの用語でつまずくかまでは分かりません。実際の理解の幅が見えてくるのは、演習が始まってからです。20人が集まる研修で、誰がどこで止まるかを一人ずつ想定しておくのは、現実的ではないと言えます。
後回しになる段階別の教材
難易度を分けた教材を用意すれば対応できます。ただ、同じテーマで複数の入り方を作り、ヒントや補足説明まで添えるとなれば、作業量は一本作るときの比ではありません。企業内の研修講師は、ニーズの確認から講義、その後のフォローまで兼任していることが多く、教材の作り込みは後回しになりがちです。
一本の教材から、段階を分けた設計へ
区切りとヒントの下ごしらえ
手元にある業務マニュアルや製品資料を、どこで区切るか。前提知識の少ない受講者に向けて、どんな補足を添えるか。この下ごしらえにあたる部分は、AIが初稿を引き受けられるようになってきました。講師がゼロから書き起こす前提が変わると、段階を分けた教材を試しに作ってみる余地が生まれます。ただし、区切り方が自社の実務に合っているか、補足の内容が現場の運用と食い違っていないかを確かめる作業は残ります。
用意できる分量が変わります
ここで変わるのは、講師の力量ではなく、用意できる分量です。一本の教材を仕上げるだけで手一杯だったところに、同じテーマで入口の違う教材や、つまずいたときの補足を添えられるようになります。前提知識に幅のある受講者を、一律の演習に集めなくてもよくなるのです。もっとも、どの受講者にどの入口を勧めるかという判断は、引き続き講師の仕事として残ります。
当日の一律の演習から、前後を含む流れへ
演習前に置く、前提をそろえる場
アクティブラーニングの機会を、当日の一コマに限る必要はなくなり、その前後にも置けるようになります。演習の前に、必要な用語や手順を確認して答える場面を挟んでおけば、当日の議論に入る時点での差は縮まります。手が止まったまま終わる受講者が減れば、形だけで終わったという批判は起きにくくなるのです。
つまずいた場所が見えてきます
事前に答えた記録が残っていれば、講師は、どの学習ポイントで理解のずれが集まっているかを確認できます。次の回で厚く扱う箇所を選び直す材料にもなります。ただし、そこから分かるのは、用意した設問の範囲での受講者の状態にとどまります。現場で使えるようになったかどうかまでを、この記録が示すわけではありません。
重要なポイント
アクティブラーニングへの批判には、時間がかかるという手法の性質への指摘と、形だけで終わったという実施結果への指摘が混ざっています。前者は扱う範囲を絞って引き受けるもの、後者は前提知識と支援の量で変わるもの。二つをひとまとめに論じている限り、どこに手を入れればよいのかは見えてきません。
進め方を決める前に確かめたい点は、二つあります。一つは、前提知識の足りない受講者に向けた支援を、教材の中に組み込めているか。もう一つは、演習に時間を割く分だけ、扱う範囲を絞る判断ができているかという点です。この二つがそろっていれば、批判の多くは設計の側で引き受けられます。