回線営業のコツ以前に、相手は今の契約を言葉にできますか
今の契約について尋ねると、「たぶん、これだと思うのですが」で止まる場面があります。回線営業のコツが話し方の工夫として語られやすいのは、この一言の先が、あまり言葉にされてこなかったからです。相手が正確に言えないのは、契約したのが何年も前で、書類も明細も手元にないからです。比べてから決めてくださいと伝えても、比べるための材料は、まだ相手の手元にないのです。
「今のままで困っていない」はなぜ出るのか
現状を言えるほうが珍しい
回線は、いったん決めると日常の中から見えなくなります。契約時の説明は長く続きますが、その後は使えているかぎり開かれません。今どこの何を、どういう条件で使っているのかを正確に言える人は、むしろ少数です。これは相手の落ち度ではなく、契約という仕組みの上でふつうに起きることだと言えます。一方、営業を担当する側から見ると、話はどうしても「今のものを変えるかどうか」になります。変えるかどうかを判断する土台が、相手の側でまだ言葉になっていないのです。そこで、こちらが代わりに現状を整理して説明すると会話は前に進むように見えますが、その前提を確かめたのはこちら側だけです。後から前提が違っていたと分かったとき、そこで得た「はい」は続きません。かといって、ご自分で調べてからにしてください、と突き放せば、会話はその場で終わります。
尋ねたあとに起きること
「今はどちらをお使いですか」と尋ねたあとを、思い返してみてください。相手は少し考えてから、たぶんこれだと思う、と答えます。書類は手元になく、明細も見ていません。こちらが一般的な条件を挙げて確かめようとすると、相手は、そうかもしれない、と返します。相手は自分の現状を、この時点ではまだ一度も見ていないのです。
材料を相手の手元に戻す
相手が自分で判断できる状態をつくるとは、こちらの説明を信じてもらうことではありません。どの書類のどこに書かれているのか、どの画面を開けば分かるのか、そこまで案内することです。相手が目にするのは、こちらの資料ではなく相手自身の契約の記録になります。決めるのはそのあとで構いません。持ち帰っても、今は決めない、と言ってもらってもかまいません。回線営業のコツとして語られるものの多くは、この案内を飛び越えて話の運び方から始まっているのです。なお、契約や解約の取り扱いについての判断は、所属する会社が定めた手順と担当部門の確認に従います。
ところが、この場面を社内でつくろうとすると、うまくいきません。相手役の同僚は、こちらが何を扱っているかも、どの書類に何が書かれているかも知っています。自分が今どこの何を使っているか分からない、という状態から始められないため、案内の練習にはならず、言い回しの確認で終わってしまいます。
練習に使う道具に求める条件は、ここで二つになります。自分の契約を正確には把握していない相手役を、回数を気にせず用意できること。もう一つは、どの順番で何を案内したのかを、あとから読み返せることです。分からない、と返ってきた直後の一往復が、取り出せる最小の場面になります。
業務シーンを1つ選ぶと、AIが顧客役を務めてあなたと1回の会話を行います。終了後、評価フィードバックを確認できます。
業務シーンを1つ選ぶと、AIが顧客役を務めてあなたと1回の会話を行います。終了後、評価フィードバックを確認できます。
契約内容を言えない相手を、用意できます
AI顧客の背景設定
AIが演じる相手の事情は、UMU AIロープレ上であらかじめ組み立てておけます。契約した時期を覚えていない相手や、以前に受けた案内と記憶が食い違っている相手など、現場で実際に会う人物に近い形で用意できます。たぶん、これだと思う、と返ってくる場面から始められるため、答えを持っていない相手に対して、どこを見てもらうかを声に出す練習ができます。
案内した順番が、そのまま残ります
自社の進め方に沿った評価
練習の評価は、決められた言葉を言えたかどうかだけではありません。自社で整理した進め方や、確かめてもらう順序を、UMU AIロープレ側の採点のものさしに組み込めます。どの時点で相手に見てもらう場所を示したのか、どこで説明のほうを先に進めてしまったのかが、段階ごとに残ります。案内を担当する側は、自分の会話がどちらに寄っていたかを、記録から読み取れるのです。
次に何を試すかが、練習の直後に決まります
一人ずつ違う改善の提案
対話を終えると、その回の中身に沿った改善案が届きます。全員に同じ助言が返るのではなく、どこで言葉を足しすぎたのか、どこで相手に確かめてもらう機会を渡せなかったのかが、発言に沿って示されるのです。同じ場面に何度でも付き合うことと、同じものさしで見ることまでが、AIに任せられる範囲です。相手ごとにどこまで踏み込むかの見極めは、引き続き人が引き受けます。
確かめられる形に置き直した事例
体外診断を手がける企業
回線の営業とは業種が異なりますが、次に何をするかを使う側が選んだ点が重なります。体外診断を手がける医療機器企業では、営業110名を研修担当2名で見ており、対面での練習を必要な回数だけ用意できませんでした(出典:導入企業へのヒアリング)。
そこでUMU AIロープレを活用し、模擬の場をAIとのやり取りに移しました。その後は、訪問での応対そのものを題材にする使い方へ段階を進めています。
どの段階へ進むかを決めたのは、いずれも使う側でした。公表されている数値は引用しませんが、次の一歩を自分たちで選べる材料が手元にあった点は参考になります。
全国に拠点を持つ生命保険会社
扱う商材は回線と離れていますが、実際に何が行われているかを外から確かめにくい点は重なります。全国に拠点を持つ生命保険会社では、学びの中身が紙の資料と集まる場に置かれており、各地に分かれた担当者を継続してカバーできませんでした(出典:導入企業へのヒアリング)。
そこでUMU AIロープレを活用し、知識を受け取る学習から、声に出して試す練習へ切り替えました。担当者が話した内容は、そのまま記録に残ります。
残った記録には、直属の管理職からの助言も重ねられました。数値の成果は扱いませんが、見えていなかった中身をあとから読み取れる形にした点は、この記事の論点と地続きです。