「AIリスキリング 2.0」とは何か?ツールの使い方ではなく、仕事の作り変え方を学ぶ
AI時代の働き方から考えるジョブクラフティング

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生成AIの導入が一巡し、多くの企業が新しい壁にぶつかっています。

「全社にAIツールを導入した」「研修も実施した」。それなのに、現場の生産性も、従業員の働き方も、思ったほど変わっていない。この壁の正体は、AIリスキリングの目的そのものが、まだ初期段階「1.0」にとどまっていることにあります。

 

AIリスキリング 1.0 の限界

これまで多くの企業が取り組んできたAIリスキリングは、生成AIというツールの操作を習得することが主な目的でした。プロンプトの書き方を学ぶ、社内でどのツールを使えるかを周知する、研修の受講率を追う。これらは重要な第一歩ですが、あくまで「ツールの操作習得」の範囲にとどまります。評価指標も、受講率やツール利用率が中心になりがちで、それが実際の業務成果や働き方の変化に結びついているかどうかは、見えにくいままでした。

 

AIリスキリング 2.0 とは何か

次の段階として必要になるのが、「AIリスキリング 2.0」という考え方です。AIリスキリング 2.0とは、会社から与えられた環境(AIツールやAI-JT)を活用し、従業員一人ひとりが自分の業務内容そのものを主体的に再構築していく学びのあり方を指します。これは、単なる個人の意識改革に委ねるのではなく、適切なツールや環境という「資源」をテコにして「ジョブクラフティング」を実現する試みだと言えます。

 

項目 AIリスキリング 1.0(従来) AIリスキリング 2.0(次世代)
主目的 ツールの操作習得・業務効率化 ジョブクラフティング・価値創造
主導権 会社(トップダウン) 個人(主体的な学び・活用)
心理的影響 やらされ感、AIへの不安 市場価値向上への期待、自己実現
評価指標 受講率、ツール利用率 エンゲージメント、改善提案数、業務成果
結果 組織全体でAI活用の土台が形成される 人とAIが共創し、自ら成長する自律型組織になる

 

なぜ今、この転換が必要なのか

生成AIの普及は当初、「AIに仕事を奪われるのではないか」という不安とともに語られることが多くありました。しかし本当に問われているのは、AIに仕事を明け渡すことではなく、AIを使って自分自身の仕事の中身を、より価値の高いものへと作り変えられるかどうかです。

 

この転換の必要性は、情報開示制度の変化からも見て取れます。2023年3月期の決算以降、有価証券報告書には人的資本に関する情報開示が義務化され、企業は人材育成の方針や、従業員が能力を発揮できる環境整備の状況を、具体的に開示する必要が生じました。

単に「AI研修を実施した」という事実だけでなく、それが従業員の主体的な成長やキャリアにどうつながっているかが、投資家からも問われる時代になっているのです。経済産業省の「デジタル時代の人材政策に関する検討会」でも、AIを使いこなす人材をどう育成していくかという議論が継続的に行われており、AI人材育成のあり方そのものが、国の政策課題として扱われています。

 

AIリスキリング 2.0 を支える学習設計

AIリスキリング 2.0を掛け声だけで終わらせないためには、学習の設計そのものを変える必要があります。鍵になるのは、自社の実際の業務シナリオを使った演習と、AIによる即時のフィードバックです。

一般的な生成AIの知識をインプットするだけでは、従業員は「自分の業務でどう使えばいいか」を見いだせず、活用は一部の人材にとどまってしまいます。自分の業務に近いシナリオの中でAIを使い、その場でフィードバックを受けながら試行錯誤できる環境があってはじめて、知識は「自分の仕事を作り変える力」に変わっていきます。

 

この学習設計を実現する具体的な形が、「AI-JT」という概念です。AI-JTとは、AIが学習パートナーとして「即時に」「個別に」「双方向に」トレーニングを行う仕組みのことです。

先輩社員が実戦の中でしか伝えられない経験則や、予測不能な状況への対応力を担うOJTに対し、AI-JTは、何度失敗しても許される環境で、客観的なフィードバックを受けながら反復練習ができる場を担います。両者は対立するものではなく、役割分担の関係にあります。

 

ここに、前回のコラム(※)で触れたジョブクラフティングとフィードバックの関係が重なります。上司が一人ひとりに毎回、具体的なフィードバックを返すのは現実的に難しくても、AI-JTであれば、全員に対して、毎回、客観的なフィードバックを返すことができます。

AIリスキリング2.0とは、「安全に何度でも練習でき、その都度フィードバックがもらえる場」を、AIの活用によって日常業務の中に組み込んでいく試みだとも言えます。

 

※ジョブクラフティング連載 第1回「安心して働ける」と「イキイキと働ける」は違う
https://www.umu.co/column/job-crafting-series-01/

 

まとめ

AIリスキリング 2.0とは、AIツールを使えるようになることのその先、従業員一人ひとりが自分の仕事の意味や進め方をAIとともに作り変えていく学びのあり方です。組織がこの段階に進めるかどうかは、研修の受講率ではなく、従業員が日々の業務の中で、AIを使ってどれだけ主体的に仕事を作り変え始めているかによって測られていくはずです。

 

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出典:日本生産性本部、PwC Japan 等の人的資本開示に関する分析記事/経済産業省「デジタル時代の人材政策に関する検討会」

 

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