企業研修のアクティブラーニングは、経験差から設計します
新人研修でも管理職研修でも、グループワークやケーススタディを取り入れる企業が増えました。ただ、同じ階層に集めても、受講者の担当業務や経験年数はそろいません。形を整えるだけでは、学びの中身は受講者によって変わります。
企業研修でのアクティブラーニングとは
アウトプットを含む研修の形
企業研修でのアクティブラーニングとは、受講者が聞くだけの時間を減らし、学んだ内容を自分で使ってみる時間を確保する研修の形を指します。ケーススタディ、教え合い、疑似的な商談の練習などが代表的な進め方です。もともとは学校教育で広まった考え方ですが、企業では扱う題材が自社の業務そのものになります。手順や制度をなぞって覚えるだけでは足りず、自社の条件に照らして判断するところまでが、アウトプットの中身に含まれるのです。
学校の授業から、そのまま移せない
形式を持ち込めば主体的な学びになる、とは限りません。学校の授業では、同じ進度で学んできた集団に教員が付き添い、理解のずれをその場で拾えます。企業研修は事情が違います。受講者は担当業務を抱え、研修に使える時間は年間計画の中で限られており、講師役も通常業務と兼務していることが少なくありません。話し合いの時間は取れても、一人ひとりが答える場面までは残りにくいと言えます。
新人には難しく、中堅には物足りない課題
同じ階層でも異なる出発点
階層別研修は、入社年次や役職で受講者を区切ります。ただ、同じ区分に入る受講者でも、配属先や担当してきた顧客、中途採用かどうかによって、経験してきた場面は大きく違います。入社3年目でも、すでに単独で商談を任されている受講者と、まだ先輩に同行している受講者が同じ会場に並ぶことは珍しくありません。研修の区分は、経験の区分とは一致しないのです。
学びに変わる、負荷の水準
アウトプットの場面を用意しても、配属直後の受講者にとって難しすぎれば、答えを埋めることに気を取られ、考える余地は残りません。逆に、経験を積んだ受講者にやさしすぎれば、すでに知っている内容をなぞるだけで終わります。学びとして残るのは、少し考えれば答えられる水準に課題が置かれたときです。同じテーマを扱う研修でも、経験段階ごとに求めるアウトプットの水準を変えられるかどうかが、条件の一つになります。
業務シーンを1つ選ぶと、AIが顧客役を務めてあなたと1回の会話を行います。終了後、評価フィードバックを確認できます。
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段階別の課題づくりが続かない理由
作り分けを担えるのは一部の人
経験段階に合わせて課題を組み替えるには、その業務のどこが難所になるかを知っている必要があります。担えるのは、現場を長く見てきた講師や中核メンバーに限られます。いずれも通常業務を抱える立場です。年間の研修本数が決まっている中で、1本を3段階に分ければ、準備にかかる時間はその分だけ増えます。
改定のたびに増える手直し
制度や製品が変われば、段階ごとに分けた課題も、それぞれ見直しの対象になります。分けた数だけ手直しの箇所が増えるため、改定の多い領域ほど後回しになりがちです。結局は、全員に同じ1本を配る形に戻ります。研修部門の側でも、その戻りを止めにくいのが実情です。
組み立てる作業から、確かめる作業へ
下ごしらえをAIが引き受けます
資料を扱いやすい単位に区切り、説明の順序を並べ、初稿をまとめるまでの下ごしらえを、AIが引き受けます。講師や中核メンバーが一から組み立て直す必要はありません。空いた時間は、その水準が担当業務に見合っているか、想定した状況が実務に合っているかを確かめる作業に充てられます。変わるのは労力のかけどころです。内容を確認し、公開を認める工程は人の側に残ります。
つまずきに備えた補足も用意
段階を分けるうえで手間がかかるのは、課題そのものよりも、受講者がつまずいたときに添える説明やヒントです。ここを人手だけで用意しようとすると、上の段階の課題は出しにくくなります。下書きをAIに任せられれば、少し難しい課題にも支えを添えて出しやすくなるのです。ただし、その支えが適切かどうかを見るのは、引き続き人の役割になります。
アクティブラーニングは、一律の1本から段階別へ
受講者ごとに変わる課題の水準
同じテーマの研修でも、受講者の段階によって答える課題が変わります。着任して間もない受講者は手順を自分の言葉で説明し、経験のある受講者は条件を比べて判断します。発言できた一部だけがアウトプットする状態から、それぞれが自分の段階で答える状態に近づいていくのです。
年に一度の企画から、続く運用へ
段階の分け方を決めておけば、制度や製品が変わったときも、その枠組みを保ったまま中身を差し替えやすくなります。拠点や部署が離れていても、同じ組み立てを共有しやすくなると言えます。ただし、そこで分かるのは、用意した課題のもとでの学習の状況までです。現場で判断できるようになったかどうかは、別に確かめる必要があります。
重要なポイント
企業研修にアクティブラーニングを取り入れられるかどうかは、グループワークやケーススタディという形式の名前だけで決まるものではありません。受講者の経験段階に、求めるアウトプットの水準を合わせられるか。それも、この形が成り立つための条件の一つです。形式だけを整えても、経験のばらつきが残る限り、学びの中身は受講者によって変わります。
段階は、細かく分けるほどよいわけではありません。分けた数だけ、改定のたびの手直しも増えていきます。年間の研修本数と改定の頻度を見たうえで、翌年も同じ形で回せる範囲に分け方を収めておく。段階の数を二つか三つに絞っても、一律の1本よりは受講者の実態に近づきます。そこまで決めておくと、初年度に整えた形が2年目以降も残りやすくなります。