標準化された営業研修で、担当先に置き換える手間は誰に移るのか
同じ日に、同じ内容の標準化された営業研修を全員が受けたはずなのに、数週間後の現場では使われ方が同じになりません。受講後のアンケートは悪くなく、出席の記録も全員分そろっています。それでも「うちの担当先とは事情が違う」という感想が毎回どこかから出てくるのは、標準化によって手間が消えたのではなく、置き場所が変わったからなのです。
同じ研修なのに、なぜ使い方が分かれるのか
置き換えは、記録に残りません
標準化された営業研修を設計する側から見ると、手間は確かに軽くなります。題材を一度作れば全員に配れますし、実施のたびに中身を組み直す必要もありません。ところが受講者の側では、別の作業が始まります。目の前の題材を、自分が担当している取引先の規模や商談の進み方に当てはめ直す作業です。この作業は受講者の頭の中だけで進むため、実施記録には現れません。当てはめ直した担当者も、聞いただけで終えた担当者も、記録の上では同じ修了者として扱われます。運営する側から見れば標準化は完了しており、差が生まれていることに気づく手がかりもありません。手間そのものは減っておらず、見えない場所へ移ったと言えます。
配属先の違いが感想に出るとき
たとえば研修の三カ月後、育成を担当する側が現場をまわると、同じ回を受けた担当者から「あの内容は、うちの担当先には当てはめにくい」という言葉が返ってきます。同じ言葉が、別の担当者からも繰り返し出てきます。これは内容そのものへの不満ではなく、目の前の相手に当てはめ直す作業が、それぞれの手元に置かれたまま終わっているという合図なのです。
標準にできる範囲を見直す
全員へ同じものを配れるのは、相手が変わっても形の変わらない部分です。商談を進める順序や、先に確認しておく項目がこれにあたります。標準化された営業研修が最も力を出すのもこの範囲で、作る側の手間はここで大きく減ります。なお本ページでは、特定の研修体系や資格制度の中身を解釈したり、優劣を判断したりはしません。制度の適用範囲については、それを所管する部門の説明をご確認いただけます。
同じ題材が全員の手元に届いた時点で、次の作業が始まります。目の前の取引先の規模や、決裁までにかかる時間に合わせて、題材を組み替える作業です。この組み替えは題材の中に書き込めないため、受講者一人ひとりの手元へ移ることになります。
そうなると、確かめたいのは、その組み替えを一度でも通したかどうかです。組み替えた場面を本人の口から一度出させる場を、研修の中に置けるかどうか。練習の道具に問うべきなのは、この一点です。
同じ題材を担当先の条件に置き換えられます
顧客ペルソナと反論条件の個別設定
UMU AIロープレでは、AI顧客の役職や性格、抱えている懸念をあらかじめ設定できるようになっています。担当している取引先に近い相手像を選び、その相手が実際に投げてきそうな異議を組み込んだうえで練習に入れます。題材そのものは全員共通のまま、当てはめ先だけを本人の担当領域に寄せられるため、頭の中で済ませていた組み替えが、声に出す作業に変わります。
置き換えた場面を通しで一度練習できます
5段階の商談プロセスに沿った進行
練習は、導入からヒアリング、価値の提示を経てクロージングまでの流れに沿って進みます。途中で止まらず一度通すため、置き換えた条件のもとで最後まで話しきれるかどうかが、その場ではっきりします。どの段階で言葉が出なくなったのかも残るので、本人の頭の中だけで終わっていた作業が、あとから見返せる形になります。置き換えたかどうかを一人ずつ本人に確かめなくても、通した記録そのものが手元に残ります。
置き換えを通した人が、記録から分かります
段階別スコアの推移データ
一回ごとの点数だけでなく、初回から最新までの推移が段階別に残ります。研修を運営する側は、どの担当者が自分の条件で場面を通したのか、どの段階で手が止まりやすいのかを、面談の前に確かめられます。ここで確かめられるのは、置き換えた場面を一度通せたかどうかまでです。どの条件を選ばせるかを決めるのは、研修を設計する側の仕事になります。
同じ題材を配ったあとの二つの取り組み
バイオ医薬品・800名規模
ワクチン領域の医薬品企業では、本部が配れるのは研修資料で、その内容が各地域の販売代理店でどう使われているかまでは把握できていませんでした(出典:導入企業へのヒアリング)。
そこでUMU AIロープレを活用し、販売代理店と社内営業のどちらに属していても、同じ訪問場面の一覧から選んで練習でき、AIが一人ひとりの発話に応じて個別のフィードバックを返す形にしました(出典:導入企業へのヒアリング)。
業種は異なりますが、配った題材を各自の担当領域で通させるという点は、本ページの論点と重なります。
数値で示された成果については、本ページでは触れません。
食品スーパー・店舗の接客
集めて行う研修のための施設を自前で構えていた食品小売の企業でも、売り場で申し立てを受けた場面だけは、そこに立つ本人がその場で言葉を返すほかありませんでした(出典:導入企業へのヒアリング)。
そこでUMU AIロープレを活用し、施設に集まる研修はそのまま残したうえで、店舗で起こりやすい申し立てのやり取りをAIとの対話として足しました。応じ方が最も難しい相手との会話を、売り場に出る前に選んで通しておけます。
体系立った訓練のないまま現場に出ると、応じ方は人によって変わります。厳しい指摘を受け止めきれない経験が担当者の心理的な負担を高め、店舗で働き続けられるかどうかにも間接的に響いていました(出典:導入企業へのヒアリング)。
売り場の接客と商談では前提が違います。それでも、配れるのはやり取りの型までで、その先で誰が口に出すのかという境目は、同じ位置にあります。