カリキュラム設計で決めるのは、順番とその前提の両方です
年間の研修計画を組むとき、必要な科目を洗い出し、実施の順番を決めるところまでは形になります。ただ、その順番は、受講者がどこまで知っているかという想定の上に成り立っているのです。計画書に並ぶのは、順番のほうだけです。
育成の道筋を決める、一年単位の設計
扱うのは育成期間の全体です
カリキュラム設計は、研修コース一本の中身を作り込む作業とは範囲が違います。対象となる職種や等級ごとに、どの水準まで到達してほしいかを定め、そこから逆算して必要な学習機会を洗い出し、実施の順番と間隔を決めていきます。扱う単位も、研修一本から半年や一年の育成期間全体へと広がるのです。コース設計が教える中身を決める作業だとすれば、カリキュラム設計は、その中身を経験する道筋を決める作業です。
順番を決める二つの基準
順番を決める基準は、知識の体系ではなく、業務でその知識が必要になる時期です。入社直後に扱う内容と、独り立ちの前に扱う内容とでは、求められる詳しさも変わってきます。もう一つの基準は、内容どうしの前後関係だと言えます。前の段階を理解していなければ次に進めない内容は、後ろには回せません。この二つを踏まえて並べたものが、カリキュラム全体の骨組みになります。
順番の前提になる、受講者の出発点
順番を決めた時点で置く想定
順番を決めた時点で、受講者がどこから学び始めるかという想定も、同時に置いたことになります。基礎から積み上げる構成の土台にあるのは、対象者の多くがその基礎を知らないという想定です。応用から入る構成を選んだなら、基本的な用語はすでに共有されていると見ているのです。カリキュラムの一覧に並ぶのは順番だけですが、その裏側では、受講者の状態についての判断が一つひとつ効いています。
ずれは実施の中で表に出ます
置いた想定が合っているかどうかは、実施してみるまで分かりません。事前アンケートで把握できるのは自己申告の範囲にとどまり、実務でどこまで経験してきたかまでは確かめきれないためです。想定とのずれが表に出るのは、たいてい研修が始まってからだと言えます。新人には説明が足りず、経験者にはすでに知っている内容が続きます。同じ教材を同じ順番で配っても、理解の進み方はそろいません。
業務シーンを1つ選ぶと、AIが顧客役を務めてあなたと1回の会話を行います。終了後、評価フィードバックを確認できます。
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順番を一つ変えるだけで広がる手直し
一部の差し替えでは済まない手直し
順番を一つ入れ替えると、影響はその研修一本にとどまりません。前後の内容の重なりを整理し、資料の説明を書き直し、確認テストの範囲も合わせる必要があります。一部の差し替えのつもりが、実際には組み直しに近い作業量になるのです。見積もった段階で、着手そのものを見送る判断になることもあります。
見直しは翌年度に回りがちです
カリキュラムを設計する担当者は、企画から講師、実施後のフォローまで兼任していることが多く、年間計画の期日にも追われています。まとまった時間を確保しにくいため、実施中に気づいたずれは、翌年度の宿題として持ち越されがちです。
作り直しから、部分的な手直しへ
整理と初稿にかかる工数が下がります
AIは、すでに手元にある資料を学習しやすい単位に整理し、説明文の初稿をまとめるところまでを引き受けられます。この部分の工数が下がると、順番の組み替えは作り直しではなく、修正の範囲に収まりやすくなります。担当者に残るのは、出てきた案が現場の実態に合っているかを確かめ、必要なところに手を入れる仕事だと言えます。
残るのは、判断と確認の仕事
この変化は、負担がなくなることを意味しません。どの順番に組み替えるか、その内容が現在の業務に合っているかを判断するのは、引き続き担当者です。それでも、整理と書き直しに使っていた時間が減れば、判断に充てられる時間は増えるのです。年に一度しか手を入れられなかったカリキュラムにも、変化に合わせて更新する余地が生まれます。
一度きりの設計から、期の途中の見直しへ
期の途中でも手を入れられます
想定と違っていた部分に、期の途中で手を入れられるようになります。実施中に、説明が足りない箇所や内容が重複している箇所が見つかったとき、その気づきを翌年度まで持ち越さずに、次の回の順番や資料へ反映できます。順番そのものを入れ替えるかどうかも、実施の記録を見ながら検討できるのです。
資料集めから、前提の検討へ
担当者の時間の使い道も変わります。資料を集めて並べ直す時間が減る分、対象者の出発点をどう見積もるか、どの順番なら無理なく積み上がるかという検討に時間を回せます。カリキュラム設計は、年度初めに仕上げる文書から、実施しながら精度を上げていく運用に近づいていくと言えます。
重要なポイント
カリキュラムに並んでいるのは順番ですが、その順番は、受講者がどこから始めるかという想定の上に成り立っています。想定が合っていたかどうかは、実施の中でしか確かめられません。設計をどこまで作り込むかと同じくらい、後から直せる余地をどれだけ残せているかが効いてくるのです。
進め方を見直すときの観点は、内容の網羅性だけではありません。置いた想定を確かめる機会が、年間の運びの中に組み込まれているか。もう一つは、ずれが見つかったときに手を入れられる状態になっているかです。この二つがそろうほど、業務が変わってもカリキュラムを使い続けやすくなります。