「安心して働ける」と「イキイキと働ける」は違う
フィードバック起点で考えるジョブクラフティング

job-crafting-01

 

心理的安全性の研修を実施した。1on1も定着させた。エンゲージメントサーベイも毎年実施している。それでも現場から「やらされ感が拭えない」という声が消えない ―そんな悩みを抱える人事担当者は少なくありません。

 

実はここには、見落とされがちな前提があります。「安心して働けること」と「イキイキと働けること」は、まったく別の話だという前提です。

 

心理的安全性とワーク・エンゲイジメントは、別の指標である

心理的安全性とは、「発言しても、質問しても、失敗を認めても、この職場では罰せられない」という安心感のことです。一方でワーク・エンゲイジメントは、仕事そのものに対する活力・熱意・没頭といった、前向きな心理状態を指します。前者は職場の「土台」であり、後者は個人の仕事への「向き合い方」です。

 

この二つは連動しているように見えて、実は独立した軸です。心理的安全性が高くても、ワーク・エンゲイジメントが低い職場は珍しくありません。「何を言っても怒られないが、誰も自分の仕事を見てくれていない」という状態です。

 

経理・バックオフィスの「同じ仕事」が教えてくれること

毎月同じ経費精算や伝票処理を担当している経理担当者を想像してください。ある月は、処理を依頼した社員から「助かりました、いつも早くてありがたいです」と一言もらえたとします。別の月は、何の反応もないまま淡々と処理が終わったとします。作業内容はまったく同じでも、その仕事への向き合い方は大きく変わるはずです。

バックオフィス業務など、重要だが繰り返しの多い、ミスなくできて当たり前な仕事ほど、この「一言」の有無が効いてきます。心理的安全性がどれだけ確保されていても、この一言がなければ、仕事はただの「作業」のままです。

 

なぜ地味な仕事ほど、この差が開くのか

従業員エンゲージメント調査で世界的に知られるギャラップ社の調査には、「この7日間で、良い仕事をしたことに対して評価や称賛を受けたか」という設問が含まれています。この調査によれば、この設問に強く同意する従業員は全体の4人に1人程度にとどまり、適切に評価されていないと感じる従業員は、そうでない従業員と比べて1年以内に離職する意向が2倍高いことが分かっています。

 

つまり、心理的安全性という「安心の土台」の上に、この「評価や称賛(=個人にフォーカスしたフィードバック)」を通じて、自分の仕事が誰かの役に立っていることを実感できる機会があるかどうかが、ワーク・エンゲイジメントを左右しているのです。

 

ジョブクラフティングは「意識改革」ではなく「フィードバック設計」の問題

「従業員自身が、仕事の内容や人間関係、仕事の捉え方を主体的に見直し、やりがいのあるものに変えていく」―これがジョブクラフティングの一般的な定義です。多くの解説記事では、この主体的な見直しを促すために「本人の意識改革」や「自己分析」に焦点が当てられがちです。

しかし現場で本当に効いているのは、それよりも手前にある要素、つまり周囲からのフィードバックの設計です。自分の仕事が持つ意味や影響力を、自分一人で見出すのは簡単ではありません。多くの場合、それに気づかせてくれるのは、周囲からの具体的な言葉なのです。

 

「ありがとう」ではなく、個人にフォーカスしたフィードバックへ

ここで重要なのは、フィードバックの「粒度」です。誰にでも言えるような「お疲れ様」「ありがとう」ではなく、「〇〇さんのこの対応があったから、月次の締めがいつもより早く終わった」というように、個人名と具体的な成果を紐づけたフィードバックが、仕事の意味づけを変えます。管理職に求められているのは、部下の仕事を見守ることではなく、日々の仕事の中で「あなたのこの行動が、これだけの価値を生んだ」と具体的に言語化して伝える技術です。

 

まとめ

心理的安全性は、エンゲージメントを高めるための必要条件ではありますが、十分条件ではありません。安心して働ける職場をつくった先に、もう一段階、自分の仕事の意味や影響力を日常的に実感できる仕組みが必要です。ジョブクラフティングを一部の意識の高い社員だけのものにしないためには、管理職が個人にフォーカスしたフィードバックを、特別なイベントではなく日常の習慣として実践できるかどうかが分かれ目になります。

 

こうした「個人にフォーカスしたフィードバック」を管理職が実践できるようになるには、知識だけでなく練習の機会が必要です。UMUではAIとの対話トレーニングを通じて、管理職が部下への具体的なフィードバックの出し方を安全な環境で繰り返し練習できる仕組みを提供しています。

 

管理職向け対話トレーニングパートナー「AI マネジメント Dojo」の詳細はこちら:

https://www.umu.co/product/ai-management-dojo

 


出典:Gallup, “Gallup’s Q12 Employee Engagement Survey”

UMUコラム一覧に戻る
  • まずはコレから!

    学びが変わる。組織が変わる。
    生成AI時代に成果を生む、
    UMUのAIラーニング戦略と事例を公開

    UMU会社資料

    UMU(ユーム)は、2014年にシリコンバレーで誕生し、現在では世界203の国と地域で100万社以上、日本では28,000社以上に導入されているグローバルAIソリューションカンパニーです。AIを活用したオンライン学習プラットフォーム「UMU」を核に、学術的な根拠に基づいた実践型AIリテラシー学習プログラム「UMU AILIT(エーアイリット)」、プロンプト不要であらゆる業務を効率化する「UMU AI Tools」などの提供により、AI時代の企業や組織における学習文化の醸成とパフォーマンス向上を支援しています。従業員が自律的に学び、AIリテラシーを習得・活用することで業務を効率化し、より創造的で戦略的な仕事に集中できる時間や機会を創出。これにより、企業の人的資本の最大活用と加速度的な成長に貢献します。