営業の育成研修で、受講者の周囲に何も渡らないのはなぜか
営業の育成研修を終えた担当者が、新しい進め方を職場に持ち帰ります。ところが二週間ほど経つと、以前と同じ段取りに戻っていることがあります。同じ内容を受けても、配属先によって残り方に差が出ます。この差を分けているのは本人の熱意ではありません。受講していない周囲の人たちに、何も渡されていないのです。
受講後の二週間で、何が起きているのか
新しい進め方が使われずに消える
受講直後の担当者は、確かに動きが変わります。質問の順番を組み替えたり、相手の反応を待ってから話し始めたりと、研修で扱った手順をそのまま試そうとします。ところが、その進め方は職場の日常のやり取りとかみ合わないことがあります。たとえば、顧客の反応を先に聞き取ってから提案に移るという順番へ変えた担当者がいます。週次の報告書のほうは、提案した件数を先に書く様式のままです。順番を入れ替えた分だけ記入の並びがずれ、上長の目には進みが遅いように映ります。二度、三度と続けるうちに、以前の進め方に戻すほうが早いという判断になります。ここで起きているのは、本人が学びを手放したという話ではありません。周囲の人たちは受講していないため、その担当者が何を変えようとしているのかを知る機会がありません。知らないまま以前と同じ受け答えを返すのは、当然のことなのです。
周りは予算にも名簿にも入らない
営業の育成研修の設計は、対象者への提供物として組まれます。受講者の人数、日程、教材、評価の方法まで、記載されるのはすべて対象者に関わる項目です。周囲の人たちは受講者ではないため、予算の積算にも受講名簿にも登場しません。その結果、対象者以外に何を渡すかという欄が、設計書のどこにも用意されないままになります。
対象者以外に何を渡すか
営業の育成研修の対象者を決める段階で、名簿に載る人の一覧のほかに、その隣で働く人の一覧をもう一つ書き出してみてください。名簿に載るのは受講者だけです。隣で働く人には、上長や、同じ案件を担当する同僚などが含まれます。この二つ目の一覧は、これまで設計書に登場してきませんでした。誰が二つ目に入るのかを先に言葉にしておくと、後の判断がしやすくなります。
二つ目の一覧ができたら、研修を設計する担当者は、その人たちに渡すものを一つだけ決めます。すべてを共有する必要はありません。受講者が何を試そうとしているのか、それが一行で分かる形が一つあれば足ります。渡すものが増えるほど、読まれずに終わると考えられます。
では、その一行はどこから取り出すのでしょうか。受講者に毎回書かせると手間が増え、続きません。練習そのものが記録として残り、そこから周囲が見られる形を取り出せるか。研修に使う道具に対しては、この問いを立てられます。なお、研修体系や資格それぞれの優劣について、ここで見解を述べることはしていません。
名簿の外にいる人も、同じ場面を見られます
同一シナリオの全員利用
UMU AIロープレでは、企業が設定した訪問シーンを、人数の上限を設けずに同時に利用できます。受講者が取り組んでいるシナリオを、上長や同じ案件の同僚も同じ内容で開けます。何を練習しているのかを言葉で説明しなくても、同じ顧客役を相手に一度やってみれば伝わります。名簿に載っていない人にも、同じ材料が行き渡ります。
渡すものを一つだけ、先に決められます
業務側で組める練習場面
練習の場面は、専門の知識がなくても業務側で組み立てられます。想定する顧客像や切り出し方を選び、公開するだけで一つの場面ができあがります。設計の段階から、受講者向けの場面と、周囲に見てもらう短い場面を別々に用意しておけます。周囲に見せるほうは、受講者が使うものより短くて構いません。何に取り組んでいるのかが伝われば足ります。全員に同じ研修を受けさせるという話ではありません。周囲が受け取るのは、受講者の現在地が分かる一つの入り口です。
練習の中身が、そのまま記録に残ります
練習履歴の共有ビュー
練習を終えるたびに、どの場面でどこにつまずいたのかが項目ごとに残ります。上長は面談の前にその履歴を開き、部下が今どの受け答えを練習しているのかを確かめられます。人材育成の担当部門は、一人の課題と組織全体に共通する課題を見分けられます。同じ画面を上長と担当部門の双方が開けるため、面談の場で前提をそろえ直す手間も減ります。置き換わるのは、相手役を確保する手間と採点のばらつきだけです。誰にいつ声をかけるかという判断まで、この仕組みが肩代わりすることはありません。
受講者の周囲まで含めた事例
複数の拠点を持つ保険会社
複数の拠点を持つ保険会社では、研修が紙の資料と集合形式に偏っており、練習の様子が本部にも直属の上長にも見えない状態が続いていました(出典:導入企業へのヒアリング)。
そこでUMU AIロープレを活用し、営業担当者がスマートフォンから練習でき、その内容にマネージャーが助言や評価を返せる流れを整えました。
本部が各拠点の朝礼に関われるようになり、練習の場が受講者一人のものではなくなりました。数値での成果は本ページでは扱いませんが、周囲が受け取れる形になった点が変化の中心です。
営業が各地に分かれる製薬企業
営業が各地に分かれる製薬企業では、指導が同行や個別の対応に頼っており、指導する側は部下がどこまで身につけたのかをつかめないままでした(出典:導入企業へのヒアリング)。
そこでUMU AIロープレを活用し、練習の結果を一つの画面にまとめ、マネージャーが面談の前に確認できる形にしました。
指導する側が、手元の材料をもとに話せるようになりました。定量的な比較の結果はここでは取り上げず、受講者の周りにいる人が同じ材料を持てた点に絞って紹介します。